三日間で合計11時間のスパーリングを終えた私に、自炊する気力は残っていなかった。そもそも近所のスーパーが時短営業中で早仕舞してしまったから食材を調達出来ない。今夜はコンビニに行こうか?24時間営業だからそれは最終手段だ。沖縄料理店でテビチそばにするか?残念、もう閉店してる。中華料理店で炒飯と餃子にするか?気分じゃない気がする。うどんにするか?遠い、引き返そう!
うがみやびらん。日曜日の話。
眠りに就きつつある深夜の町を空腹と眠気で朦朧としながら徘徊していた私の目に留まったのは「数量限定」「夏季限定」の文字と、お皿いっぱいに盛られた牛タンの写真だった。
勝利の叫びを挙げたのは心の中でだけで、吸い込まれるが如く蛍光灯の眩い店内に向かってよろめいた私に自動扉が反応して開く。まだ幽霊にはなっていなかったようだ。
吉野家の牛たん麦とろ御膳は、果たして美味であった。とろろ芋・醤油・オクラ・七味唐辛子をご飯に順に加えながら、ニンニクの味が付いた牛タンと組み合わせていき、自分を労う。至福なり。
勢い付いた私は退店後、辛うじて営業中の中華料理店に寄って炒飯と餃子を追加しようかとも思ったが、思い留まった。本当にこれで休日を終えて良いのか。
よく考えてみれば疲れているのはスマッシュを連打した背筋であり、先日の筋トレによる筋肉痛のようやく消えつつある腹筋であり、余りにも勝負に弱い自分に辟易した心ではないか。まだ鍛えられる場所があるだろう。帰宅後にスクワットをやる事を決意した。
プロテインドリンクを目当てに行き先をコンビニに変えたその時「こんばんはー」という声が聴こえた。こんばんは?なんぞ?「こんばんは!」と大きく繰り返され、更に二つの声が続いた時、それらが通りで擦れ違った三人から自分に向けられたものだと理解した。その三人とは平均して週一回くらいは通っている近所の北インド料理店の店員さん達で、閉店作業を終えて帰宅する所だったのだ。顔を憶えていてくれた!嬉しい!
こんばんは、お疲れ様です!と何だか晴れやかな気分で挨拶を返し、コンビニに向かった。
さて、帰宅後、牛たん麦とろ御膳の感動をTwitterに投稿し最後の気合を振り絞ってスクワットを終えプロテインを摂取した後でまた携帯電話を見てみると、意外な人物からの返信があった。
心温まる食事の後の心温まる会話がこれまたご褒美に感じられた。また演奏でご一緒したいものである。
みんなも吉野家の牛たん麦とろ御膳を注文してみてね。
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【8/4(火) DC/PRG】
@新宿Blaze