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2015年に施行された食品表示法が今年4月1日より完全実施される。従来、消費者にわかりづらかった食品表示などはどう変わるのか。正しい活用法を知り、健康の増進に役立てていただきたい。(消費者問題研究所代表 垣田達哉)
● 今年4月から 食品表示が見える化
2015年に施行された食品表示法の猶予期間が今年3月31日に終了し、4月1日から完全実施される。
食品表示法(消費者庁所管)は、消費者、事業者、行政等、各方面から「食品表示の法律が縦割り行政の弊害で分散されているので、消費者にわかりづらくなっている」という指摘を受け、食品表示3法といわれた「JAS法(農水省所管)」と「食品衛生法(厚労省所管)」と「健康増進法(厚労省所管)」の食品表示基準だけを一本化した法律だ。
一本化したといっても、58の表示基準を寄せ集めただけなので「わかりやすい食品表示」を実現できたとはとても思えない。
しかし「食品表示の見える化」という点では、消費者にとって非常に有益な改正が2つなされている。
ここでクイズを1つ。
下の2つの食品表示は、1カ所だけ異なる点がある。どこだかおわかりになるだろうか。
正解は「酵母エキス」と「加工でん粉」の間の表示だ。上の旧表示が「、」であるのに対し、下の新表示は「/」になっている。
新表示では、「/」の前までが原材料で、後は添加物を表記している。
● スラッシュルールで 添加物が一目瞭然に
筆者は、この新たな表示方法を「スラッシュルール」と呼んでいる。
そもそも原材料名を表示する順番は、旧表示も新表示も同じく、まずは原材料の重量の多い順、その次に添加物の重量の多い順と決まっている。
しかし、原材料と添加物の間が他の物質名と同じように「、」で区切られている旧表示だと、添加物が何かを知らない人にとっては、どこからが添加物なのかがわからない。
それに対し、原材料と添加物の間が「/」で区切られている新表示であれば、添加物が何かを知らない消費者でも「/」以降が添加物だと一目でわかるのだ。
食品表示法では「原材料と添加物を明確に区別すること」と定められている。「/」以外にも、「原材料欄と添加物欄をそれぞれ作る方法」や「原材料と添加物の間で改行する方法」が消費者庁から示されているが、ほとんどの事業者がスラッシュルールを使っている。
これにはいくつかの理由がある。
1つ目は「、」を「/」に置き換えるだけなので、表示の文字数が変わらないことである。
そして2つ目は、添加物が入っていることを目立たせずに済むということである。
事業者が消費者に一番知られたくないのが「添加物を使っているかどうか」「どれだけ多くの添加物を使っているか」ということだ。そのためには「できるだけ添加物を目立たせないこと」「何が添加物なのかを知らせないこと」が必須なのだ。それには、スラッシュを使う方法が最も都合が良い。
いずれにせよ、新表示により、消費者は簡単に添加物がどれだけ使われているかを把握することができるようになった。
例えば、次の2種類の「焼きちくわ」がスーパーマーケットの店頭に並んでいた時、あなたならどちらを選ぶだろうか。
添加物が安全かどうかはともかく、値段が同じであれば添加物が少ない商品を選ぶ人が多いだろう。スラッシュルールを理解していれば、(1)の焼きちくわのほうが添加物が少ないということが簡単に判断できる。
なお、余談ではあるが、お茶飲料の原材料名は、たいてい「緑茶(国産)/ビタミンC」と表示されている。スラッシュの意味を知っていれば「ビタミンCは添加物だ」ということがわかる。
ビタミンCは、野菜や果物にも含まれ、健康食品にも多く使われているので、添加物だということを知らない消費者もいる。そうした消費者が、スラッシュルールを知ると、ビタミンCが添加物だと初めて知ることになる。
さらに「ビタミンCをどうして使うのか」という疑問を持つと、ネットなどで調べる消費者も出てくるはず。調べてみれば、ビタミンCには酸化防止剤の効果があることがわかる。「他にはどんな添加物があるのだろう」「他の食品にはどんな添加物が使われているのだろう」といった疑問もわいてくるだろう。
スラッシュルールは、賢い消費者を増やす効果もある。見かけはとても小さな変更だが、その意味するところは消費者にとって非常に大きいといえる。
● 栄養成分表示も 全面義務化
「スラッシュルール」と並ぶ、もう1つの有益な改正が「栄養成分表示の全面義務化」である。
今までも「栄養に関する表示(ビタミンC入り、カルシウム豊富等)」をした場合は、栄養成分を表示する義務はあったが、対象商品はほんのごくわずかであった。
だが食品表示法では、原則、容器包装された全ての加工食品に栄養成分を表示することが義務付けられた。
ちなみに、栄養成分表示を省略できる条件の1つに「表示可能面積がおおよそ30平方センチメートルより小さいもの」という項目があるが、これは5cm×6cmの包装紙で包んだ商品になる。そんな小さな商品はほとんどない。
最近は、個包装(1個あるいは小さい包装)の商品も結構ある。だが、おにぎり1個でも、大福1個でも、ほとんどが30平方センチメートルを上回るので栄養成分表示が必須となる。和菓子・洋菓子だけでなく、弁当・総菜、塩ジャケなどの塩干物も、一部を除いて表示されることになる。
最低限、熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目は、必ず表示される。
例えば、筆者の手元にある大福とおにぎりを比較すると、カロリー(熱量)は、おにぎり1個あたり74kcalだが、大福は1個で223kcalもある。
「今日はお昼を簡単にしたから、おやつに大福1個食べよう」と思っている人がいたら、よく考えてみたほうがいい。大福1個を食べれば、それはおにぎり約3個分のカロリーを摂取することになる。
スーパーマーケットなどで販売されている弁当・総菜は、コンビニ弁当・総菜よりもボリュームがあるものが多い。トンカツや唐揚げなどの揚げ物が多い弁当は、1000kcal程度のものもある。
塩ジャケや干物など塩分が多い食品も、ほとんどのものに栄養成分が表示される。従来は、ナトリウムの量が義務表示だったが、食品表示法では食塩相当量(塩分)が義務表示に変更されたので、塩分を簡単に確認できる。
4月1日からは、ほとんどの容器包装された加工食品に、栄養成分が表示されることになる。栄養成分表示は、健康な生活を送るためには必要不可欠な情報である。ぜひ参考にしてもらいたい。
ただし、これだけでは原材料名欄に表示されている原材料や添加物の正体が明らかになったとは到底いえない。例えば、原材料の「動物油脂」や「植物油脂」は、どんな油脂なのか。添加物の「pH調整剤」にはどんな物質が含まれているのか。栄養成分では、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、食物繊維等は、どのくらい含まれているのだろうか。
まだまだ見える化が徹底されているとは思えないが、食品表示法は、まず第一歩を踏み出そうとしている。消費者は、この情報開示を大いに活用し、さらにもっともっと情報を開示するよう声を上げるべきだ。
(消費者問題研究所代表 垣田達哉)
出典:ダイヤモンド・オンライン
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