先日、筆者が代表を務めるファイナンシャルプランナーの勉強会で、実物不動産オーナーのシュミレーションゲームを行いました。やってみた感想は、「実物不動産のオーナーとして、マンションやアパートを経営し、それなりのキャッシュフローを確保するのは意外に難しい」「まさに表面利回りだけに踊らされていては、カモネギになってしまう」といったものでした。 そこで、今回は実物不動産オーナーではなく、いわゆる「REIT」を購入して「大家さん」になることについて考えてみたいと思います。 <REITに追い風!? > 周知の通り、日本銀行は今年の2月16日から民間銀行が保有する当座預金にマイナス金利を適用する政策を発動しました。金利と不動産市場は密接な関係にあるといわれます。つまり、一般的に金利水準が高ければ不動産を買おうという人は減る一方、金利が低くなれば不動産市場への参加者が増え賑わうということです。 また、「マイナス金利政策」は、特に地方銀行など地元企業への融資と債券投資が主な収益源となる地域金融機関に与える打撃はかなり大きいと思われます。結果として、今後一段と利ざやが薄くなる中、こうした地域金融機関が国債や系統金融機関への預金運用額を減らし、その代わりとして「REIT」の投資額を積み増すことも想定されます。 さらに、マイナス金利になったからと言って、金融機関がすぐさま設備投資や研究開発資金などの融資に踏み込むとも考えにくく、当面は時間稼ぎ的に「REIT」市場への資金流入が進むとも考えられます。このような点が、昨今のマイナス金利政策がREITにとって追い風といわれる所以かと思います。 <そもそもREITとは? > 「REIT」とは、「Real Estate Investment Trust」の略で、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。動産に投資を行うものの、法律上は投資信託に分類されます。 一般的に、先述したように実物不動産のオーナーになることは、実際の売買や維持・管理に多額の資金と煩雑な手続を要するため、 簡単に投資することが難しい資産と言われます。それに対し、「REIT」は複数人による出資を1つの大きな集まりとすることで、個人では売買が難しい大規模な不動産にも投資することが可能になるというわけです <実物不動産オーナーがいいか? REITがいいか? > というわけで、「実物不動産オーナーがいいか? REITがいいか? 」については、(あえて借入れを考慮しての相続対策や、物件の内容によっては実物不動産投資の妙味があることも十分ありますが)一般的に、実物不動産オーナーになるには、「あまりにも多額の投資になってしまう! 」あるいは、「管理や修繕、空室リスク、固定資産税など煩雑で意外と難しい! 」などと考える人にとって、「気軽に投資できる」といった点で後者に軍配が上がると思われます。 <リスク要因には注意> このように、当面は日銀のマイナス金利政策によって、資金流入が促進される可能性が高く、また実物不動産オーナーになるのと比べてメリットも多い「REIT」ですが。やはり、様々なリスク要因があることも忘れてはならないでしょう。 6月23日の英国EU離脱に端を発する世界経済の不透明感、中国人民元問題や米国大統領選の行方、さまざまな地政学的リスクなど。これらのリスクが顕在化した場合、REIT市場にも逆風が吹く可能性は十分あります。 また、投資先がオフィスビルなのか? 商業施設なのか? 倉庫なのか? どの地域の物件なのか? などには十分注意を払って頂きたいものです。さらに投資信託である以上、そのメリットやデメリット、リスクについても理解することは言うまでもないと思います。 阿部重利【あべしげとし】 経済産業省認定 経営革新等支援機関 ヒューマネコンサルティング株式会社 代表取締役 保有資格: BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、CFP(R)、金融知力普及協会認定金融知力インストラクタ-、DCアドバイザー、年金・退職金総合アドバイザー、心理カウンセラー、キャリアコンサルタント、ワークライフバランスコンサルタント 活動歴: 金融機関での実務経験を生かし、経営顧問・コンサルティング活動の傍ら、全国各地で講演会をはじめ、年約150本の企業研修、講演会、セミナー、などを精力的にこなしている。そのパワフルでユーモア感のある語り口と説得力は各方面から好評を得ており、これまでコンサルティングや研修、講演を受けた企業人の知識やモチベーション・スキルアップに大きく貢献している。 著作に「実践ワーク・ライフ・ハピネス2~成功する会社は仕事が楽しい~」(万来舎)、「働き方が変わる!会社が変わる!実践ワーク・ライフ・ハピネス」(万来舎)、「コモディティ投資入門」(アスペクト社)、ほか、「フィナンシャル・アドバイザー」誌(近代セールス社)、「ファイナンシャル・プラン」誌(きんざい)等多数。
出典:株式新聞
※投資の最終的な判断はご自身でお願い致します。
このブログに掲載の情報は、投資を保証するものでは一切御座いません。
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