一人称単数

【著者・村上春樹】

【石のまくら】

僕は、大学二年生の頃、アルバイト先で出会った女性と一夜を共にした。

名前も顔も覚えていない。

後に送られてきた、短歌の小冊子。

自費出版とさえ思いがたいもの。

しかし、その中のいくつかが強く心に残った。

二十代中位の彼女は、愛されていない男性に愛をそそいでいた。

彼女は、今でも短歌を作り続けているのだろうか。

この小編とも言えそうな短い小説の中で、強く残った二行がある

『辛抱強い言葉たちをこしらえて、あるいは見つけ出して後に残すためには、人はときには自らの身を、自らの心を、無条件に差し出さなくてはならない』


【クリーム】

僕は、昔の出来事を年下の友人に話した。

それは、まだ18歳で浪人生をしていた頃、友達の女の子からピアノリサイタルの招待状が送られてきた。

しかし、そのリサイタルの場所は封鎖されていた。

公園で過呼吸を起こし休んでた僕は、高齢の男性から話しかけられた。

そして、理解しがたい話をされる。

中心がいくつもあって、外周を持たない円。それは一体なんなのか❓️


【チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ】

僕が、大学生の頃に書いた『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』という、架空のレコードの批評。

架空にもかかわらず、大学の文芸誌の編集長が信じて載せてしまった。

本当にレコード店に行く人がいたりした。

その記事は打ちきりとなるが、それから、15年後。思わぬ形でそのレコードを見かけることになる。



【ウィズ・ザ・ビートルズWith the Beatles 】

1964年、世界中にビートルズ旋風が吹き荒れていた頃、廊下ですれ違っただけの彼女に強く心を引かれた。

彼女が胸に抱えていたのは、ビートルズのLPレコード「ウィズ・ザ・ビートルズ」

たった一度、学校の廊下で見かけただけの彼女。

その後、彼女に逢うことは無かった。

「僕」はそれ程、ビートルズが好きというわけではないが、世の中がそうだったのか、ビートルズの風と、彼女の記憶がいつも「僕」の回りに吹いている様に感じた。

その後、新しく出来たガールフレンドだが、好きな人が出来た。と彼女を振ってしまった。18年後、理由は分からないが自殺していた。



実に、8作からなるこの短編集は、村上春樹さんの世界観が如実に現れているものと感じた。

哲学とも言える、村上春樹さんの言葉の使い方や内なるものの表現。

ポンコツの私には、読み解くは難しい。

250ページ程の、決して長くはないこの文庫本に一週間もかかってしまった。

以前、読んだ単行本でさえこんなにはかからなかったと思う。

同じ段落を何度も読み返してしまう。

長くなるので、後は、最後のストーリーの紹介としましょう。


他の7作とは、少し違うような気がしてならないラスト。

「私」が、普段あまり着ることのないスーツを着て出かける。

ポール・スミスのダークブルーのスーツ、淡いグレーのワイドスプレッドのシャツ、エルメネジルド・ゼニアのペイズリー柄のネクタイ。

文庫本をポケットに入れて、地下にあるバーへ。バーの様子も映像の様に浮かび上がる。お酒のビンが並ぶ後の鏡。そこに映る自分の顔。

一人称単数、全部の章が「僕」「私」で語られるこの本。

最後だけは、どうしても「私」に話しかけてきた50歳位の女性に何があったのか知りたい(笑)「私」の友達の友達だと言う。

そして、このストーリーの村上ワールドを理解出来ていない💦

里脇の視点は、私よりその女性に移ってしまった(笑)


ラストストーリー「一人称単数」を読み解くことが、出来そうにないので、ネットの解説に頼りました(笑)


『一人称単数』は、何をしても集中することができない男性が、スーツを着て見知らぬバーに行き、ミステリー小説を読んでいるときに、突然女性から酷く罵られ、バーの外に出ればそこは蛇の世界だったという話です。これは、村上春樹さんが過去に行った行為が、自分に返ってきたことに対しての自分の感情かもしれませんし、現代社会で何気なく発信した内容が誹謗中傷などによって、最悪の結末になるということへの風刺の様なものかもしれません。

この『一人称単数』の受け取り方は

人によって様々だと思います。

よく分かんないと諦めずに、どの様なことをここでは伝えたいのかと、立ち止まって考えてみれば、素敵な発見があるかもしれませんね。

私の心を読まれてしまった(笑)


【「ヤクルトスワローズ詩集」】

【謝肉祭(Carnaval)】

【品川猿の告白】

一人旅をして、群馬のひなびた温泉宿に泊まることになった。

そこで、しゃべる猿と交流を持つ。

猿は私に、名前を盗んだ。と言う告白をしてきた。

ファンタジーの作品

【一人称単数】


また、数年後、再読決定だね(笑)



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