短歌私言
短歌私言
『瑞光』第1巻第6号、昭和6(1931)年11月1日発行
天ぷらを喰ふ時は天ぷらだけがいゝ。今の短歌は一つの歌に字句を盛り込み過ぎ
ようとする故に統一がない。感じが鈍る、うま味が減る。此弊は寧ろ大家に多い。も
一つは活字に囚はれ過ぎる。活字の短歌だ。詠むのでなくて読むのだ。余りにセヽ
コマシイ窮屈な例へば四畳半へギツシリ器物を飾つたやうな。器物は急所だけにし
て外は何もない方が床しさがある。
も一つはリズムが流れて居ない。角ばりすぎて円みがない。嶮しい路だ、重い圧迫
感だ、饒舌すぎる卑俗だ。特にアラヽギ派に多い。
之れらは悉(みな)一種の邪道ではなからうか。