月の美しい夜。人の心が浮かれるように、魔の住人の心も躍る。
そんな時こそ、彼らの仕事時。
Night Knights First Night:魔王襲来
セクハラがどうとか騒がれているこの時代に、これは無いだろうと薫(カオル)は思った。
ヒラヒラでフリフリでやたらと丈の短い戦闘着。性に合わない。っていうか学ランのほうがマシ。
「まぁ、そんな文句ばっかり言っとっても仕方あらへん。」
思ったことが声に出てしまい、隣の圭希(タマキ)は少しびっくりしたようだ。
しかし、そんなことに動揺しているわけにもいかない。今日こそ祐司(ユウジ)に勝たなければ。
「薫。」
圭希の呼びかけで我に返る。目の前には馬のようなエグい生き物。・・・魔の住人だ。
一体でも多く。一体でも多く、祐司より多く倒したい。・・・倒すッ!
「ウチが行く!」
何か叫んでいる圭希の声を頭から追い出し、抜いた大剣を振り上げる。
薫は男子並みに速く走れるし、男子並みに力もある。が、彼女自身、少し自信をなくしてしまった。
だってその標的は薫の大剣を濡らすことなく息絶えていたから。
「・・・・・まだやめてなかったのかよ、露出女。」
標的であった住人の脇に立って心底どうでも良さそうな口調で祐司は言う。
一方の薫といえばキッと彼を睨んで大剣を地面に突き刺した。
「黙れ!しとうてこんな格好しとるんやないわッ!!」
フンと笑って祐司は背を向けた。
「ちょ、待てや!」
大剣を持ち直して祐司へ走る薫を圭希は必死で止める。
「阿呆!死ね!」
更に、顔を歪めて放送禁止ワードまで大声で言ってしまう彼女に同情はするが、このまま自分がこの手を離してしまったら、仲間同士の殺し合いになってしまうのではないかという一抹の不安の元、圭希は仕方なく目線下の白い首筋に手刀を入れる。
「あうッ...」
ガクリと膝をついた薫に視線を合わせるようにして圭希はしゃがんだ。
「落ち着けや。祐司は確かにムカつくけど、いちいち間に受けとっても仕方あらへんで。」
「分かっとるんやけど...。」
はぁっと魂の抜けそうなため息をつき、薫は立ち上がった。
「スマンなぁ、いっつも嫌な役ばっかりやらせてもうて。」
「別にえぇし。昼間は俺が迷惑かけとるしな。」
基本的に薫は冷静で賢い。ただ祐司に対してのみはその逆。喰ってかからなければ気が済まないのだ。
圭希は薫の肩をかなり強めに叩いた。
「痛ッ!」
不満そうに見上げてくる薫に圭希は諭すように言う。
「ええか?祐司を見返したいにゃったら、あいつよりぎょうさん倒せばええねん。単純なこっちゃな。」
「・・・せやな。」
素直に頷いた薫の頭をワシワシとなでる。薫は背が高く大人びているからこういったことをされる機会は少ないし、されることを嫌うが、圭希だけは特別だ。
しかし、そんな和やかな雰囲気もそう長くは続かなかった。
圭希がピタリと手を止め、体を強張らせたのだ。
「・・・圭希?」
疑問形にはしたものの、薫は知っていた。感知能力が仲間一鋭い圭希の動揺が頭に載せられた手から伝わってくる。
“メッチャ強いのがくる”
幼馴染の薫でさえ、こんなに震える圭希は見たことが無かった。 ・・・でも、
「行くで、圭希!」
祐司に勝つため、そして大切な人を守るため、戦わなければならない。