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トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は約1時間20分にわたる会談で、中断していた貿易交渉を再開することで合意した。米国は新たな対中追加関税の実施を見合わせる方針も表明。世界が懸念した決裂の事態は辛うじて回避されたが、「急場しのぎの会談」の色合いが濃い。今後の交渉での歩み寄りは難しく、貿易摩擦の解消には程遠い状況だ。 ◇トランプ氏「合意急がず」 トランプ氏は会談後の記者会見で「大変素晴らしい会談になった」と自画自賛。最大の焦点となった貿易交渉だけでなく、北朝鮮やイラン、ロシアなどさまざまな質問にも冗舌に答えた。会見時間は首脳会談に迫る約1時間に達した。 貿易交渉に関しては「合意を急ぐつもりはない。正しいディール(取引)を望んでいる」と述べ、来年秋の大統領選を控え、成果を焦っているとの見方を否定。米国の納得する結果が得られるまでは合意する考えのないことを示した。 さらに「(発動済みの)対中関税は下げない。逆に引き上げることもできる」と警告。中国に譲歩したのではないと、地盤である保守派の支持層にアピールすることも忘れなかった。 ◇「ピンポン外交」再現狙う習氏 習主席は会談冒頭、米中の国交回復に向けた「ピンポン外交」が48年前に名古屋で始まったことに触れた上で、「協力は摩擦よりも良く、対話は対抗よりも良い」と語り、貿易摩擦を契機に高まった両国の緊張状態の緩和に意欲を示した。 ただ、会談では緊迫したやりとりもあった。中国外務省によれば、習氏は「交渉は対等であるべきだ」と語り、厳しい要求を突き付けて譲歩を迫るトランプ政権の姿勢を批判。さらに「中国の主権と尊厳に関する問題では核心的な利益を必ず守る」との主張を繰り返し、合意に伴う新たな法整備などには応じられないと強調した。 一方、米国による中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)制裁を念頭に「米国が中国企業を公平に扱う」よう改めて要請。トランプ氏は会見で「安全保障上の大きな懸念がない場合、ファーウェイと米企業との取引を認める」と述べ、制裁の解除や緩和に前向きな考えを示した。硬軟織り交ぜた同氏の交渉戦術とみられる。 ◇時間稼ぎの見方も 首脳会談は世界中の注目を集めたものの、結局、摩擦解消に向けた目立った進展はなかった。双方が発動済みの追加関税は課されたままで、「我慢比べ」が続く状況はこれまでと変わらない。 会談の前にしっかりと握手を交わした両首脳だが、貿易交渉で双方の意見の隔たりは大きく、歩み寄りの余地はあまりない。昨年12月の1回目の「休戦」と同様、今回の休戦も景気対策など国内の課題に取り組むための時間稼ぎとの冷めた見方も出ている。