任天堂に「ズートピア」は作れるだろうか | 忍之閻魔帳

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ズートピア 映画 


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▼任天堂に「ズートピア」は作れるだろうか

★任天堂、映画事業に参入へ「マリオ」などアニメ化検討

任天堂はこれまで、キャラクターを使う権利を制作会社に与え、
使用料を得る形で映画づくりにかかわってきた。
君島社長は「できるだけ自分たちでやっていきたい」と述べ、
単体で成り立つビジネスにしていく方針だ。

日本だけでなく米国など世界市場を意識しており、
第1作は2~3年後の完成をめざす。
映画だけでなく、家庭向けビデオ作品を
世界各国で販売することも検討しているという。

作品の内容は明らかにしていないが、
「マリオ」や「ゼルダの伝説」の主人公「リンク」など、
世界で人気の高いゲームのキャラクターが登場する3Dアニメ映画が有力だ。


数日前に発表された任天堂の映画事業参入のニュース。
一部では『迷走』と捉えられる向きもあるが
シアトル・マリナーズの所有権の大半を数百億円で売却したことと、
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに新設される任天堂エリア、
そして今回の映画参入という一連の動きは、
よりゲームに近い事業への資本の振り分けとして非常に分かり易い。
少なくとも、長年かけて築き上げてきたコンテンツを価値を毀損しかねない
「どうぶつの森」「ファイアーエムブレム」のスマホ投入(しかもF2P方式)より
ずっと好印象である。



★スマホ版『どうぶつの森』『ファイアーエムブレム』は基本無料に。

DeNAの守安社長は、両タイトルともF2Pになるとコメント。
プレイ自体は無料ですが、追加キャラやアイテムなどの
一部を有料で販売し、収益を図る方式です。
『ファイアーエムブレム』は参戦キャラ、
『どうぶつの森』は家具やどうぶつの住人キャラといった
「コンテンツ」が豊富で、見方によっては
マネタイズの山となる可能性があります。

どうぶつの森シリーズでたぬきハウジングに勧められるままに自宅を増築、
借金を背負って魚釣りなど金策に走り回るのは
ゲーム内通貨に限っては楽しいのですが、仮にたぬきちが
リアルマネーでも支払いを求めるとすれば、少し生々しい気もします。


スマホアプリはカテゴリーで言えば「ゲーム」だが、
「娯楽を提供するもの」という枠で見れば映画やテーマパークよりむしろ遠い。
課金トラブルを多く抱えながら、まやかしのザル規定でお上を煙に巻こうとし、
自浄能力など欠片も持ち合わせない腐れ業界というイメージは根強く、
任天堂が看板シリーズを投入することに対して強い違和感がある。



「スマブラ」を映画化した任天堂版「アベンジャーズ」や
「メトロイド」シリーズの実写化などで目指す準マーベル路線と
「マリオ」や「カービィ」を使った王道の準ディスニー路線の
どちらに進んだとしてもそれなりに成功を収めそうなタイトルを持っていることが
任天堂の強みでもあるが、ディズニーのように実写もアニメもヒットさせ、
かつ世界中で愛される映画を作れるのかどうかは
任天堂のやる気とスタッフ選びにかかってきそう。
名前だけ貸したキャラクター映画であれば東宝や東映と組んだ方が賢いし、
世界市場での成功を視野に入れているなら
国内のスタジオは全て切り捨てるぐらいの覚悟を持って臨んで欲しい。




*映画「スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!」より

任天堂はもともと映画事業への色気はずっと持っていたように思う。
しかし、和田アキ子がクッパ、山瀬まみがダミ声のピーチ姫を演じ
このホリプロコンビの破壊力によってジジィ世代には伝説になっている
映画「スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!」や
50億とも言われる巨額の製作費をかけた
ハリウッド版「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」の不振から学習したのか
アニメとの相性も良かった「ポケモン」の大ヒット以降も
看板シリーズを続々とアニメ化するようなことはしなかった。

近年、「新・光神話 パルテナの鏡」「ピクミン3」「ファイアーエムブレム 覚醒」
「スターフォックス 零」等のプロモーションで映像を作成していたのは
それぞれのタイトルが持っている世界観を
どういった形で映像にするのが最良なのかを探っていたのではないだろうか。
特に「ピクミン」に関してはムービーの気合いの入れようが異質で
単独で販売していたほど。


