「先輩大丈夫ですかね?」

車内で缶コーヒーを開けながら高山一平は呟いた。

「ん?」

助手席に座っている同僚の内倉タカシは一平の方を振り向く。

「いや、松本先輩ですよ、警視庁のお偉方の藤原さんでしたっけ?あの人に逆らって勝手に新人の玉城雪弥と行動して大丈夫なんですかね?そりゃぁ、あの藤原とかいう警視は嫌な奴ですけど…」

「心配するな、松本は松本なりに考えがあってのことだろう?俺達がやるべきことはまず犯人を逮捕することだ、そうだろう?」

内倉と松本勇輝は同期で何故か馬が合う、藤原警視に逆らってまで新人の玉城と行動を共にしている松本の事が気にならないと言えば嘘だが、今は犯人を逮捕することに全力を尽くす以外ないと思っている。そんな内倉の元に松本から携帯に連絡が入った。

「タカシか?俺だ勇輝だ、ホシの身柄を確保した、悪い迎えに来てくれないか?」

「ホシって勇輝、物証はあるのか?そうか分かったすぐそっちに向かう」

「松本先輩なんて?」

「ホシを確保したそうだ、決定的な証拠もあるってよ!高山!松本と玉城を迎えに行くぞ!」

「はい!」

やっぱり松本の読みは間違っていなかった、しかし問題はあの藤原警視がどう出てくるかだ、場合によっては…内倉はある決心をしていた。

被疑者を連行して自白するまですんなりと進んだ。

「これはこれは所轄の皆さんお手柄だったようですね」

皮肉交じりに冷ややかな目で玉城と松本を睨み近付いてきたのは藤原警視。ピシッとスーツを決めいかにもエリートという雰囲気を醸し出しているのが鼻につくと内心高山刑事は思っていた。

「しかし規律違反はいけませんね、しかるべく処分を受けてもらわないといけないと思うんですがね?特に玉城刑事、君はね!」

ゾクッとする程の冷ややかな目で藤原警視は玉城刑事を見ている。

「やなこった」

松本がボソッと呟いた。

「?!」

「今なんて言いましたか?松本刑事?」

「やなこったって言ったんだよ悪いか?」

「この私に向かってよくそんな口が訊けましたね!松本刑事が庇う程この玉城刑事は価値のある人間だと思いますか?この玉城刑事の母親は人殺しなんですよ!彼に刑事になる資格なんて有りはしないってこと知っていますか?!」

「黙れ!」

「!!」

「その言葉そのままお前にそっくり返してやるよ!」

そう言うと松本は藤原に殴りかかった!

つづく。