8:06 配信
<日本でもようやくワクチン接種が本格化>
鈴木一之です。日本では遅々として進まないワクチン接種ですが、それでもどうにか歯車は回り出したようです。
遅まきながらモデルナとアストラゼネカの2種類のワクチンに対して、国内でも製造・販売が認られることとなりました。厚生労働省の認可という厚い壁を突破して、ようやく承認が下りました。
先行しているファイザー製と合わせて、これで数字上では日本全体に行きわたるワクチン本数は確保されました。あとはそれぞれの自治体がどこまで物理的に接種体制を整えてゆくか、その点に焦点は移ってゆきます。
日本は何ごとも取りかかるのが遅くて話になりませんが、その代わりいったん物事が開始されればどんどん前へ進みます。90年代から2000年代にかけての不良債権処理も、余剰人員の削減も持ち合い解消売りなど資産圧縮の時もそうでした。
今回もワクチン接種がようやく始まり、これが進めばいずれ近い将来のどこかで集団免疫が確立されます。ワクチンの効力を削ぐ変異種がまん延する前に、いかに接種を進められるかにかかってきます。
ワクチン接種の遅れは景況感の回復の遅れに直結します。前週(10-14日)、株式市場は日経平均株価がわずか3日間で2000円強も下落し、まさにこの点が突かれました。消費者物価指数の上昇も重なって、ショック安と言ってもよいほどの下落に見舞われました。
その余波で今週も乱高下が続いています。きっかけのひとつはビットコインです。19日には、ビットコインが1日で30%以上も急落し4万ドルの大台を割り込みました。中国の金融当局が暗号資産の利用を認めない、という通達を出したことがきっかけとなりました。
ビットコインの急落に連動して代替資産が次々と下落しました。その影響は銅、ニッケルなどのコモディティに広がっています。ビットコインと同じく代替資産のひとつとして、コモディティ市場は昨年暮れから上昇が続いていましたが、それが一斉に逆流した格好です。
先週は「CPIショック」、物価の上昇はここからさらに進むとの見方が強まっていただけに、急落に対する反応も大きなものとなりました。ただでさえ不安定な株式市場はさらに動きが激しさを増した印象です。これまで堅調だった鉄鋼、非鉄、商社などの景気敏感株が週半ばから一斉に急落しています。
<金融相場から業績相場への過渡期>
今週(17-21日)のマーケットの動きは、金融相場から業績相場に移行する時の、ひとつの通過儀礼なのかもしれません。相場の性格が切り替わる時にマーケットの値動きが急変することはよく見られます。投資主体が変わるのか、あるいは投資スタンスが変わるのか、物色対象の中身が変わることで、相場の性格が移行する時に株価の急落が起こりやすいものです。
あるいは、株価が急落することによって、金融相場から業績相場へと相場の局面が変化したことが世の中にアナウンスされる効果、作用もあるように思います。今週のビットコインやコモディティの急落、先週の日経平均の2000円もの下落は、ひょっとしたらそのような変化を示しているのかもしれません。
実際に企業の決算内容は良好です。すでに出そろった21年3月期の決算は、主だった上場企業の当期利益は前年比26%増と3年ぶりの増益となりました(日本経済新聞調べ)。
1600社強の集計対象のうち、増益を発表した企業が全体の48%で、減益の企業数が35%でした。電機、自動車を中心に製造業の回復が目立つ一方で、航空会社、鉄道会社、外食企業など非製造業がかなり苦戦を強いられています。赤字企業も全体の17%にのぼります。
22年3月期も現在のところ純利益は3割増の見通しで、上場企業の収益回復は続く見通しです。やはり回復の中心は製造業です。史上最高益を更新する企業も増えています。
たとえば富士通 <6702> は今週、株価が20年ぶりの高値に進みましたが、通信市場の好調とデジタルネットワークの需要増によって、前期に続いて今期も純利益が2000億円を越える見通しです。12月決算のヤマハ発動機 <7272> も、アジア市場での二輪車の好調から1-3月期の経常利益は前年比で2倍以上に増えました。プレジャーボートも好調で株価は2018年水準まで上昇しています。
センサー、ロボット、制御システムのIDEC <6652> 、PC周辺機器のメルコホールディングス <6676> 、ゴム・化学品商社の三洋貿易 <3176> の決算も好調で、決算発表の直後に見せた勢いを保持したまま、株価はその後も堅調さを保っています。株式市場はまさに業績相場へと着々と歩みを進めているように感じられます。
決算データをにらみながら、機関投資家のポートフォリオの入れ替えが徐々に進められてゆくことでしょう。上記の銘柄に加えてデンソー <6902> 、フジミインコーポレーテッド <5384> 、TIS <3626> 、Orchestra Holdings <6533> に注目しています。
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