夏の超短編小説sioe風味三連発 | 奥歯にものは挟まずに

奥歯にものは挟まずに

認知症の義母をきっかけに、ふざけたブログを書き出して、
義母を見送りました。
イケてて笑える(笑われる)ババアを目指して、日々の暮らしを綴ります。

言葉遣い


エアコンは18℃に設定されているが、私が働くビルでは、みなうっすらと汗をかいている。

スチームと呼ばれるアイロン3台で、ベールにアイロンをかけているからだ。

チームの上長が、小さなクリップ式の扇風機を2台抱えて寄ってきて、みなに、

「どこに置いたら涼しい?」と尋ねてまわる。

残念ながら、私がベールを広げてチェックしている場所に、風は届かない。

私は一旦手を止めて、3、4歩移動し、扇風機の前に立って呟いた。


「か、風を感じたい…。」


「www

そういう言葉遣い好き〜w」

縫い物をしていたYさんが私の呟きを拾ってくれた。

私もえへへと笑って、

また元の場所に戻り、ベールをビニールから取り出し始めた。




スイカ


アーケードのある昔ながらの商店街の八百屋に、4分の1カットのスイカが置かれている。

今日の買い物の量からすると、自転車の前カゴの1番上に載せて、潰さずに持って帰れそうだ。

私は財布から600円を出した。

スーパーの6分の1カットのスイカよりずっと大きくて、割安だ。


娘はそんなにスイカが好きではない。

たぶん自分では滅多に買わないのではないだろうか。

私もそんなに好きではないが、夏はやっぱりスイカを食べたい。


帰宅して、潰れなかったスイカを、皮を掬うように包丁を入れ、甘さが均一になるように、中心を頂点とした四角錐、端は三角錐、になるように切り、大きな保存容器に、隙間ができないように入れてゆく。


この形のスイカが、中学の修学旅行の、お芝居見学(和宮さまおとめ という題目だった。)の合間に食べたお弁当に入っていたんだよなぁ。

あれは確か5月か6月くらいで、

あのお弁当の中の甘味としての一切れが、ものすごく貴重なもののように、輝いて見えたっけ。

真夏になると、こんなにありふれた果物なのに。


私はスイカを容器に丁寧にパズルのように入れながら、


「あのスイカは、工業高校の、クラスに1人しかいない女子、のようなものだな。」


と思いつき、

自分の例えの的確さに満足の笑みを浮かべて、三角錐を一切れ口に放り込んだ。




手遅れ


体質もあるのだろう。

肌の色は白くても、ひじや膝が黒ずんでいるタイプの人がいる。

夏になるとみな肌を出すから、私は前を歩く老若男女の肘を観察してしまう。


私もそういう黒ずむ体質なのだ。

肘や膝もそうだが、足の甲の、足首に近いところ、正座して骨が当たるところと、座って仙骨が当たるところも黒ずんでいる。

…悲しい。

オイルでお手入れしても、柔らかくはなるけれど、色素が完璧になくなることはない。

30代後半で、お尻が黒ずんでいることに気づいたが、なすすべもなく今日まで来た。


ある日、仕事場で数人で座って縫い物をしていると、20代後半の、滝川クリステルに激似の美人の社員が、

「ダメだめっ。お尻黒くなるよっ。」と、床にじかに座っている人たちにクッションを配りはじめた。

みなが笑い、私も笑った。


こんなまだ若いとっても綺麗な子が、

「お尻が黒くなる」ということを知っているのがおかしかった。


「もう黒いです」と、

私はあの時声をあげられなかった。

自分から笑いを取りに行けなかったいくじなしだ。

たぶんそれは、私の中にまだ息づく乙女の抗いだ。


もう手遅れだと知りながら、私は何食わぬ顔をして、今日もクッションを尻に敷く。




友達がいなくて暑くてヒマなんだわね、ワタシwww

お楽しみいただけましたでしょうか?

w

足にペデキュアしてたのっ。

乾かしながら書いてたのっ。


しょーもないとか言うなっ。


もともと全編がしょーもないブログどす。