心して読んでくれたまへ。
29日、お義母さま宅へやってきたアタシ。
ヘルパーさんが来ていた。
ヘルパーさんは買い物をしてくださった。
アタシは料理を作りながらお義母さまをさんざんしゃべらせ、
ちょっと正月っぽいメニューを、5、6品作った。
玄関と、玄関先の階段も、デッキブラシ(柄は取れて、握るブラシになっているよ。緑色のカスが落ちるの。劣化しています。)でこすった。
洗濯、普通のものと、カーテンも、した。
夕飯をお義母さまと食べた。
先日お義母さまが入ったまんまの、芋虫入りの湯は捨て、
新しくお水をはり、お風呂を沸かした。
犬をシャンプーし、アタシは綺麗なお湯に浸かった。
9時半過ぎだったろうか、
アタシがお風呂から上がると、お義母さまはコタツに入っていた。
気分が悪いと言う。
うつぶせになっている。
手も真っ白、血の気がなく、足は冷たい。
コタツに入っているのに。
「今日は会いたい人に会えた。
(ヘルパーさん、アタシ、植木屋さんが訪ねて来た。)
私はもうお迎えが来るかもしれない。」と、お義母さまは言う。
ちょっと芝居がかっているが、アタシは動揺した。
まさかお迎えが来てしまうのか?
アタシはまず旦那に電話した。
旦那は、お義母さまがベラベラしゃべることを聞き、大丈夫と確信したのか、
「何を言うとるねん。」とあきれつつ、アタシによろしく頼むと言った。
旦那は新聞配達をしているし、もう神戸から奈良までの電車はない。
お義母さまはベラベラしゃべってはいるが、まだ様子は変だ。
動けない、肩から背中がしびれる、と言う。
アタシはスマホで救急車を呼ぶ基準、などと調べてみた。
イマイチわからん。
アタシはケアマネ に電話した。
救急車を呼ぶ基準を尋ねた。
脈を取ってみてください、とケアマネ は教えてくれた。
お義母さまの脈を取ると、リズムがめちゃクチャだ。
お義母さまはベラベラしゃべりながらも、肩や背中が痛い、と言う。
どうする?
アタシは悩んだ。
救急車を迷惑に呼ぶのもいけないだろうが、
万が一ここでお義母さまに逝かれてしまったら、どうすりゃいいんだよ?
2人きりでお義母さまを見送るなんてヤダ。
ついにアタシはお義母さま宅の電話で、119番を回した。
お義母さまは電話をかけるアタシの後ろで、
入院は困るのだ、やめてちょうだい、
隣近所に恥ずかしい、と弱い声で騒いでいた。
間も無く救急車が音を立てずやってきた。
緑色のタンカを持っていた。
お義母さまはいつの間にか、コタツから出て、ソファに座っていた。
動けるやないかっ。
救急隊員は3人。
アタシとお義母さまに、それぞれ事情を聴いた。
使い捨ての手袋をはめた手の甲に、ボールペンで、病歴、飲んでいる薬などをメモっていた。
アタシは動揺しながら答えた。
お義母さまはベラベラとしゃべっている。
病院は絶対にイヤ。入院は困る。行かない。救急車には乗らない。
3人の救急隊の説得には応じなかった。
結局、指で酸素を測り、血圧を測って、脈を取っただけ。
救急隊に謝り、おかえりいただいた。
認知症は、常識的な理解はできません。
お義母さまは、救急車で運ばれたら、一ヶ月は入院することになる、と固く信じていらっしゃいます。
犬の面倒もあるし、付き添いも必要。
我が家に迷惑をかける、と心配していらっしゃるのです。
なので、救急隊とアタシの説得には応じませんでした。
もう知らん。
アタシはアタシのできることをしたし、本人がそれで良いと言うのなら。
12時近くになっていた。
お義母さまはダイニングテーブルでタバコを吸いながら、
コタツで寝かかっているアタシに、
もう何度も聞いているけれど、
長生きはしなくていい、
この家で、犬とおだやかに暮らしたい、
家を守るのだ、
あんた(アタシ=嫁)が親切で救急車を呼んでくれたのに済まなかったね、
本当に具合が悪くなったら、あんたに面倒を見てもらいたいのだ、
ちゃんと対価は払うから、
などと、
ずっとベラベラしゃべっていた。
手足が冷たかったのも、顔色が悪かったのも、もうどこへやら、だ。
…早く寝なさいよぉ。
わかってるってば。
翌朝、娘、息子、娘の友達がお義母さま宅にやって来て、アタシ達は、ラグビー観戦のため、お義母さま宅を去った。
今回のことで、アタシは思った。
お義母さまと2人きりで、お義母さまを見送るなんてイヤだぁ。
お義母さま、もっとちゃんとアナタを愛している人に見送ってもらいなさいよぉ。
(それか、ひっそり一人で逝け。)
いらないから。
ありがとう、とかいらないよ。
アタシはお義母さまと面白おかしく付き合うだけなのだ。
そんなこんなの出来事も、お義母さまは忘れるだろう。
♪わ~れは逝く~
青白き頬のま~ま~で~
わ~れは逝く~
さらば~すば~るよ~
紅白歌合戦に谷村新司って出場したっけ?
救急隊員さん、すみません。
この忙しい年末に、読者のみなさんにも、
なんとなくすみません、と申しておきます。