今日、久々に運転した。


いつも運転禁止とか言って


運転させてくれないくせに、


車で駅に行って、


その帰り道を運転して来た。


約、半年ぶりの運転、


さすがに半世紀近く


運転してたから、


やはり上手いもんだ。


車から降りる時が難儀だ。


キズ付けない様に


車を触りながら家の壁まで


辿り着いてホッとした。


やはり来年の免許書き換えは


やっておくか。



春の終わりだった。

 

駅へ向かう人の

 

流れの中で、

 

彼女は一人だけ、

 

時間が

 

止まったように立っていた。

 

風に揺れる長い髪。

 

片手には、

 

白い小さな花。

 

そして、

 

何度も

 

腕時計を見ている。

 

「遅いな……」

 

そう呟いた直後、

 

「ごめん!」

 

息を切らした青年が、

 

彼女の前に現れた。

 

「また遅刻」

 

「いや、電車が……」

 

「それ、昨日も聞いた」

 

彼女は怒った

 

ふりをしながら笑った。

 

青年も笑った。

 

それが、

 

二人の出会いだった。

 

名前は、

 

悠斗と美咲。

 

二十歳と十九歳。

 

付き合い始めた

 

ばかりの二人には、

 

まだ知らないことが

 

たくさんあった。

 

好きな映画。

 

好きな音楽。

 

嫌いな食べ物。

 

子どもの頃の思い出。

 

将来住みたい場所。

 

そんなことを、

 

一つずつ知って

 

いくのが楽しかった。

 

休みの日には、

 

意味もなく電車に乗った。

 

知らない駅で降りて、

 

知らない商店街を歩いた。

 

美味しい店を見つけると、

 

「今度また来ようね」

 

と約束した。

 

夕暮れの公園で

 

ベンチに座りながら、

 

二人で何時間も

 

話したこともあった。

 

「ねえ、悠斗」

 

「ん?」

 

「私たち、何年くらい一緒にいるかな?」

 

「何年って?」

 

「十年とか、二十年とか」

 

美咲は笑った。

 

「おじいちゃん、

  おばあちゃんに

   なっても一緒にいられるかな」

 

悠斗は少し

 

照れながら答えた。

 

「いるんじゃない?」

 

「ほんと?」

 

「たぶん」

 

「たぶんって何よ」

 

美咲が頬を膨らませる。

 

悠斗は笑って、

 

「じゃあ、約束する」

 

と言った。

 

「ずっと一緒にいる」

 

美咲は

 

嬉しそうに笑った。

 

その時の二人は、

 

人生がそんなに

 

簡単には

 

終わらないと思っていた。

 

明日もある。

 

来週もある。

 

来年もある。

 

だから、

 

会えることが

 

当たり前だった。


付き合って三年目。

 

二人は二十三歳と

 

二十二歳になっていた。

 

悠斗は仕事を始め、

 

美咲も社会人になった。

 

学生の頃ほど

 

会えなくなった。

 

それでも、

 

週末になると

 

必ずどちらかが連絡をした。

 

「今日、会える?」

 

「会えるよ」

 

「じゃあ、いつもの場所ね」

 

それだけで幸せだった。

 

ある日の夜。

 

二人は海辺を歩いていた。

 

冬の海は寒かった。

 

美咲は両手を

 

ポケットに入れながら言った。

 

「寒いね」

 

「だから来るなって言ったのに」

 

「来たかったんだもん」

 

「風邪ひくぞ」

 

「その時は看病して」

 

「はいはい」

 

そんな他愛のない

 

会話をしながら歩いた。

 

ふと美咲が立ち止まった。

 

「ねえ、悠斗」

 

「ん?」

 

「私、今すごく幸せ」

 

悠斗は笑った。

 

「急にどうした?」

 

「なんとなく」

 

「変なの」

 

「いいじゃん」

 

美咲は海を見つめた。

 

「こういう普通の日が、

      ずっと続けば

       いいなって思っただけ」

 

悠斗は何も言わず、

 

美咲の手を握った。

 

冷たくなった指を、

 

両手で包んだ。

 

「続くよ」

 

そう言った。

 

「きっと、ずっと」

 

美咲は、

 

「うん」

 

と答えた。

 

それが最後の

 

約束になるなんて、

 

二人とも知らなかった。


数週間後。

 

美咲は突然、

 

帰らぬ人になった。

 

病気だった。

 

それまで普通に笑っていた。

 

普通に歩いていた。

 

普通に未来の

 

話をしていた。

 

だから、

 

悠斗には現実が

 

理解できなかった。

 

病院の廊下で、

 

医師から

 

告げられた言葉も。

 

