朝イチにお義母さまから電話がありました。
「あ、sioeちゃん?
あんた昨日来るって言うから、ずっと待っててんで」
と、暗い声の出だしだ。
ちょっとご機嫌斜めだな。
アタシは
「ついこのあいだ、行ったでぇ」
と明るく返した。
お義母さまは
「っ。そうやった?」
と、
自分の記憶がおかしくなっていたことを認めた。
アタシは、
「トシ取ると、一晩寝たら、忘れてしまうこともあるみたいよ。」
とフォロー。
お義母さまは「いやあ」(いいえ、の意味ね)とは言わなかった。
たまには素直になりますのよ、お義母さまは。
あとは、
貯金をあんたにゆずるから、あんたに面倒を見てもらいたい、
などという話であった。
お義母さまはご機嫌よく、電話を切られました。
わかってますがな。
譲るも何も、お義母さまの通帳3冊は、もう我が家にあるんだぜぃw
(知らない人のために書いておくと、
いろいろ小細工して、偶然が重なって、我が家は、四苦八苦して、お義母さまの通帳を手にいれた。
このお金で、お義母さまに使うぶんはもちろんのこと、我が家の赤字ぶんにも使わせていただきました。)
お義母さまに貯金が一銭もなくたって、我が家が見るしかないのですよ。
でもお義母さまのおかげで、
お義母さまが認知症になったおかげで、
旦那が非正規雇用で、我が家があっぷあっぷした家計であることを、お義母さまは理解できず、
つまりお義母さまは悲しくなることがなく、
我が家は子供達も無事大学を出て、
経済的に落ち着いたのだ。
なんてラッキーw
お義母さまには気の毒だが、これで良かったのだ。
(真実は時に残酷。
手塩にかけて育てた、中学までいつも学年トップの息子が、
学者や医者や弁護士や会社経営者や、とにかくエリートにならず、
冗談ばっかり言っているオッさんとなっていることを、お義母さまは悲しんだことだろう。)
アタシはお義母さまと昔話をたくさんする。
お義母さまは、7人兄弟のなかで1番見た目が良くなくて、勉強はよくできたこと。
背が高くて太っていたから、着物が似合わず、母親に、「おなかをすっ込めなさいっ」と着付けられたこと。
14、5歳で赤十字に合格して、親も喜んでくれたこと。
最初の結婚でもうけた長男を、あなたの子供だから、ぜひ家に養子に、ともらわれていったことも聞いた。
(お義母さまはバツイチ。)
お義母さまの人生の一幕。
どの話も、もう何十回、聞いたことだろう。
お義母さま、
コンプレックスを抱えて、成績が良かったことを誇りにしていたんだよね。
息子も賢く育てて、嫁としての務めを、立派に果たしたかったんだよね。
お義母さまのその価値観を、アタシはそのまんま受け継ぎはしなかったけれど、
気持ちはわかる気がするんだなぁ。
お義母さま、女の一生、ご苦労様でした。
あ、まだお義母さまは生きるだろうけどw
女どうしだもの、
お義母さま、
いっぱい話してちょんまげ。
いくらでも聞くからさ。
お義母さまが話してくれたことを、
アタシは、
同じ女として、興味深く聞いているよ。
そのエピソードの真ん中にある、お義母さまの喜びや痛みに留意しながら。
なんたって、お義母さまのオハナシを聞くのは月に2回だけだからだなぁw
毎日は、
無理だわぁw