アタシは今日も嬉しく働いた。
お喜びの気分で溢れているのよ、スーツ屋のこの時期は。
みなさん、おめでとうございます。
18歳の、高専、に通う男の子と、
そのご両親が、来店した。
高専は、3年生で制服がなくなり、
彼は今すぐ大学に進むワケではないが、
この春に企業に一週間、研修に行くそうで、
そのためのスーツが必要なのだそうだ。
彼はラグビー部で、高専にいるあいだはラグビーを続けるとおっしゃる。
あと10キロ体重を増やしたいのだそうだ。
(ラグビー部あるある、なのよ、走れて力持ちで、筋肉ムチムチのコが強いの、活躍できるのよね。
ウチの息子は高校時代にラグビー部だから、知ってますよぅ。)
ん、この子、細身だけれど、けっこう筋肉質だわね。
ウチの若向きのスーツだと、太ももがヤバイかもなぁ。
アタシは、まずはありがちな、就活生がよく利用する、すこしゆったりした黒無地のスーツをオススメした。
いくつか試着してもらって、
彼は、
我が社が誇る、スリムなスリーピースが良いと言う。
確かにカッコイイ。
が、10キロ体重を増やしたら、着れなくなっちゃうよ。
そこで同じスーツの、胴回りが2センチほど大きくなる、背があと5センチ高い人向けのものを勧めた。
袖丈と着丈が少し長くなった。
(お直しで対応できると伝えました。)
その大きめサイズのスーツを、彼はウンと言わない。
今のジャストサイズのスーツがカッコイイ、とわかってしまったからだ。
親御さんと相談して、
結局彼は、ジャストサイズのカッコイイスーツを購入した。
親御さんは、我が子が無難な、ありがちなスーツスタイルを選ばなかったことを嘆いたが、
アタシは、
「これがいい、って自分で決められることも、とても素敵なことですよ。
自分の着るものなのに、全く興味の無いお子さんもいらっしゃるんです。
なんだか、大げさですけど、生きる力が弱いんじゃないかと、心配になってしまうようなこともあるんですよ。」
とお伝えした。
お客様に、納得してほしいな、と思う。
いちばんピッタリするものを、
いちばん自分を引き立たせてくれるものを、
なりたい自分にいちばん近づく衣類を、
予算の許す範囲で、買ってほしいなと思う。
お客様のおとしどころが見つかって、ご購入を決意されると、本当に嬉しい。
ちなみに、女性の場合は、
ピッタリしたスーツだと、3キロ太ると、着れなくなりますよ。
とアタシはお伝えしています。
(悲しい事実。)
受験で体重の変化があり、これから太りそうな人、
これから痩せそうな人は、
そこいらへん考えて、スーツを選んでくださいよ。
みなさん、
アタシはみなさんを美しく、かっこ良くするために、
誠意を尽くしているつもりです。
アハ。
売り上げ売り上げって言われなかったら、
接客は楽しいですわ。
ここでこんなことを言ってもしゃーないが、
アタシの販売員としての誇りは、
こんなところにあるのです。
えっとね、
ちょっとお高いものを買うときはね、
信頼できる販売員さんに当たるといいね。
みなさん販売員さんに、こういうライフスタイルで、こういうものを探している、って、率直に言ってしまっていいと思うよ。
そのほうがより良いものを手に入れられますよ、きっと。
アタシは、
この仕事を続けるウチは、
そうであるよう努めます。
販売員も、やらねばならぬ作業がいっぱいで、接客に時間をかけられない時もあるんだけどもね。
人間は、つきつめると、誰かの役に立つことが喜びなのかもしれない、
などと思う。
楽しく嬉しく、
納得してお買い物ができるよう、
中途ハンパな販売員のアタシですけども、
願っておりますよ。