◆緩和期間が長いことを明示した
黒田日銀総裁は25日の記者会見で、フォワードガイダンスの明確化について、「従来のガイダンスは短いものと受け止められる懸念があり、かなり長い期間であることを明示した」と述べ、ガイダンス強化との認識を示した。日銀は現在の緩和策の継続期間として「少なくとも20年春ごろまで」と明示した。これは総裁が言うように、従来の時間軸が短く受け止められるリスクがあったことに対処したものだが、一方で物価2%の達成が視野にない中では、緩和期間は永久的とも言える。つまり、永久的な緩和が続くのが現実だとすると、「20年春ごろ」と期限を区切ると、その後は緩和が継続しない可能性があることも示唆する。時間軸政策として、長いことのアピールにつながるかどうかは未知数と言えるだろう。
◆21年度に2%に達する可能性低い
黒田日銀総裁は25日の記者会見で、物価目標について「21年度に2%に達する可能性は低い」と述べた。日銀は「展望リポート」で、新たな予測期間となった2021年度の物価を1.6%と予想した。この予想において、年度後半に2%を達成する可能性は否定できないが、総裁自身は2%達成に否定的な見通しを示した。これにより、異次元緩和を始めた13年当時、2年で達成するはずだった2%は8年が経過しても達成できないことになる。そこまで時間をかけても達成できない2%を掲げ続ける意味があるのか。日銀の物価目標政策の存在意義が問われる状況になったと言えるだろう。
◆ETF貸付制度創設により市場機能向上を期待
黒田日銀総裁は25日の記者会見で、ETF貸付制度の創設について、「市場機能の向上が期待される」との認識を示した。ただ、金融市場ではその効果には懐疑的な見方が多く、「空売りに使われるのではないか」(ファンド関係者)との指摘もある。ETFの貸借は流動性が乏しいとされ、日銀としては、保有ETFを貸し付けることで流動性が向上することを狙っている。ただ、流動性が向上するにしても、それが金融緩和の継続性にどのような効果があるのかは「よく分からない」(同)という。恐らくETF購入が多額に上ることへの批判を回避するための措置と受け止められ、緩和継続に資する措置とみなすのは無理があると考えられる。(以上窪園博俊解説委員)
出典:時事通信
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