米国市場が、政府の新型コロナウイルス対策の期限を意味する「財政の崖(がけ)」に直面している。現行の失業保険の給付金上乗せ制度が区切りを迎えることで、株安局面が拡大する可能性に注意したい。
米国では新型コロナの感染の広がりを受けた経済対策として、3月から失業保険の給付金に毎週一律で600ドルが上乗せされている。これにより、実に7割近くの受給者が失業前よりも多くの収入を手にする事態が発生。大量の余剰資金は主にネット取引を通じて株式市場に流入し、コロナ・ショック後の米国株の急激な上昇の原動力になったとみられている。
ただ、同制度は7月末までに終了し、月換算で4兆ドル超分の個人所得が消失する。追加の経済対策として給付の延長が検討されているものの、その額は大幅に削減される方向。マーケットを支えてきた買い主体にも影響を及ぼしそうだ。
大和証券は28日付リポートで、想定される新制度の内容に応じたシナリオを提示した。まず、上院を握る共和党案の追加支出は1兆ドルで、失業給付の総額を失業前給与の70%に抑制する。
この場合、最終的に米株安につながると同証券は予想。ただ、移行期間に1200ドル程度の一時的な現金給付が見込まれることから、いったんは失業中のネットトレーダーが潤うため、コロナ・ショック以降続いているグロース(成長)株相場が夏場にかけて佳境を迎えるとみている。その後、グロース中心のナスダック総合指数が大きく軟化する筋書きだ。
また、政府が示す2兆ドルの追加支出案についても、失業給付の上乗せ額が週200ドル程度に縮小することで復職が進みやすくなると指摘。ネットトレーダーの需給悪化を招き、バリュー(割安)株優位の物色傾向に変わると考えている。日本に当てはめれば、TOPIX(東証株価指数)が日経平均株価に勝る展開だ。
一方、下院で過半数を占める民主党が掲げる3.5兆ドル案が採用されれば、現行の上乗せ額の8割程度が維持される公算。このケースではグロース株物色が継続し、ナスダック指数の強い動きが続くことになる。
ただ、失業者の復職を妨げるとみられる同案は実現性が乏しい。今後の米議会の推移を注視する必要があるが、日本株をめぐっても、ナスダック指数の勢いに恩恵を受けてきた半導体関連など割高なハイテク株の調整に備えると同時に、バリュー株復権の動きも視野に入れておきたい。
東証1部の主な高PERグロース株
銘柄(コード) 過去1年騰落率 PER
オプティム<3694.T> 125.5% 370.3倍
CYBOZU<4776.T> 156.0% 144.6倍
GMOPG<3769.T> 41.9% 134.8倍
エムスリー<2413.T> 132.2% 128.9倍
SHIFT<3697.T> 137.8% 125.4倍
ファナック<6954.T> 5.2% 104.6倍
サイバー<4751.T> 31.1% 97.0倍
オムロン<6645.T> 41.0% 92.2倍
レーザーテク<6920.T> 279.9% 87.1倍
MRO<3064.T> 93.2% 84.4倍
オリンパス<7733.T> 65.4% 83.6倍
安川電<6506.T> 3.7% 63.5倍
キーエンス<6861.T> 47.3% 54.7倍
ルネサス<6723.T> -8.9% 54.6倍
SMC<6273.T> 41.3% 53.0倍
東証1部の主な低PBRバリュー株
銘柄(コード) 過去1年騰落率 PBR
神戸鋼<5406.T> -45.4% 0.2倍
石油資源<1662.T> -24.5% 0.3倍
東電力HD<9501.T> -39.1% 0.3倍
JFE<5411.T> -46.1% 0.3倍
日本製鉄<5401.T> -43.4% 0.3倍
日電硝子<5214.T> -37.9% 0.4倍
Jパワー<9513.T> -35.1% 0.4倍
マツダ<7261.T> -37.7% 0.4倍
洋缶HD<5901.T> -37.2% 0.4倍
日産自<7201.T> -43.0% 0.4倍
三越伊勢丹<3099.T> -34.0% 0.4倍
日テレHD<9404.T> -21.9% 0.4倍
北陸電<9505.T> -13.4% 0.4倍
日本紙<3863.T> -27.1% 0.4倍
商船三井<9104.T> -32.2% 0.4倍
出典:モーニングスター社
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