
-大人になるということが一体どういうことかわからないまま年を重ねる。僕は23歳になった。このブログは僕が20歳になったばかりの頃に書き始めた。20歳の頃の自分は、今思い出したらひどい出来だな、と頭を抱えてしまうような代物だったのだけれど、得てして成長というのはそういうものなのかもしれない。今の僕は(あくまでだいぶ昔と比べて、という意味だけれど)、随分無難になったというか、きっと三年後振り返ってみても、そんなに残念なことにはなってないと思う。そのかわり、これといった特徴もなくて、まずいところもなければ、美味しいところもない、食べ物でいえばちくわみたいなものになった。
-東京に住んで、延べ三年強、池袋で過ごしてきたわけなので、だいぶこの街にも慣れてきた。東口にはほとんどといって、行かないので、僕が慣れているのは、厳密には池袋西口、ということになる。
-池袋における東口と西口は恐ろしいくらい違う。もしかしたらどの街も大体そうなのかもしれないし、都市計画的にそうすることがセオリーなのかもしれないけど、それでも、東口から西口に移るときに、一歩踏み入れたときのあの西口の雰囲気というのは、もうある種趣深さを感じる。大体、池袋東口というのは、人が多すぎて、正直とことんうんざりするというのも、あまり行かない理由の一つではあるのだけれど、なんだかそこまで面白みがない。食べ物屋さんも所狭しとごちゃごちゃ乱立していて、さらにいえば、ビックカメラは三店舗もある。東口を出ると、ドンキホーテが僕たちを待ち構えているのだけれど、その時点で東口の佇まいはお察しである。ドンキホーテが東口の縮図だ。ドンキホーテに行く人はそのまま東口の各店に行くし、東口で遊んだ人は帰りに必ずドンキホーテに寄る。そして、みんなおきまりのようにドルチェアンドガッバーナのベルトを記念に買って帰る。そんな街だ。
-対して西口は、随分と落ち着いている。ビルも東口に比べたら、半分くらいの高さのビルがほとんだ。おまけに街の作りもわかりやすい。奥に行けば行くほど怪しくなっていくのだ。ちなみにビックカメラは1店舗しかない。割と大きな公園、というか広場が二箇所あって、いろんな人がそこでお酒を飲んだり、ギターを弾いたり、恋人の肩に体を預けてみたり、口をあんぐり開けたまま寝ていたりする。人の数もそこまで多くない。東口と比べれば、大きな差だ。盤上に駒を全て埋めたときの囲碁とオセロくらい違う。
-ただ、怪しいのはやはり西口だったりする。それもよくわからない雑居ビルのうちの一室だとか。現に、少し前にそんなとある雑居ビルのとある一室で脱法ハーブを販売していて、その購入者が西口で車を暴走させて何人も轢いてしまったのだから恐ろしい。実のところ、僕も留学を終えて、だいぶ勇気が出てきたのか、興味本位で、そういった雑居ビルに特に用も無く入ってみたことがある。中は、団地の廊下みたいな感じで、各階に6部屋くらいが収められていて、ピンポンを押さないと室内に入れないタイプであった。大体、看板も付いていない。そんなところから急に、男性と女性がドアを開けて出てきて、女性の方が「ありがとうね、またね」なんて手を振って見送るものだから、本当に西口のとある雑居ビルのとある一室で何が起こっているのかわかったものじゃない。
-ホテルからカップルがたまたま出てきて、その出口ですぐ別れるというのは典型的なホテヘルの類だったのだと思う。何度もそういう光景に出くわしてきて、この前、本当に目の前でカップルがホテルから出てきて、その場で別れたのだが、僕は女性がその後行く道とまったく同じ方向に進んだ。もちろん、その女性についていこうなんて気はさらさら無く、ただ単純にスタンプカード制を採用している吉野家に行こうとしていただけなのである。それなのに、女性が僕の方をちらちらと振り返りながら、歩みを速めたりして、しまいに僕の方を見ながら携帯電話を取り出す始末だったので、勘弁してくれと思いながら、まったく違う方向に行かざるを得なかった。結局その流れで、僕は塩水を飲んでいるかのような恐ろしくしょっぱいラーメンを食べることになってしまって、僕は怒った。あの女性が白菜みたいな顔をしていたのを思い出して、僕は色々なことにいたたまれなくなった。
-あまりに西口に慣れすぎて、平気で深夜三時の西口を歩いたりすることもある。本当に、なんだか暇だな、というくらいの感覚で西口に行ってしまうのだ。何もしなくても面白い場所なので。そうすると、キャッチがうるさくて困る。キャッチのお兄さんたちには、たまに本当に恐さを感じることもある。ガストとパチンコ屋の間の路地もまた、軽くピンク街なのだけれど、深夜二時くらいにそこを通りがかるだけで、気づいたら5人くらいに囲まれて足止めされたこともある。僕は色々と健康的なことを言ってその場をやり過ごすのだけれど、「もっと元気になれるよ」とかよくわからないことを言って、後ろからついてくるから困る。それでもいずれ終わりはくるから、池袋といえど日本は安全だな、と思う。大体10時くらいまでは居酒屋のキャッチばかりなのだけれど、それを過ぎるとキャバクラや風俗のキャッチに衣替えする。「お兄さん、どうですか?キャバクラは」といった倒置法を用いたものから、「おっぱい、ヌキ、なんでもありだよ」とストレートなものまであって、色々と聞くのも楽しいのだが、ついてこられるのは結構不快なものである。
-カメラの接客をしてても思うのだけれど、そういうキャッチって引っかかるものかな、と思う。カメラを買う人は、買いに来てるから買うのであって、買わない人を接客しても買わないのだ。僕にあたったお客さんでカメラを買った人はもともとカメラを買いに来ていたからであって、僕の接客スキルとは関係ない。それと同じで、風俗に行きたい人はそんなキャッチに引っかかって行ってしまうものなのかなと思う。ソープだけで、看板を立てている店は4店くらい西口にあるわけだし。もしかしたら、表立って経営している以外にも何店かあるのかもしれない。そういうところにはキャッチを利用しないといけないのだろうか。だとしたら、ちょっとした興味もあるわけだけれど、それはそれでかなり怖そうだ。
-大学生が居酒屋から出てきて集団でがやがやしているところに、ソープからサラリーマンが出てきて、その集団の真ん中をかっ切っていく様はなかなかシュールだ。人間観察をしているだけでも西口はだいぶ楽しい。夜限定ではあるけれどね。昼なんて何も西口は楽しくない。それが、街、ということなのだろうけれど。