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・ダイドーグループH(2590)「無人コンビニ」との提携に透ける焦り(上)(中)(下)
苦しい状況を打開する一手となるのか――。
大手飲料メーカーのダイドーグループホールディングスは4月末、ベンチャー企業「600(ろっぴゃく)」との資本業務提携を発表した。ダイドーグループは同月、600に3億円を出資(出資比率13%)。加えて、子会社のダイドードリンコが600と業務提携した。
ダイドーグループは、2018年度の国内飲料売上げ1248億円のうち8割以上を自動販売機経由の販売が占める。競合メーカーの多くは2?3割程度が一般的で、自販機への依存度が際立って高いことが特徴だ。
■無人コンビニを展開する600
一方、2017年6月創業の600は、オフィス向けのキャッシュレス自動販売機「無人コンビニ」を展開している。この無人コンビニは独自開発したショーケースのような販売機の中に、無線タグ(RFID)を貼り付けた商品を置く。ユーザーはケースに備え付けられたリーダーでクレジットカードを読み取ったあとに商品を取り出すと、その商品が自動で検知され、決済が完了する。
同社は現在、無人コンビニを都心部のオフィス内を中心に75カ所に設置している。一般的な飲料自販機のラインナップは20?30種類ほど。無人コンビニには飲料だけではなく菓子などの食品やマスクなどの日用品を置くことも可能で、最大600種類の商品が入る。
ダイドーグループは今回の提携について、年々苦しくなる頼みの自販機事業のテコ入れ策として期待する。
従来型の自販機は市場が飽和している。日本自動販売機工業会によると、自販機の台数は2018年末時点で212万台、この10年間で5%減と微減。年間の1台当たりの売上高に至っては、データが開示されている2016年には81.7万円と、2008年に比べて15%も落ち込んでいる。2016年以降にも、この下落傾向は変わっていない。
背景には、コンビニとの競争激化がある。自販機での売れ筋商品は容量が少なく収益性の高い“ドル箱”の缶コーヒーで、「自販機の売り上げのうち3割程度は缶コーヒー」とも業界では言われている。その需要が、コンビニ各社が力を入れるカウンターコーヒーに流出していると、業界では見られている。さらに昨年、大容量のPETボトルコーヒーがヒット。缶コーヒーからの需要シフトがさらに進んだ。
自販機への依存度が高いダイドーグループは、市場縮小のあおりをもろに受けている。今2019年度は売上高1700億円(前年同期比0.9%減)、営業利益34億円(同44%減)と、大幅減益の見通し。自販機での売上高は下落傾向が続く。
直近でも、5月末に発表した2019年度第1四半期(2019年1月~4月期)の決算では、コンビニやスーパーなどの販路が前年同期実績を上回ったのに対し、自販機の販路では4%の減収だった。人手不足を背景に、商品補充にかかる人件費や物流費の高騰も利益を圧迫している。
■狙いを定める「企業のオフィス」
採算が取れない自販機の撤去を進める一方、ダイドーグループが新たな設置場所として狙いを定めているのが、企業のオフィス内だ。「屋外と違い、オフィス内は多くの人が長時間滞在する場所なので商品の回転率が高い」(大手自販機ベンダー)。
ただ、好立地のオフィス内を狙うのは、どのメーカーも共通している。設置する際には飲料の価格やリベート(設置奨励金)などの条件で入札になることが多く、「規模の大きいメーカーとの競争になると、入札で勝ったとしても採算が悪い条件になってしまうケースがある」(ダイドーグループ関係者)。
体力勝負に陥らないためにダイドーグループが目をつけたのが、600の無人コンビニ。「飲料だけでは取り合ってもらえなくても、無人コンビニも同時に提案すると興味を示してもらえる」(ダイドーグループのIR担当者)と、自社の自販機と無人コンビニの「セット営業」が大きな武器になると見ている。
600にとっても、今回の提携は魅力的だ。一般的な自販機は、無料で設置する代わりに飲料の売り上げで採算を確保する。他方で、600はメーカーではないため、物販だけでは採算が取れない。そのため設置料金を月額3万?5万円徴収しているのだが、600の久保渓代表は「この設置代金が、展開拡大の際のネックになっている」と語る。
ダイドーグループが自社の自販機と600の自販機を併設した場合、月額の設置料金をダイドーグループが負担する。ダイドーにとっては、この負担があっても、大手との競争によって不利な条件で落札するより1台当たりの収益性が圧倒的に高いという。
■データ活用能力を高める
ダイドーグループは今回の提携で、データ活用能力を高める狙いもある。実は、600の久保代表は、LINEの決済サービス「LINE Pay」を立ち上げたメンバーだ。無人コンビニはクレジットカードで決済をするため、購買者情報に、いつ、何を買ったかが紐づけられる。そうした購買情報に基づいて、自販機の品ぞろえを変えていくこともできる。
ダイドーグループも自販機のオンライン化を進めて購買情報を集めてはいるが、分析するノウハウには乏しい。600の強みであるデータ活用能力を既存の自販機にも展開することで、屋内での設置だけではなく既存の自販機1台当たりの売上高の底上げを図りたい考えもある。
自販機業界にもIT化の波は着実に押し寄せており、生き残るために対応は必須。下位メーカーとして、どのように生き残っていくのか。ダイドーにとって今回の提携はその試金石になる。
(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益 1株益¥ 1株配¥
連本2019.01 171,553 6,071 5,998 3,856 234.2 60
連本2020.01予 170,000 3,400 3,700 2,400 145.7 60
連本2021.01予 176,000 3,800 4,100 2,600 157.8 60
連中2018.07 86,990 3,279 3,243 1,849 112.3 30
連中2019.07予 86,400 2,100 2,200 1,300 78.9 30
苦しい状況を打開する一手となるのか――。