静かになった病室も。

 

誰かが泣いている声も。

 

全部、

 

遠い世界の

 

出来事のようだった。

 

「嘘だろ……」

 

それしか言えなかった。

 

三年間。

 

たった三年間だった。

 

けれど悠斗にとっては、

 

人生の中で一番濃い

 

三年間だった。


美咲がいなくなってから、

 

悠斗は一人で

 

歩くことが増えた。

 

二人で行った場所を、

 

もう一度訪れた。

 

最初に出会った駅。

 

初めて一緒に

 

入った喫茶店。

 

何度も歩いた商店街。

 

夕暮れの公園。

 

冬の海。

 

どこへ行っても、

 

美咲がいた。

 

ベンチを見ると、

 

「ここ、座ろうよ」

 

と言う声が

 

聞こえる気がした。

 

喫茶店に入れば、

 

「また同じの頼むの?」

 

と笑う声が

 

聞こえる気がした。

 

でも、

 

振り返っても

 

誰もいない。

 

そのたびに

 

胸が痛くなった。

 

ある日、

 

悠斗は二人がよく

 

座っていた

 

公園のベンチに、

 

一人で座った。

 

夕日が沈みかけていた。

 

隣には誰もいない。

 

それが、

 

どうしようもなく寂しかった。

 

「美咲……」

 

名前を呼んだ。

 

当然、

 

返事はない。

 

「俺さ……」

 

悠斗は空を見上げた。

 

「まだ、約束守れてないよ」

 

ずっと一緒にいる。

 

そう言った。

 

でも、

 

ずっと一緒にいること

 

なんてできなかった。

 

そのことが悔しかった。

 

悲しかった。

 

そして、

 

申し訳なかった。


それから一年。

 

悠斗は、

 

以前より少しだけ

 

笑えるようになった。

 

悲しみが

 

消えたわけではない。

 

忘れたわけでもない。

 

ただ、

 

悲しいだけの

 

思い出ではなくなってきた。

 

ある春の日。

 

悠斗は、

 

二人が初めて

 

出会った駅へ向かった。

 

駅前には、

 

あの日と同じように

 

人が行き交っていた。

 

ふと、

 

花屋の前で足を止める。

 

白い花が並んでいた。

 

悠斗は、

 

その中から一輪を買った。

 

そして、

 

駅前の小さな

 

公園へ向かった。

 

ベンチに座り、

 

花を膝の上に置く。

 

「美咲」

 

久しぶりに

 

名前を呼んだ。

 

「俺、少しだけ分かった気がする」

 

風が吹いた。

 

花びらが小さく揺れた。

 

「ずっと一緒にいるっていうのは……」

 

悠斗は少し笑った。

 

「隣にいることだけじゃないんだな」

 

一緒に見た景色。

 

一緒に食べたもの。

 

くだらないことで笑った夜。

 

喧嘩したこと。

 

仲直りしたこと。

 

手をつないだこと。

 

未来を語ったこと。

 

その全部が、

 

自分の中に残っている。

 

だから、

 

美咲との三年間は

 

終わったのではなく、

 

自分の人生の中へ

 

溶け込んだのだと思った。

 

「俺、これからも生きるよ」

 

悠斗は花を見つめた。

 

「美咲が見たかった景色も、俺が見ておく」

 

「美咲が行きたかった場所にも、行ってみる」

 

「そして、いつか俺がそっちへ行った時に……」

 

少しだけ涙をこぼして、

 

「いっぱい話そう」

 

そう言った。


それから毎年、

 

春になると

 

悠斗は同じ場所へ行った。

 

白い花を一輪だけ持って。

 

誰かに見せるためではない。

 

忘れないためでもない。

 

ただ、

 

「今年も来たよ」

 

と伝えるために。

 

十年が過ぎても。

 

二十年が過ぎても。

 

その習慣だけは

 

変わらなかった。

 

悠斗はその後、

 

結婚した。

 

子どもも生まれた。

 

家族と笑う日も増えた。

 

幸せだった。

 

それでも春になると、

 

一人であの公園へ行った。

 

それは今の家族を

 

愛していないからではない。

 

むしろ逆だった。

 

美咲と過ごした

 

三年間が教えてくれた。

 

人を愛することの大切さを。

 

一緒にいられることが、

 

決して当たり

 

前ではないことを。

 

だから悠斗は、

 

今そばにいる人を

 

大切にしようと思えた。

 

ある春の日。

 

年老いた悠斗は、

 

いつものベンチに座っていた。

 

白い花を一輪、

 

膝の上に置く。

 

空を見上げる。

 

「美咲」

 

もう、

 

