Dearダニー 君へのうた | 酔いどれぐっちの酒と映画と音楽と…

Dearダニー 君へのうた

を観てきました。

アル・パチーノの「いい味」が炸裂してる映画でした。

ストーリーは、新人ミュージシャンに宛てたジョン・レノンからの手紙が数十年の時を経て本人の手に渡ったという実話に「ほんの少しだけ」基づいていて、往年のヒット曲ばかりを歌って新曲を作る事無くむなしい日々を送っていたアル・パチーノ扮するダニーが、新人の頃に受け取るはずだったジョン・レノンからの手紙を受け取った事から、人生をやり直すべく顔を見た事も無い息子に会いに行く為に旅に出て…といった感じです。

観る前はアル・パチーノとミュージシャンというイメージが結びつかずちょっと不安もありましたが、観てみたら力の抜けたアル・パチーノの軽妙な演技がミュージシャンという役と全く違和感無く思わず引き込まれていきます。

アル・パチーノのイメージというと映画「ヒート」の刑事役のような脂ぎった濃いい演技のイメージがありましたが、歳を取ったというのもあるでしょうがこの映画では老境に差し掛かったミュージシャンをさらりと演じています。

息子に会いに行く為に宿泊したホテルのコンシェルジュとちょっといい仲になったり、何十年ぶりに新曲を作ったりと正に人生をやり直していい感じに話が進むのかと思ったら、そうは単純に事が進まないところは大人の鑑賞に堪えうるドラマといった感じです。

息子に会いに行くもけんもほろろに拒否されるダニーですが、息子の娘(ダニーにとっては孫)がADHDである事を知ると自らのコネをフル活用して何年も予約で一杯の病院を世話し、息子が病気である事を知ると自ら息子の集中治療に付き合います。

少しずつ息子と信頼関係を築くようになるのかと思いきや、上述のようにこれまたそう単純には進みません。

そうそうこちらの予想通りに話が進んだらつまらないもんね。

ラストもなかなか良い終わり方なんじゃないかと思いました。
ダニーが息子の集中治療に付き合ってる時に何故メモを持っているのか気になっていましたが、「ああ、そういう事だったのね」と何気に伏線を張っていたのが後で気付いて面白かったですね。

ただ息子役の役者がアル・パチーノと全然似てないのがちょっと違和感ありましたかね。
映画の冒頭でダニーがデビュー時にインタビューを受けるシーンがあるのですが、デビュー時のダニー役の役者がアル・パチーノそっくりでこの映画の気合を感じただけに、せめてイタリア系の役者を使っていればと思いました。

ちなみにダニーとちょっといい仲になるホテルのコンシェルジュをアネット・ベニングが演じているのですが、最初に見た時ダイアン・キートンかと思いました。
冷静に考えてみればダイアン・キートンだったらもうちょっと老けてるはずですが、ダイアン・キートンは過去にアル・パチーノと交際していた事があるので、また再共演しているのかと思ってしまいました。

自分のアネット・ベニングのイメージはウォーレン・ベイティと結婚した頃で止まっていたので、あれから20年以上経ってるんだからそりゃあ老けるのも仕方ないですよね。

しかしあまりにも似ていた(と自分は思いました)ので、ひょっとしたらアル・パチーノがダイアン・キートンのルックを所望したのかと勘繰ってしまいました。
(さすがにそれはないか)

まぁそれはいいとして、この「Dearダニー 君へのうた」、滋味深い良質な大人のドラマだと思います。
劇場ではそろそろ終了してしまうと思いますので、DVDが出たら是非観てほしいですね。