あの日からもう一年以上が過ぎました。
あっという間でした。
真っ青な空を背に、桜が綺麗だったことを鮮明に覚えています。
ありがとう。
この言葉を言えなかったあの日の、あたし。
*
楽しいことを考えようと思った。
今日はどうしても笑っていたかった。
ずっと笑っていた人だったから。
どんな時でも明るく強い人だった。
あと1時間。
そう告げられてから数日が経った。
あたしはまだ奇跡が起きるって思っていた。
1時間と告げられたあの日から
あたしが行くまで頑張って待っていてくれたから。
病室で泣いてばかりのあたしの手を握り返してくれた。
意識がないはずなのに、手の甲を撫でると
緩くではあったけれど確かに握り返してくれる感覚があった。
嘘じゃない。
あたしの後、握った誰もが頷いた。
神様、まだ連れていかないで。
そう何度も祈ってた。
笑ってバイバイなんて言えない ね。
ありがとうなんて綺麗にきっと言えない。
ごめんなさいって一度だけ謝らせてね。
何も言わなくていいから
最後のわがままを許してください。
あなたはきっとそれがあたしだと笑ってくれるでしょう?
最後まで甘えていたいです。
いつかあなたみたいに強くなる。
何十年掛ってもきっと諦めないから ね。
2009. 04. 06 しの