配信中■WiU:「PIKMIN Short Movies HD [オンラインコード]」
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「ピクミン」は一昨年の東宝シネマズのマスコットキャラクターとして
活躍していたこともあり、映画事業が本格化するのであれば
第1弾は「マリオ」や「ゼルダ」といった虎の子のシリーズではなく
知名度もそこそこ高い上に女性層のウケも良く
内容的に色々とチャレンジもできる「ピクミン」が最適な気がする。
私的には第2弾は「MOTHER」、第3弾は「メトロイド」と続けるな。




発売中■Blu-ray:「トゥモローランド MovieNEX」

君島社長の言うように「できるだけ自分たちでやっていきたい」なら
目標とするのはやはりディズニー。
そのディズニーは近年さらなる進化を遂げている。
「アナと雪の女王」では「自分らしく生きよ」
「トゥモローランド」では「希望をもって明るい未来を作ろう」
最新作「ズートピア」では「可能性は無限にある、何にでもチャレンジしよう」と
単なる「家族揃って楽しめる王道の娯楽映画」を超えた
ディズニー映画という希望の種を世界中に蒔いている。



公開中の映画「ズートピア」は人種のるつぼであるアメリカを
動物世界に置き換えた、ディズニー映画史上もっともメッセージ性の強い作品。
彼らの住む世界の平和が非常に危ういバランスの上に成り立っていることを踏まえ、
肉食動物を暴走に駆り立てる危険薬物の存在や
警察内部ですら平然とまかり通る職業差別、
徒らに大衆を扇動するマスコミや権力者の思惑などなど
私達の住む世界と何ら変わらない問題を次々と発生させてゆく。

生身の人間で作った途端に生臭く説教臭い話になりそうだが、
ウサギながらに警察官を夢見た主人公ジュディと
本来は捕食者であるはずのキツネのニックがバディを組み
様々な困難に立ち向かう姿に大人ながらに胸が熱くなる。
差別問題を描いた作品に多く出演している
オクタヴィア・スペンサーがオッタートン夫人を演じ、
レバノン系マケドニア人の父と、カタルーニャ系の母を持つシャキーラが
主題歌「Try Everything」を歌っているのも
肌の色も生まれも性別も、あらゆる多様性を受け入れようという
本作のメッセージをさらに力強いものにしている。

初期のCGアニメに動物モノが多かったのは
人間の動きを精巧に再現するのが難しい故の
苦肉の策だと聞いたことがあるが、
本作は明確な狙いがあって敢えて動物に置き換え、
ナマケモノや小動物達を絶妙なアクセントに使いながら
子供は屈託なく笑えて、大人は唸らされる作品を見事に作り上げた。
ひとつの作品に7人もの脚本家を揃え
あらゆる角度からディスカッションを重ねた上に出来上がった「ズートピア」は
「アナ雪」も「ベイマックス」も遥かに超えた
2000年代ディズニーアニメの最高傑作と言えるだろう。



任天堂の映画事業が小銭稼ぎの片手間なのか
打倒ディズニー・ポストマーベルを掲げるほど本腰を入れたものなのか、
全貌が見えてくるのはまだ当分先の話だろうが
「ズートピア」の域にまで到達するのは片手間では到底無理。
やると決めたからには「さすが任天堂」と思わせるだけの
楽しい映画にしていただきたい。

1本目は何だろう。
「ピクミン」来い、「ピクミン」。
USJで花の帽子も売ればいいじゃないか。
私は喜んで買って被るぞ。




発売中■DVD:「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」

日本が誇る世界的人気キャラクター・マリオを実写化した
ハリウッド版「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」は
1993年公開から20年の時を経て2013年にDVD化。
富田耕生、辻谷耕史、穂積隆信、日高のり子、来宮良子、井上和彦、千葉繁ら
達者な声優しかいなかった頃の人気物が勢揃いした吹き替えも収録。

マリオには「ロジャー・ラビット」のボブ・ホスキンス、
ルイージには、本作の出演でハリウッドに注目されたジョン・レグイザモ。
最近でも「ハプニング」や「リンカーン弁護士」といった話題作に出演している。
そしてクッパには「イージー・ライダー」の大ヒットにより
アメリカン・ニューシネマの顔となっていた名優デニス・ホッパー。
晩年も人気ドラマ「24」のドレーゼンや「エレジー」などで活躍していたが
惜しくも2010年11月に亡くなった。
息子のヘンリー・ホッパーも役者で、当BLOGでも取り上げた
「永遠のぼくたち」では素晴らしい芝居を見せてくれている。

巨額の製作費(50億とも言われている)ばかりが先行した迷作ではあるのだが
明るく楽しいファミコンテイストを見事なまでに破壊した
ハリウッドの悪ふざけが炸裂していて、これはこれで楽しかったように記憶している。
だからと言ってお子に見せたら泣くのは確実だが。