<追加緩和実施なら長期金利は過去最低に> 16年の円債市場は、15年に続いて日銀の金融政策に対する依存度が高い年となりそうだ。12月17日と18日に開催した日銀の決定会合では、異次元緩和の補完措置を導入。購入する国債の平均残存期間のより長期化を決定した結果、償還まで期間の長い国債の需給ひっ迫観測が強まる見通し。黒田日銀総裁が追加の金融緩和に踏み切るかどうかは読みにくいが、仮に、追加緩和に踏み切れば、長期金利の指標となる新発10年国債利回りは、15年1月20日につけた過去最低の0.195%を下回り、一段の低下余地を試す場面が想定される。逆に、追加緩和がなかったとしても、日銀の「国債爆買い」を通じ、長期金利の上限は0.5%程度でとどまり、上昇余地は限られそうだ。 <ミスターサプライズ、どう動く> 12月の決定会合で日銀は、「マネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するような金融市場調節を行う」という従来の方針を維持することを決めた。同時に長期国債買い入れについて、「7-12年」と従来の「7-10年」の平均残存期間の長期化やETFの購入枠の拡大など、「量的・質的金融緩和」を補完するための措置も導入したが、市場では「小出しの緩和策」と受け止められた。「本来であれば、将来の緩和余地が広がり、ネガティブな内容ではないはずだが、追加緩和論が思ったほど広がらず、逆に、黒田総裁が否定してきた緩和の限界を浮き彫りにさせた」(外資系証券)という。 そうしたなかで、「黒田総裁が『限界論』に積極的に挑戦する姿勢が見え、『限界論』を理由に追加緩和を躊躇するとは考えにくい」(大手証券エコノミスト)との声も聞かれた。半面、「円高に伴う景気腰折れリスクが台頭しない限り、日銀は追加緩和を封印するだろう」(銀行系証券)との指摘もあり、16年の日銀の政策運営について、市場参加者の見方は分かれる。 とはいえ、「ミスター・サプライズ」の異名を取る黒田総裁のこと、市場で追加緩和観測が後退したタイミングを狙って緩和を打ち出す可能性を十分残す。仮に、追加緩和に踏み切る場合は、「適格担保拡大と買い入れ国債の期間長期化を活用する形で、マネタリーベース目標の引き上げ、国債買い入れの増額が有力手段になる」(同)という。 <政策の「わかりやすさ」が必須> ただし、「黒田バズーカ」と呼ばれた過去2回の大胆な金融緩和(13年4月の第1弾と14年10月の第2弾)の局面では、黒田発言のわかりやすさが市場に受け入れられ、かつ市場での評価も高かったわけだが、15年12月の決定会合では、「緩和なのか、現状維持なのか」と消化難に陥り、実際、株価、債券、為替市場が上下に大きく振れた。「市場に真意が伝わるような情報発信の仕方を工夫する必要がある」との注文をつける市場関係者は多く、16年の黒田総裁は、市場との対話重視の姿勢も求めらそうだ。 一方、円債市場の需給見通しはどうか。日銀の16年の国債購入総額は年間で120兆円程度と、15年から約10兆円程度を増やす。日銀が「国債の爆買い」を継続する背景には、保有する国債が大量償還を迎えることがある。月間の市中発行額を丸飲みする傍らで、新規の国債発行額は34.4兆円と4年連続で減る見通し。 日銀の「国債の爆買い」の継続を通じて債券需給は引き締まり、長期・超長期国債を中心に買いが入りやすく、金利低下余地を広げる可能性を残す。カギを握るのは、「民間で最大の国債保有主体で、かつ超長期国債でも最大の保有主体の生保の動向。日銀の期待にどこまで応えらるかを注視したい」(銀行系証券)という。 <参院選、17年の消費税引き上げにも注目> 黒田総裁が任期切れを迎える18年4月8日まで残すところ2年余り。13年4月の異次元緩和導入時は、翌年の増税の影響を和らげる目的で、さらに14年10年の追加緩和時は結果的には裏切られたが、安倍首相の増税決断を後押しした。もっとも、16年については、「7月の参院選(衆院とのダブル選挙の可能性もあり)の結果次第では、再増税延期の可能性が取り沙汰され、黒田日銀は難しい決断を迫られそうだ」(大手証券)という。 増税再延期がないと確信すれば、安倍政権の支援を図りやすく、「ミスター・サプライズ」の本領を発揮することになるが、逆に、異次元緩和を打ったとしても、増税再延期で財政規律が緩むのであれば、黒田総裁はてこでも動かないことだろう。
出典:株式新聞
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このブログに掲載の情報は、投資を保証するものでは一切御座いません。
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