企業の「ESG(環境・社会・ガバナンス)」への関心が高まっている。22日からは米国が主催する気候変動サミットがスタートし、日本は二酸化炭素(CO2)など温暖化ガス排出削減目標の見直しなどを打ち出す方針だ。世界的な「脱炭素」の流れの中、機関投資家の銘柄選択においても、各企業のESGへの取り組みが重要視されるようになっている。
<旭化成は優れたSDGs企業、「水電解装置」も活躍へ>
化学大手の旭化成<3407.T>は、持続可能な開発目標「SDGs」への意識が高い日本企業として知られる。伝統的に社会課題の解決に重点を置く経営を続けてきただけあり、ESG時代の物色対象としても有力だ。
化学業界はその性質上、他業種と比べても特に環境負荷が大きくなりやすいビジネスだ。このためESG投資の観点はリスクでもある。そうした中、旭化成は石油化学分野への依存度が低く、また自助努力の成果もあり、GHG(CO2をはじめとする「グリーンハウスガス」)の排出量は同業と比べて圧倒的に小さい。
同社はさらに、2030年度までに売上高当たりのGHG排出量を13年度比で35%低減する目標も掲げている。また、電池材料や環境負荷を軽減する新素材の開発でリードするほか、水力発電所を多く抱える点などが強み。将来的に炭素税や環境税が導入される場合も優位性が発揮されそうだ。
一方、水素社会の到来へ向けては水電解装置に活躍の機会が広がる。同装置は、水の電気分解で水素を製造する。CO2排出を伴う化石燃料からの水素製造とは一線を画し、今後主流になっていく可能性がある。同社が手掛ける世界最大のアルカリ水電解システムは、昨年3月から福島県にある世界最大規模の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」で稼働している。
<サムコ、次世代パワー半導体向け商機>
従来のシリコン素材よりも電気を通しやすく、電力損失が少ない次世代型パワー半導体は、発電に伴い発生するCO2の削減に寄与する公算だ。こうしたESGの観点から、半導体の素材加工装置を手掛けるサムコ<6387.T>を見直したい。
EV(電気自動車)などに使われるパワー半導体は、大電流を扱うため発熱などによるエネルギーの損失が大きい。省エネ意識の高まりを背景に、より効率的な次世代品の開発が急がれている。
次世代型パワー半導体の素材としては、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)が有力だ。例えばSiCを使用した製品が実用化された場合、日本だけでもCO2の年間排出量を1000万トン抑制できるという試算もある。
サムコは加工技術に優れ、新素材向けの需要を積極的に取り込む構え。今7月期上期の営業利益(非連結)は新型コロナウイルスの影響で2.5億円(前年同期比45%減)に落ち込んだものの、受注高は31億円(同4%減)と前年並みを維持した。株価には半導体関連銘柄の人気再燃も追い風となりそうだ。
出典:モーニングスター社
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