パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が19日、連邦公開市場委員会(FOMC)後に行った記者会見の冒頭発言は以下の通り。
【前置き】こんにちは、そしてようこそ。私の同僚と私は、米国の人々の利益となる、強い労働市場と安定した物価の下、景気拡大を維持するという最重要の目標を持っている。
本日終わったFOMCでは、政策金利を据え置いたが、声明を幾つかの点で大きく変更した。年初来、われわれは現行の政策スタンスがほぼ適切であり、変更の必要性を評価するに当たっては忍耐強くあるべきだと判断してきた。今は、不透明性の高まりやインフレ圧力が弱いことを考慮し、FOMCは経済見通しに関する入着情報の意味するところを緊密に監視し、強い労働市場と目標とする2%近傍のインフレの下での景気拡大を維持するため、適切に行動することが重要だとみている。
本日の決定に経済・金融情勢がいかに影響したかを振り返ってみようと思う。年初からこれまでのところ、しっかりとしたファンダメンタルズ(基礎的条件)が持続的成長および強い雇用を支え、経済はまあまあ良好に推移している。インフレはわれわれの目標を幾分下回っているが、堅調な成長と強い労働市場の下、加速すると見込んでいる。こうした好ましい見通しと同時に、われわれは、貿易問題や世界の経済成長への懸念など、いくつかの逆行する流れにも留意している。5月1日に終了した前回FOMCの時点では、これら逆の流れが弱まる一時的兆候があった。中国や欧州からの最新データは勇気づけられるものであったし、中国との貿易交渉進展に関する報道もあった。忍耐強いスタンス継続が適切であるとみられ、FOMCは政策金利を変更する強力な論拠はないと判断した。
前回会合から数週の間に逆流が再び顕在化した。世界各地の経済成長の指標は期待外れのものとなり、世界経済の強さをめぐり懸念が強まった。進展しているかに見えた貿易交渉は不透明さを増し、企業や農業分野からは貿易情勢をめぐり不安が強まったとの報告が聞かれた。こうした懸念から、最近の幾つかの調査で企業の信頼感が落ち込んだかもしれず、入着するデータでも反映され始めるかもしれない。また、金融市場においてはリスク選好が後退した。こうした情勢下、インフレは弱い。
基本的な景気見通しは依然好ましいが、問題はこれら不透明なものにより見通しが圧迫され続け、追加の金融緩和が必要とされるかだ。FOMCの多くの参加者は今、さらに緩和的な金融政策の根拠が強まったとみている。雇用・成長見通しを手始めに、この判断の理由を説明しよう。
【景気認識】
参加者は今年、そして来年も失業が低水準を続けるとみている。5月の雇用増は予想を下回ったが、最近の動向を考慮すると、注目に値する。それでも労働市場に関する多くの指標は引き続き強い。地域、企業、労働者のリーダーは皆、求職者の展望は最高の状態にあり、従来仕事探しで苦労した者にとっても同様だと述べている。賃金は上がっており、特に賃金の安い職で顕著だ。
FOMC参加者の2019年以降の成長見通しは3月時点からほとんど改定されていない。中央値は2.0%~2.2%で、長期の成長率予測を若干上回る。同年の成長見通しは一部の重要な構成要因をかくしてしまっている。5月のFOMC会合の前に発表された第1四半期の成長は想定外に強かったが、通年の成長を押し上げることになるだろう。私が指摘したように、純輸出と在庫が意外に強かったが、これらは概してその時点の景気の勢いを測るには頼りにはならないものだ。経済成長のより確かな原動力は消費支出や企業投資だ。第1四半期に消費は弱かったが、入着したデータによると、消費は盛り返し、堅調なペースで推移している。これに対し、現時点では限定的なデータだが、企業の収入の伸びが第2四半期に鈍化したことが示唆されている。さらに、製造業の生産は今年減少している。従って、基本的な経済見通しは引き続き好ましいものの、FOMC参加者の多くは、投資見通しや企業景況感の軟化、そして私が先に指摘した逆流により、経済が期待を下回るリスクが高まったとの判断を支えるとしている。
インフレは昨年のほとんどの期間、われわれの対称的な2%の目標近傍にあったが、今年第1四半期には低下した。その後のデータによると、幾分上昇した。参加者は全般にインフレが2%の目標に戻りつつあるとみているが、ペースは予想されていたより、緩やかだ。変動の大きい食料やエネルギーを除いたコアの2019年の予想中央値は1.7~1.8%。
短期の変動は別にして、FOMC参加者はインフレが2%に戻るペースについて懸念を表明した。先に指摘したように、賃金は上昇しているが、インフレに上向きの刺激を与えるほどのペースではない。さらに、世界の成長鈍化で、世界的にインフレが抑制されるかもしれない。
われわれは対称的な2%のインフレ目標にしっかりとコミットしており、健全な経済の下でさえもインフレの弱さが続いたら、阻止困難な長期インフレ期待の低下を引き起こす可能性があることを十分認識している。インフレ期待を測る確実な方法はないため、われわれは不完全な代用のものに頼らなくてはならない。市場ベースのインフレ指標は5月の会合以来低下し、一部調査ベースのインフレ期待は歴史的レンジの下限付近にある。これら要因と先に述べた成長リスクを合わせ、参加者はインフレのさらなる持続的目標未達への懸念を表明した。
【政策】全般に、われわれの政策論議では、不確実な環境への適切な対応が焦点だった。政策見通しで、多くの参加者はフェデラルファンド(FF)金利を若干引き下げるのは、最も起こり得るシナリオ下では適切だと確信していた。参加者何人かは利下げを書き込み、他はそうしなかったが、利下げを書いた者は5月会合以降、追加緩和の根拠が強まったと認識していることが明確になった。追加緩和は経済活動やインフレの目標到達を促進する。
前回の会合以来、基本的な経済見通しをめぐる不透明性は確かに高まった。しかしながら、金融政策は個別のデータや短期的なムードの振れに、過剰反応しないようにすることが重要だ。それをしたら、不透明さをさらに増すリスクがある。私の同僚と私は、不透明性が経済見通しを圧迫し続けるか否かをみて、景気拡大を持続するために適切な道具を使う。
ありがとう、喜んで質問を受けます。
出典:時事通信
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