私と夫はフォアグラを食べた事がなかった。
ヒエラルキーの下に属する庶民の食卓に、フォアグラが上がることはない。

結婚記念日、せっかくだから人生に一度くらいはフォアグラを食してみようじゃないか!!…と意気込んでみたのだが、小市民な夫は「ドレスコードとかテーブルマナーとかわかんないよ~」と、家を出る前から腰がひけている。

しかし、フォアグラといえばフレンチだ。
ドレスコードが無くとも、最低限ナイフとフォークが使えなきゃ話にならんのだが、彼が使えるカトラリーはファミレスのオールマイティーシリーズのみ。

打開策として、フレンチと寿司が同時に味わえるという、某○寿司総本店(という名のチェーン店)へ行ってみた。

その店で一番高価なコースを注文。

寒い。
寒波だかで、12月並みに寒い日であるのは仕方ないが、空調が効いていない。
コートを脱ぐのを躊躇するレベルだ。

そんな店内で出された前菜は、冷たかった…
冷菜なのか?
そうとは思えん。
蒸しリンゴに、チキンのソテーマスタードソース。
冷たすぎて、味がよくわからん。

スープは暖かかったのが、不幸中の幸いだ。
しかし、ポタージュなのでコンソメなんかに比べてぬるい。
とても冷えきった体が暖まる程ではない。

ぬるい煮物。ぬるい茶碗蒸し。
乾いた刺身と続き、いよいよメインディッシュ。
牛肉のステーキフォアグラソテーのせの登場である。

まずは牛肉を一口。
…ぬるい。
これもか…

そして運命の瞬間。
フォアグラだ。
ここまでの道のり、なんだか嫌な予感しかしないが、人生苦あれば楽ありというじゃないか!!
これまでの料理はフォアグラを味わう為の引き立て役なんだわ!!

そう自分を奮い起て、一口。



生臭い…
なんだ?このボソボソと舌触りが悪いわりに油がギトギトした物は…
しかも、飲み込んだ後に口内を立ち上る強烈な生臭さ。

これがフォアグラ?
みんな、こんな物をありがたがって食っているのか?
セレブって舌バカなのか?

これなら、スーパーで安売りしてる鶏レバーを自分で炒めた方が100倍旨いよ!!

横を見る。
目があった夫が一言。
「レバーだね」
ふざけんな!
レバーに謝れ!!

続いては寿司。
いくらなんでも、寿司屋だもんな。
寿司に間違いはなかろう。

ぬるい(ノд<。)゜。
シャリはネトネトで、ネタは乾き、海苔は萎びている。
雲丹の粒は消え失せ、もはやペースト。

回転寿司が高級品に感じる。

締めのデザートに、期待する気力は無かった。
そして、予想通りの安っぽいチーズケーキが出てきた時、逆に安心してしまったよ。

とんだ結婚記念日になってしまった。

しかし、あの店にいた他の客は旨いと思っていたのだろうか?