背中が痒い。

独身時代はアパートの畳の毛羽立ったところに背中を押しつけて上下にこすっていた。

30cm定規の尖った角で掻いたりもした。

結構血が出る。

シャツや服も背中に血が染みている。

血痕→結婚。

なぜ元モデルの女と結婚したか。

それは背中を搔いてもらったり、汗疹の薬を塗ってもらうためだ。

新居の和室の畳は毛羽立っていないので、背中を押し付けるところは柱の角しかないが、それでは治まらないのだ。

妻にはガシガシと搔いてもらいたい。

しかし思惑と違った。

私が風呂からあがる頃には元モデルはもうスヤスヤと眠っている。

掻いてもくれないし、薬も塗ってくれない。

これちょっと腹立つ。

酸っぱい汁をピュッピュと吐きながら、今年できたばかりのピンクの汗疹が俄然元気である。