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前回の記事『60-75歳の「使いながら運用する時代」に資産寿命を4割伸ばすには?』では、「使いながら運用する」という考え方を紹介しました。今回はその具体的な方法のひとつである「定率引き出し」の考え方を解説します。
使いながら運用する時代の「定率引き出し」
前回、逆算の資産準備を説明しました。その中で75歳から遡って60歳までの期間を「使いながら運用する時代」と設定し、その時期の目標は、75歳の時点で計画通りに資産を残すことにありました。
それができるからこそ、第2ステージの「使うだけの時代」を迎えられるということになります。
株式や投資信託を使って資産運用をする場合には、価格変動リスクがあります。すでに資産を保有している段階では、この価格変動は資産残高に大きく影響しますが、退職した段階ですぐに全部引き出す(売却する)わけではありません。
そのため、今の段階で資産残高が大きく減少したからといって、過度に心配する必要はありません。
資金は必要に応じて少しずつ引き出すわけですから、引き出し方に工夫をすることが求められます。それが、定率引き出しと呼ばれる方法で、価格変動に合わせて引き出し額を変動させることで、その価格変動リスクの残高への影響を薄める方法ということもできます。
「定率引き出し」の残高を安定させるチカラ
以下の表は今までも何度か紹介していますが、これを使って改めて「定率引き出し」の持っている意味を説明します。
60歳から75歳までの15年間における「使いながら運用する時代」の資産残高の推移を2つの収益率の並び方で比較しています。左側は前半に高い収益率が、右側は前半にマイナスの収益率が並ぶように、15年間の毎年の収益率の並び方を右側と左側で逆転させています。
すなわち、ポートフォリオAでは上からの収益率の並び方を、ポートフォリオBでは下から並べているだけです。そのため、15年間のリスクとリターンの大きさはどちらも同じになります。
計算しやすいように期初の資産額はともに1,000万円、引き出しはともに定額で年間40万円、定率で4%としています。毎年、期初にその引き出しを行って残りの資産をこの収益率で運用したと仮定します。
定額引き出しの場合、ポートフォリオAでは残高は670.4万円となりますが、ポートフォリオBでは240.5万円となり、大きな開きができてしまいました。
これが、定額引き出しの持つ「収益率配列のリスク」と呼ぶべきもので、価格変動がストレートに残高に出てしまったパターンです。これでは75歳以降の「使うだけの時代」には非常に心もとない結果をもたらすことになりかねません。
そこでそれぞれの欄の右側に、引き出し額を毎年の残高の4%に設定する方法を紹介しています。この方法だと、15年後の残高はポートフォリオAでも、ポートフォリオBでも全く同じ621.7万円になります。
これによってポートフォリオの構築がしっかりできていれば、毎年の収益率の変動がどんな形になろうと、最終年の残高を計画通りの水準で確保することができるようになります。
もちろん、価格変動リスクによる残高への影響を軽減したことから、その分、引き出し額が変動することになります。しかし、60-75歳の時期はまだ十分に環境変化に生活を合わせることができる時期だと思います。
想定される35年の長きにわたる退職後の生活を、計画的に過ごすための俯瞰的なアプロ―チが求められます。
出典:LIMO
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