【守秘義務】個人情報保護法違反や宅建業法違反 FN.50 | 住まいる@空き家管理(東大阪の不動産店)のブログ

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弁護士の弁護士法に基づく照会に応じた情報提供について、個人情報保護法違反や宅建業法の守秘義務違反には当たらないとした事例

賃貸借の媒介と賃貸住宅管理業務を担当する宅建業者が、依頼者の同意を得ずに弁護士の弁護士法に基づく照会に応じて賃貸借契約書の写し等を提供する方法により報告したことが、個人情報保護法違反や宅建業法違反であるとして、債務不履行又は不法行為に基づき賠償請求された事案において、本件照会には、これに応ずべき必要性と合理性が認められるから、本件報告に違法性はないとした事例(東京地裁 平成22年8月10日 ウエストロー・ジャパン)


【1 事案の概要】
原告Xは、自己所有のマンションの一室(以下「本件建物」という)を、平成18年4月頃、宅建業者Yの媒介で、Aに賃貸し、Yとの間で賃貸住宅業務委託契約を締結した。

Xは、平成18年2月にBと婚姻したが、その後別居に至り、離婚調停を経て、平成21年8月頃には、家庭裁判所において、XとBを当事者とする婚姻費用分担の調停事件が係属していた。

本件調停事件においてBの代理人弁護士Cは、平成21年8月21日に、Cが所属する某弁護士会に対し、XとYの間の管理委託契約の存在やXを賃貸人又はYを賃貸代理人とする賃貸借契約の存在と、それら契約書の写しの交付について、Yに報告を求めるよう、弁護士法23条の2に基づく申し出をした。

某弁護士会は、平成21年8月24日頃、Yに対し照会を行い、Yは、本件賃貸借契約や本件賃貸住宅業務委託契約等の契約書の写し(以下「本件各契約書」という)を送付する方法により、某弁護士会に報告した(以下「本件報告」という)。

これについて、Xは、本件照会の理由が、本件建物からの現在及び過去の賃貸収入の額に尽きることが明白であるのにもかかわらず、Yは、Xの住所・氏名・印影及び取引銀行口座等の記載された本件各契約書を送付することにより、Xに関する個人情報、XとAとの取引情報を、Xに無断で第三者に提供して開示した。個人情報取扱業者であるYの行った本件報告は、本人の同意なく個人情報を第三者に提供することを禁止する個人情報保護法23条に違反し違法である。

また、本件報告は、Yは宅建業者であり、その使用人である某支店長は宅地建物取引主任者であり、それぞれ宅建業法45条及び75条の2に基づき、正当な理由なく、業務上知り得た秘密を漏らしてはならないとする守秘義務にも違反する違法なものである。

以上から、Xは、Yの違法な報告により、Xの離婚紛争の存在等が本調停等で不特定多数の第三者に公開・開示されること等により大きな精神的苦痛を被ったとして、Yに対し慰謝料と弁護士費用からなる72万5000円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めて提訴した。


【2 判決の要旨】
裁判所は、次のとおり判示して、Xの請求を棄却した。

Yの行った本件報告が違法であるか否かについて、弁護士法23条の2に基づく本件照会に対し回答することが、宅建業法45条の「正当な理由」、及び個人情報保護法23条1項1号の「法令に基づく場合」に該当するか否かの観点から検討することとする。

弁護士法23条の2が規定する照会制度(以下「23条照会」という)は、弁護士が基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とすること(弁護士法1条1項)に鑑み、弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査及び証拠の発見収集を容易にし、当該事件の適正な解決に資することを目的として設けられたものであり、その適正な運用を確保する趣旨から、照会する権限を個々の弁護士ではなく弁護士会に付与し、個々の弁護士の申出が23条照会の制度趣旨に照らして適当か否かについて弁護士会が判断した上で照会を行うものと解される。

23条照会を受けた公私の団体等は、当該照会をしてきた弁護士会に報告すべき義務を負うと解されるが、当該報告義務も、その性質上絶対無制約のものと解すべきではないから、同照会に対する報告が、上記「正当な理由」あるいは「法令に基づく場合」に該当し、違法性を欠くと認められるためには、当該照会について、照会制度の趣旨及び目的に即した必要性と合理性が認められることを要すると解するべきである。

そこで検討するに、XとBとの間の本件調停事件において、本件建物からXが賃料収入を得ていたか否かは、重要な争点の一つであったことは明らかである。

また、Xが本件建物から賃料収入はないと説明していた状況において、B代理人弁護士CがYに対し本照会の制度を利用して報告を受ける以外には適切な方法はないと思われる。

そして、夫婦間の婚姻費用の分担を定める資料とするためには、ある程度詳細に把握することも合理性を否定できず、管理委託契約や賃貸借契約の報告に併せて、本件各契約書の写しを求めたことには合理性があると認められる。以上によれば、本件照会には、これを行うべき必要性と合理性が認められるから、本件各契約書の写しを送付する方法によりYが行った本件報告は違法性を欠くというべきである。

Xは、照会に回答する側においては、個人のプライバシー侵害の危険並びに業務上及び契約上負担する守秘義務との対立につき、慎重な検討を経た上で、本件照会の目的にかなう、ぎりぎりの情報開示にとどめるべきであったから、本件各契約書を送付する方法により行われた本件報告は違法であると主張する。

しかしながら、契約書の写しを送付した本件報告には合理性が認められるから、照会事項に従った方法により行われた本件報告が違法であるということはできない。Xの主張は、23条照会を受けた者に対し、過重な負担を課すものであり採用できない。


【3 まとめ】
本事案では、弁護士法に基づく照会に応じた報告は、違法性を欠くとの判断が示されたものである。それ以外にも、宅建業者や賃貸管理業者は税務署や警察署等からの照会を受けることもあるであろう。

その際には、法令や過去の類似の判例の確認や、照会者にその根拠を確認すること等、慎重な対応が必要であろう。本事案は、宅建業法45条・75条の2の守秘義務と、個人情報保護法23条の本人の同意なく個人情報を第三者に提供することの禁止に関する判断を示した判例として、実務上参考になるものと思われる。


出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 HP


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