涙は出なかった。

 

ただ、

 

少し笑った。

 

「俺、ちゃんと幸せになったよ」

 

そして、

 

静かに続けた。

 

「でもね……」

 

春風が吹いた。

 

「君と過ごした三年間も、俺の幸せだった」

 

悠斗は花をベンチの隣に置いた。

 

そこは、

 

かつて美咲が

 

座っていた場所だった。

 

誰もいない。

 

けれど、

 

悠斗には分かっていた。

 

人生の中には、

 

一緒にいられた

 

時間の長さでは

 

測れない愛がある。

 

三年しか一緒に

 

いられなかった二人。

 

けれど、

 

その三年間は、

 

残された一人の人生を、

 

その後ずっと照らし続けた。

 

夕暮れの公園を、

 

悠斗はゆっくり歩き出した。

 

もう振り返らなかった。

 

悲しみを捨てたからではない。

 

大切な人との思い出を

 

胸に抱いたまま、

 

これからも生きていく。

 

それが、

 

あの日交わした約束の、

 

もう一つの形だと

 

知ったからだった。

 

 

少し整理すると、

 

 2つの問題 があるように思います。

 

1つは、

 

障害や介護の申請で

 

「大変そうに見せなければ認めてもらえない」

 

という現実。

 

もう1つは、

 

受けられるはずの

 

制度があっても、

 

自分で申請しなければ

 

受け取れない仕組みです。

 

例えば、

 

高額療養費についても、

 

加入している健康保険や

 

状況によっては自動支給になる

 

ケースもありますが、

 

必ずしもすべてが

 

完全自動という

 

わけではありません。

 

マイナ保険証を使っていても、

 

制度によっては

 

別途手続きが

 

必要なものがあります。

 

そして一番問題なのは、

「制度を知らなかった人ほど損をする」

ということだと思います。

 

本当に困っている人ほど、

 

病気や障害、

 

介護や子育てなどで

 

毎日精一杯です。

 

役所のホームページを調べて、

 

必要書類を集めて、

 

窓口へ行って、

 

申請書を書いて……。

 

そういうこと

 

自体が大きな

 

負担になる人もいます。

 

それなのに、

 

「申請しなかったから、受け取れません」

 

で終わってしまう。

 

もちろん、

 

不正受給を防ぐための

 

確認や審査は必要です。

 

でも、

 

マイナンバーや

 

医療情報などで、

 

行政側がすでに

 

把握できる情報まで、

 

何度も本人に

 

申告させる必要があるのか。

 

「あなたはこの制度の対象になる可能性があります」

 

「この給付を受けられるかもしれません」

 

と通知するだけでも、

 

救われる人はいるはずです。

 

特に、

 

障害年金や各種の

 

障害者制度でも、

 

「知らなかったから申請しなかった」

 

というだけで、

 

本来受けられたかもしれない

 

支援につながらない人

 

はいると思います。

 

制度があることと、

 

その制度を実際に

 

利用できることは、

 

必ずしも

 

同じではありません。

 

どんなに立派な

 

制度を作っても、

 

その存在を

 

知らなければ使えない。

 

申請する

 

余裕がなければ

 

届かない。

 

手続きが

 

複雑すぎれば、

 

途中で諦めてしまう。

 

それでは、

 

本当に支援が

 

必要な人ほど

 

取り残されてしまいます。

そして、

 

最初の表題の話に戻りますが、

 

「きれいな服を着て、

  化粧をして行ったら、

   本当に困っているように

     見てもらえないのではないか」

 

と心配しなければ

 

ならないこと自体が、

 

おかしいのだと思います。

 

身なりを整えていることと、

 

障害や困難がないことは、

 

まったく別の話です。

 

人は外出するとき、

 

誰だって少しでも

 

きちんとした格好をします。

 

むしろ役所へ行くからこそ、

 

失礼がないように

 

服装を整える人もいるでしょう。

 

それを見て、

 

「この人は元気そうだ」

 

「きれいな格好をしているから大丈夫そうだ」

 

と判断されてしまったら、

 

本人がどれだけ家で

 

苦労しているのかは分かりません。

 

本当に見るべきなのは、

 

その人が役所の窓口でどんな

 

格好をしているかではなく、

 

普段どんな生活を送っているのか。

 

そこだと思います。

 

制度は

 

「申請できる人」

 

のためだけにあるのではなく、

 

本当に困っている

 

人に届くためにある。

 

そして、

 

身なりや、

 

その日のたった

 

数十分の様子だけではなく、

 

その人の365日の

 

生活を見て判断してほしい。

 

私は、

 

そんな仕組みになって

 

ほしいと思います。