◇アパート床崩落で5人が重軽傷、オーナーの損害賠償責任は?《楽待新聞》 | 12/8Emergency発令「8/1510時看板犬ぽんたが13歳で心不全で他界。生き霊を飛ばしていた経験を天国でフル活用天国と地上と行き来自由!」

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19:30 配信

不動産投資の楽待

今回事故が起きたアパート。階段や通路が錆びついていることが見て取れる(毎日新聞社提供)

 

今月17日、北海道苫小牧市で2階建てアパートの2階外側の通路の床が抜け、5人が重軽傷を負う事故が発生したとの報道がなされた。10代から40代の女性4人が腕や足を骨折したほか、生後7カ月とみられる男の子もケガを負ったという。

今回の事故で死者が出なかったことは不幸中の幸いだが、同様の事故で入居者が命を落としてしまうことも考えられる。すべての物件オーナーにとって他人事ではないだろう。

このような事故が万が一起こってしまった場合、物件のオーナーはどのような法的責任を問われるのだろうか。また、事故を未然に防ぐためにどのようなことが必要なのか。築古のアパートを所有する投資家のほか、弁護士などの専門家に話を聞いた。

■過失がなくても、損害賠償責任は免れない

築25年のアパートで起こった今回の事故。詳しい原因は今のところ報じられていないが、この物件のオーナーは事故に関してどのような責任を負うことになるのだろうか。

不動産に詳しい阿部栄一郎弁護士は、「刑事責任に問われる可能性は低い」としたうえで、「いわゆる『工作物責任』に基づいて、民事での責任追及は免れないだろう」と述べる。

工作物責任とは、民法717条に定められた「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」のこと。「土地の工作物」とは、土地に接して建てられたものを指し、マンションやアパート、塀や擁壁などが含まれる。これらの設置や保存、管理に瑕疵があり、それが原因で他人に損害が生じた時、所有者であるオーナーは損害賠償義務を負う。

工作物責任とは
土地の工作物とは、マンションやアパート、塀や擁壁など、土地に接して人工的に建てられたもの。
工作物責任とは、工作物による事故で被害が生じた場合、過失の有無や原因にかかわらず、物件のオーナーが賠償責任を負わなければならない。

(例)
・アパートの塀が壊れ、通行人がけがをした。
・階段が崩落したことで、住人がけがをした。
→オーナーの責任となる。

なお、当該の条文には免責事項がない。つまり、今回のように床が抜けるといった被害が生じると、どのような原因があったとしても、またオーナー側に過失がなかったとしても、オーナーの責任は問われる。

所有する物件で事故が発生した場合、過失の有無にかかわらず、オーナーは損害賠償の責任を負わなければならないのである。

ただし、管理会社に物件の管理を任せていた場合、責任の所在が変わる可能性もある。例えば管理会社が入居者から修繕の依頼を受けていたにもかかわらず、オーナーに対して報告を怠っていた場合は、管理会社が損害賠償の責任を負う可能性も考えられるという。

■オーナーに「3354万円の支払い」命じた例も

過去に実際に起こった同様の事故で、オーナーは具体的にどのような責任を負うことになったのか。

今回苫小牧市で起きた事故に近い、過去の事例を2つ紹介する。両事例とも民法717条に該当して、損害賠償責任が発生している。

1つ目の事例は、1995年11月、建物外側に設置された階段の中央9段分が崩落し、被害者が開放骨折(折れた骨が皮膚を突き破って外に出てしまう)を含むケガを負ったという事故だ。

物件の手抜き工事が事故発生の原因とされたが、原因の内容に関わらずオーナーの責任は問われるため、賠償をすることになった。被害者は3945万円を請求。けがによる被害者の仕事への影響などを考慮し、最終的に東京地裁は715万円が妥当と判断して、オーナーに該当金額の支払いを命じた。

2つ目の事例は、1990年8月、居室内の窓枠手すりが壊れ、入居者が1階に落下し頭蓋骨骨折の被害を受けたという事故だ。

手すり自体が十分な強度で設置されていたかどうか、被害者が窓枠に腰を掛け、手すりに寄り掛かったことが事故の原因かどうかが争点となった。

東京地裁は、設備設置の段階で手すりの強度が不十分だったと述べたものの、窓枠に腰を掛けるという被害者の行動にも過失があったと判断。物件オーナーへの損害賠償請求額約6600万円に対して、被害者の過失が考慮された3354万円の支払い命令が下った。

■鉄骨部分の崩落はなぜ起きるのか

上述の通り、オーナーは所有物件とその安全性について、大きな責任を負っていることがわかる。では、こうした事故はなぜ起きるのか。どのようなメンテナンスをすればよいのだろうか。

そもそもアパート共用部の床は、デッキプレート(あるいはキーストンプレート)と呼ばれる波形に加工された鋼板を下地として、そこにモルタルを打設して作られることが多い。その下には小梁などの鉄骨部材を架け渡して重さを支える仕組みだ。

