すっごく行きたかった高校なのに…


からっぽの心のまま入学した
説明会も、入学式も全く記憶がない
誰が一緒に来てくれたんだろ?
叔母かな?父かな?


「お母さん、生きてたら喜ぶね」
って、また誰かが言ってる

いやだ…
そんなこと言っても、全然 温まらない
そんなこと言われるたびに、心が冷えていく

機械のように毎日動く
起きて
朝ごはん作って
父と弟たちと自分の弁当作って
…学校に行く

…学校、どんなだったっけ?
となりの人、どんな子だったっけ?
気がつくと、学校を出てまた電車に乗ってた

いつもの店で
「この魚、5匹ください」
もう、数を間違わなくなった
母が死んだことに慣れた

夕食後、何してたっけ?
また、何にも思い出せない
きっと、何もしてない
机には向かってた
でも、何もしてない

からっぽだった心は、真っ暗で…真っ黒で…
時折、意味もなく怒りでいっぱいになる
吐き出せないから
真っ黒い怒りを心が吸収するまで放っておく

なんで怒ってたんだろ?
なにに怒ってたんだろ?

いやだ…
なんか、もう
いやだ…

真っ黒い怒りを心が吸収するまで
シャーペンで消しゴムを突き刺した
高校生になって間もないのに
もう消しゴムを何個も買い換えてた

すっごく行きたかった高校なのに
もう、だんだん行きたくなくなってきた