大抵、中学校ではクラスごとに得意分野というのがあって、私のクラスは合唱が得意であった。
私の世代はいわゆるベビーブーム最後の世代であったせいか、クラスは12クラスあったのだが、2年生の時に優勝し、3年生の時も優勝候補ナンバー1であった。
指揮者の依田君は、学年トップの成績で生徒会長、伴奏の岡さんは3歳の頃からピアノをやっているという素晴らしい腕前。
担任も”優勝は当たり前だ”と言わんばかりに力が入っていて、曲が決まってからコンクールまでの一ヶ月間、放課後2時間毎日練習という入れ込みようであった。
3年生時の楽曲はいまだに忘れていない。
ミスターモーニング
という歌であった。
当時の選択肢として、
”大地讃頌”
”山のいぶき”
”汽車に乗って”
などあったのだが、クラス全体が一番難しいこの歌を当然のように選択した。
一人だけ、ちょっとだけ人と脳波の波動が違う変わり者の江沢君が、
”まんが日本むかしばなし”を歌いたい。
と言い出したが速攻で却下された。
なぜか、クラスのいわゆる”ワル”も気合が入っている。
無関心なのは、私だけだったかもしれない。
だからこそ客観的にその成り行きを見て、いまだに忘れていないのかもしれない。
しかし結論を先に言うと私のクラスは優勝出来なかった。
予期せぬ事態が我々を襲ったのだ。
クラス全員がステージに上がり、指揮者の依田君も壇上に上がった。
準備は万端であった。
指揮者が、タクトを上げる。
クラス全員指揮者の方に目を向ける。
依田君のチャックが全開だった。
しかもちょろっと、ワイシャツの端が見えている。
もう歌どころの話では無かった。
笑いをこらえるのにみんな必死であった。
こうして、最後の合唱コンクールは終わりを告げた。
帰りのホームルームで、長い時間反省会が行われた。
先生は激怒している。
みんなそれぞれ、
”努力が足りなかった”
”精神的に甘かった”
と口々に言っていたが、そんな長い時間、反省なんかする必要も無いと私は思った。
思わずにはいられなかった。
原因は一つなのだから。