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日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割ったNT倍率が上昇を続け、23日には2000年以降の最高値を付けた。NT倍率が上昇するにつれて日経平均と、東証の全銘柄の値動きを示すTOPIXの連動性が低下しており、市場では「日経平均は『日本経済の体温計』と呼ばれるが、東証1部の値動きの指標としての機能が低下してきた」(銀行系証券)との指摘がある。 NT倍率は分母となるTOPIXを基準とした日経平均の割高・割安の指標。NT倍率が上昇すると、日経平均の割高感が強まる。 NT倍率の上昇が市場関係者の話題になってきたのが6月。同月20日には12.86倍と、2016年8月15日に付けた直近高値12.81倍を上回った。7月13日に13倍台に乗せた後、12.75倍までいったん低下したが、その後はほぼ一本調子で上昇している。 NT倍率上昇の背景について、市場関係者からは「日銀の上場投資信託(ETF)購入比率の変更が効いている」(インターネット証券)との指摘がある。日銀が7月30、31日の金融政策決定会合でETF買いの配分比率を見直し、日経平均型を減らしてTOPIX型を従来の75%から9割近くへ引き上げた。 ファーストリテ<9983>など日経平均の構成比が大きい銘柄の浮動株不足が意識されていたところに、日銀が日経平均ETF買いの削減を決めたため、浮動株不足が事実上追認された形になった。 市場では「品薄の値がさ銘柄に対する日銀ETF買いのインパクトは日増しに大きくなっている」(中堅証券)との見方が強まり、値がさ株が割高に買われてNT倍率を引き上げているようだ。 ただ、NT倍率が上昇するにつれて、日経平均はTOPIXと異なる値動きを見せるようになってきた。日経平均とTOPIXの25日ベースの相関係数はアベノミクス相場が始まった2012年11月以降の平均で0.959と100%連動を示す1に近い。 ところが、直近の相関係数は8月10日に節目の0.9を下回り、17日は0.853に低下した。23日まで10日連続で0.8台で推移しており、日経平均が以前ほどTOPIXにスライドして動かなくなった様子を裏付けている。今後も日銀がETF購入を続ける限り、NT倍率は上値を追っていくことになりそうだが、企業価値向上の裏付けに乏しいまま需給要因で買い進まれる限り、日経平均が不安定化するのは避けられないだろう。 〔本記事に対するご意見などを下記のアドレス宛て電子メールでお送りください。時事通信社〕メールアドレス 【station@grp.jiji.co.jp】