床の作り方としてはこのほかに、鉄骨で格子状の下地を敷き、その上に厚みのあるALCなどのパネルを敷いて床をつくるケースもある。

いずれのケースでも、鉄骨が床の荷重を支える役割を担っていることが分かる。つまり、この鉄骨の塗装に錆が生じれば一気に強度が失われ、最悪の場合、今回の事故のように崩落につながる恐れもあるということだ。

アパートの階段や共用床など、鉄骨の錆び補修を専門とする横山鉄工所の横山文人氏によると、特にデッキプレートとモルタルでつくられた床の場合、モルタルのクラックから水が浸入して裏側に回り、錆が生じるケースが多いのだという。

「アパート共用部の床でよく見られるのは、胴差しと呼ばれる部材の腐食です。クラックなどから床の裏側に水が回り、デッキプレートや小梁を伝って胴差しに水が停滞しやすいのです。この胴差しが錆びてしまったり、胴差しの錆びが広がって床を支える柱が外れて穴が空いたりすると、床が抜けるなどの事故につながります」(横山氏)

今回の事件の原因は明らかになっていないが、報道映像などからはプレートとモルタルで作られた床のように見受けられる。横山氏が言うように、鉄骨が錆びて腐食が進み、床の崩落につながった可能性もありそうだ。

さらに、「鉄骨の腐食による事故は鉄骨階段でも起こる可能性がある」と横山氏は警鐘を鳴らす。

「鉄骨の階段も、床と同じように段板の部分にモルタルを打設してつくる場合があります。こうした階段は昇降するときにカンカン音が鳴らないというメリットがありますが、やはりモルタルのクラックやわずかな隙間から水が回り、鉄骨が腐食する可能性が高まります。目に見えない部分、空気が触れない部分が増えるほど、こうしたリスクも高まるんです」

崩落すれば、入居者の命にも関わる大事故につながる可能性もある。床や階段、またそれらを支える柱など構造に関わる鉄骨部材については、常に劣化状態をチェックしておきたい。

前出の横山氏は「鉄骨は塗装が剥がれると急速に腐食が進む。深刻なダメージになる前に、一般的な相場より少し早めの7~8年に1度は塗装を行うことが、鉄骨を長持ちさせる秘訣だ」と語る。特に築古の物件で鉄骨階段や柱などに穴が空いているようなケースでは、早めの修繕が必要だ。

また横山氏によれば、「数十万~100万円をかけて、構造部の鉄骨フレームを交換するような大規模な工事もあれば、腐食して穴が空いた箇所を部分的に溶接するといった5万~15万円程度の工事もある」という。物件をあと何年運用する予定なのか、どのくらいの予算をかけるべきなのかといった点も踏まえつつ、安全な状態を維持しておきたい。

■高額な修繕費も「入居者の命には代えられない」

こういった事故の報道に接し、不動産投資家はどのように考えているのだろうか。

高額になる可能性もある鉄部補修は、オーナーにとって悩みの種。ある投資家は似たようなスペックの築古アパートを所有しているといい、報道を聞いた時は「正直、青ざめましたよ」と明かす。そのうえで「下手すれば数百万円かかってしまい、そろそろ危ないと認識していても、騙し騙し使っている人も多いのでは」と語った。

だが、入居者の安全を預かるオーナーとしては、適切に物件の修繕を行う義務がある。

木造アパートを3棟と戸建3戸を自主管理しつつ、鉄骨部分の塗装も自ら行う「定年大家」さんは、老朽化や天災などリスクを洗い出し、事前の対策を欠かさないと説明する。

階段などの鉄部は、3~5年に一度は必ず塗装を行っているという定年大家さん。ただ、塗装は長持ちさせる効果はあるものの、強度が増すわけではないため根本的な解決にはならない。

「階段などの鉄骨部分に異常がある場合は、必要に応じて接続部の溶接依頼を検討しなければなりません。溶接を業者に依頼して、30万円くらいの費用をかけて補強をしてもらいましたが、入居者の安全には代えられない」と話した。

■投資リスク対策には保険の検討も

前出の定年大家さんは、保険に加入することの必要性にも言及。さまざまな投資リスクを少しでも軽減するため、火災保険、地震保険、施設賠償責任保険、孤独死保険には必ず加入しているという。

今回の事故のような場合は、アパートやマンションの不備で他人や物に損害を与えた時に保証してくれる施設賠償責任保険が適用される可能性がある。細かい補償内容は保険会社の商品ごと異なるが、例えば、建物の外壁落下により通行人がけがをした時や、共用部の床や階段で滑り、けがをした場合にも保険金支払いの対象になる。

もしも保険に加入していなかったとすると、被害の規模によっては多額の賠償責任が生じる恐れも。毎月の出費でランニングコストに影響はするものの、保険の加入については十分に検討したい。

不動産投資家は所有物件のオーナーであり、入居者が安全に生活を送れるように必要な修繕を行う必要がある。メンテナンスを怠って被害が発生してしまえば、損害賠償の支払いや、最悪の場合、刑事責任を追及される可能性もある。自身の物件に問題がないか、修繕の必要な個所がないか、管理会社と連携をとりつつ、改めて確認しなければならないだろう。


出典:不動産投資の楽待
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