大手飲料メーカーのダイドーグループホールディングスは4月末、ベンチャー企業「600(ろっぴゃく)」との資本業務提携を発表した。ダイドーグループは同月、600に3億円を出資(出資比率13%)。加えて、子会社のダイドードリンコが600と業務提携した。
ダイドーグループは、2018年度の国内飲料売上げ1248億円のうち8割以上を自動販売機経由の販売が占める。競合メーカーの多くは2?3割程度が一般的で、自販機への依存度が際立って高いことが特徴だ。
■無人コンビニを展開する600
一方、2017年6月創業の600は、オフィス向けのキャッシュレス自動販売機「無人コンビニ」を展開している。この無人コンビニは独自開発したショーケースのような販売機の中に、無線タグ(RFID)を貼り付けた商品を置く。ユーザーはケースに備え付けられたリーダーでクレジットカードを読み取ったあとに商品を取り出すと、その商品が自動で検知され、決済が完了する。
同社は現在、無人コンビニを都心部のオフィス内を中心に75カ所に設置している。一般的な飲料自販機のラインナップは20?30種類ほど。無人コンビニには飲料だけではなく菓子などの食品やマスクなどの日用品を置くことも可能で、最大600種類の商品が入る。
ダイドーグループは今回の提携について、年々苦しくなる頼みの自販機事業のテコ入れ策として期待する。
従来型の自販機は市場が飽和している。日本自動販売機工業会によると、自販機の台数は2018年末時点で212万台、この10年間で5%減と微減。年間の1台当たりの売上高に至っては、データが開示されている2016年には81.7万円と、2008年に比べて15%も落ち込んでいる。2016年以降にも、この下落傾向は変わっていない。
背景には、コンビニとの競争激化がある。自販機での売れ筋商品は容量が少なく収益性の高い“ドル箱”の缶コーヒーで、「自販機の売り上げのうち3割程度は缶コーヒー」とも業界では言われている。その需要が、コンビニ各社が力を入れるカウンターコーヒーに流出していると、業界では見られている。さらに昨年、大容量のPETボトルコーヒーがヒット。缶コーヒーからの需要シフトがさらに進んだ。
自販機への依存度が高いダイドーグループは、市場縮小のあおりをもろに受けている。今2019年度は売上高1700億円(前年同期比0.9%減)、営業利益34億円(同44%減)と、大幅減益の見通し。自販機での売上高は下落傾向が続く。
直近でも、5月末に発表した2019年度第1四半期(2019年1月~4月期)の決算では、コンビニやスーパーなどの販路が前年同期実績を上回ったのに対し、自販機の販路では4%の減収だった。人手不足を背景に、商品補充にかかる人件費や物流費の高騰も利益を圧迫している。
■狙いを定める「企業のオフィス」
採算が取れない自販機の撤去を進める一方、ダイドーグループが新たな設置場所として狙いを定めているのが、企業のオフィス内だ。「屋外と違い、オフィス内は多くの人が長時間滞在する場所なので商品の回転率が高い」(大手自販機ベンダー)。
ただ、好立地のオフィス内を狙うのは、どのメーカーも共通している。設置する際には飲料の価格やリベート(設置奨励金)などの条件で入札になることが多く、「規模の大きいメーカーとの競争になると、入札で勝ったとしても採算が悪い条件になってしまうケースがある」(ダイドーグループ関係者)。
体力勝負に陥らないためにダイドーグループが目をつけたのが、600の無人コンビニ。「飲料だけでは取り合ってもらえなくても、無人コンビニも同時に提案すると興味を示してもらえる」(ダイドーグループのIR担当者)と、自社の自販機と無人コンビニの「セット営業」が大きな武器になると見ている。
600にとっても、今回の提携は魅力的だ。一般的な自販機は、無料で設置する代わりに飲料の売り上げで採算を確保する。他方で、600はメーカーではないため、物販だけでは採算が取れない。そのため設置料金を月額3万?5万円徴収しているのだが、600の久保渓代表は「この設置代金が、展開拡大の際のネックになっている」と語る。
ダイドーグループが自社の自販機と600の自販機を併設した場合、月額の設置料金をダイドーグループが負担する。ダイドーにとっては、この負担があっても、大手との競争によって不利な条件で落札するより1台当たりの収益性が圧倒的に高いという。
■データ活用能力を高める
ダイドーグループは今回の提携で、データ活用能力を高める狙いもある。実は、600の久保代表は、LINEの決済サービス「LINE Pay」を立ち上げたメンバーだ。無人コンビニはクレジットカードで決済をするため、購買者情報に、いつ、何を買ったかが紐づけられる。そうした購買情報に基づいて、自販機の品ぞろえを変えていくこともできる。
ダイドーグループも自販機のオンライン化を進めて購買情報を集めてはいるが、分析するノウハウには乏しい。600の強みであるデータ活用能力を既存の自販機にも展開することで、屋内での設置だけではなく既存の自販機1台当たりの売上高の底上げを図りたい考えもある。
自販機業界にもIT化の波は着実に押し寄せており、生き残るために対応は必須。下位メーカーとして、どのように生き残っていくのか。ダイドーにとって今回の提携はその試金石になる。
(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益 1株益¥ 1株配¥
連本2019.01 171,553 6,071 5,998 3,856 234.2 60
連本2020.01予 170,000 3,400 3,700 2,400 145.7 60
連本2021.01予 176,000 3,800 4,100 2,600 157.8 60
連中2018.07 86,990 3,279 3,243 1,849 112.3 30
連中2019.07予 86,400 2,100 2,200 1,300 78.9 30
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※投資の最終的な判断はご自身でお願い致します。
このブログに掲載の情報は、投資を保証するものでは一切御座いません。

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