「うつせみ」

プロローグ。

5年前一人息子を事故で喪い、その2年後、最愛の夫が重い病を患い治療も虚しく逝去。

そして私は抜け殻になった。


何故こんな事になってしまったのか私は困惑している。恐怖でざわつくロビー、私の腕の中に居る男の子は周囲とは反対にどこか冷めているような表情をしていた。

ここは私が住む家の近くにある総合病院のロビー、1人の男が刃物を手に立っている。

私は小鳥遊明莉(タカナシアカリ)この病院の近くでカフェとシェアハウスをやっている。

私が抱きしめている男の子は渋谷樹希(シブヤイツキ)くん6歳。先日から私のシェアハウスに住んでいる。男が樹希くんを人質にして母親である渋谷紫(シブヤユカリ)さんを連れて来るよう要求していた。事件を知った私は慌てて駆けつけて、この病院の職員でシェアハウスの住人の平沢愛唯(ヒラサワアイ)さんと協力して、男の隙をついて樹希くんを取り戻したのだ。私達の前には樹希くんの父親である想(ノゾム)さんが男から守るように立ちはだかる。

男は刃物を近くに居た白衣を着た青年に渡した。その青年の後ろに紫さんは隠れるように居たのだか次の瞬間、私達は信じがたい光景を目にする事になる。