(注・読み物として成立させるために僕はこの記事に限りとことん脚色をバカみたいにしてあります)




僕はすべてを恐れずに書くつもりだ。

それはまるで僕と世間との間にある有刺鉄線付きの壁を取り壊すかのように。

いま、僕はアイドルについて語るのだ。



僕は恋をした。

それは丘の向こうの遠くから、麦わら帽子をのせて吹く、夏の風のような恋だった。

その麦わら帽子の持ち主の名は、みさこといった。


彼女と出会ったのは、2010年のテレビの中であった。

NHKの当時はまだ深夜番組であった「ミュージックジャパン」という番組に彼女は映っていた。

彼女は神聖かまってちゃんというバンドでドラムを担当していた。


当時の僕は女性でドラムはめずらしいな、と思っていたくらいだったが、

なによりまず、彼女よりも、その音楽に魅了されてしまって、YouTubeで彼らの音楽を何度も聞くようになったのだ。そのときの僕の状態はまさしく「ロックンロールは鳴りやまないっ」だったわけなのである。


彼らは、ニコ生などを通して多くのネット配信を行っていた。

それらの過去の動画が、YouTubeに落とされていたので、僕は、神聖かまってちゃんに対する興味関心の枝をどんどんと伸ばしていくように、そういった音楽に関係のない動画もみていくようになった。



そこで僕は彼女の魅力にとりつかれたのだ。

彼女はまるで、僕の理想の女性を具現化したかのような存在だった。

見た目は完ぺきだった。

しかし、驚くべきことに性格も完ぺきそのものであったのだ。


僕は、ネガティブな人間は嫌いだ。

何を話しても、暗い内容しか語れない人間。他人の悪口や、評価、うわさなどで盛り上がろうとする人間は大嫌いだ。

だけど、ポジティブな人間が、たまにおちこんだときに見せる暗い部分は僕は大好きなのであった。

ポジティブな人間は、表面だけをすくってみると、非の打ちどころのない人間に思える。

そんな人間が、ふとしたときに暗い部分をみせると、それはある種僕は、その人に認められたのだ、と思えるような気がするのだ。

暗い部分を見せてもいい人間に選ばれたのだ、というような。



彼女はとんでもなく空気をよまないキャラだ。

とことん変な不思議なキャラだ。急に奇声を発することなどよくある。

それでも、実際は違う。彼女は空気を読んで、空気を読まないのだ。

彼女の配信は、アホなゆるゆるトークで一時間終えることもあれば、とことん真剣な配信のときもある。

僕はそんな彼女のギャップが好きだ。



そんな彼女が、2012年頃から「バンドじゃないもん!」というグループを結成して、活動していくことになる。

みさこはそこでも変わらずにドラムを叩くが、グループ名通り、決してバンドではない。

アイドルになった。


それまで、ライブに行っても、の子というカリスマギターボーカルの陰に隠れていた彼女は、アイドルへとジョブチェンジすることによって、活動の幅がとてつもなく広がっていった。

それこそ、まさに、握手会、サイン会、チェキ、などといったアイドル定番の活動だ。


池袋ではしょっちゅうそういった類の活動が行われていた、らしい。

しかし、僕は行かなかった。


なにか、気が進まなかったのだ。

それまで、ネットでみてきていた彼女の姿を実際にみることは、おそらくうれしいことなのだろうが、

なぜか気が進まない。

僕はそういったところでとことん保守的になってしまうのだ。

いままで、十分楽しめてきたのだから、それでいいじゃないか、といった。



あとはきっかけだけだった。

そういった意味で、今日のきっかけは完ぺきだった。

たまたま池袋を歩いているときに、ツイッターで20分後に池袋でイベントがあることを知ったのだ。

これだけのきっかけが用意されていて、家に帰るわけにもいかず、半ば、しょうがないか、といったテンションでかっこつけて僕はイベント会場に向かった。



気づいたら僕は2000円を支払っていた。

お金を出したときの記憶はあまり定かではない。とりあえず、僕の財布からは2000円が減っているはずだ。

しかし、目の前には、あこがれのみさこ!!と、その他バンもん!のメンバー。(実は名前を知らない)


神聖かまってちゃんのライブのときの、僕と彼女の距離は10メートルも離れていたものが、今日の僕とみさこの距離は1メートルにも満たなかった。

僕は、これほど近い距離でイベントをするのかと、結構驚いてしまっていた。


バンもん!のメンバーが自己紹介をしていく。

お客さんがのりのりで、コールに対してレスポンスをする。

僕は、彼女のコールに対するお約束のレスポンスをなにひとつしらない。

なんか、みんな右手をくるくる回していたが、僕はそれに対応できず、棒立ちだった。


フリートークみたいなことをしているとき、みさこと僕はおそらく一度も目が合わなかったと思う。

しかし、いよいよツーショット会の時間になった。僕は、もともといた位置も助かって、なんと先頭で並ぶことができた。

係りの人に、希望の方は、と聞かれ、みさこさん、と答えた。

みさこさーん、と係りがいう。


はーい!と両手を広げてこちらに向かってくるみさこ。

ありがとうございます~。と。

僕は一気に堕ちてしまった。


ずっとあこがれだった存在とツーショット写真を!


ぶっちゃけた話、バンもん!の中では、みさこはダントツの最年長だ。

7つくらい離れている気がする。

だから、お客さんのほとんどは、ほかのメンバーを指名する。

しかし、僕には自信があった。どんな古参よりも、僕のほうがみさこさんを応援している期間は長いのだ。

なぜなら、バンもん!が結成される二年も前から応援していたのだから。



感無量だった。

こんなにかわいい人間が世の中にいるのかと思った。

いや、いた。しかし、彼女だけだ。


自殺には、明るい自殺もあるのではないかと思った。

あの瞬間の僕は、これ以上の幸せは今後訪れないから、ピークのときに死ぬのも悪くないな、とまで思っていた。

チェキを握りしめて池袋を歩いているとき、だれか僕をひき殺してくれないだろうか、と思った。



AKBグループを筆頭にして、CDに握手券を付属させて売る商法には賛否両論ある。

しかしながら、僕は間違いなく賛成である。


会いにいけるアイドル、というものがどれだけ素晴らしいものか、ということだ。

こんなにも、一瞬ですべてを吹き飛ばしてしまうような恋の気分になれることが、ほかに何で代用できようか。

少なくとも僕は、今年中はこの幸せをおかずに毎日白米を食べることができるであろうし、僕がみさこさんと撮ったツーショットは、永遠に残るのだ。


アイドルに興味が無いひとたちには、自分が人類で一番かわいいと思った存在に直接目を合わせて写真をとってくれることの幸せを少しでも共感してほしいものである。


僕は間違いなく今日のできごとは一生の思い出になったであろうし、みさこさんは僕の中で最もかわいい女性という地位は今後ずっとゆるがないのであった。



東京ディズニーランド。

そう、まさにミッキーに魅了されることと同じなのだ、と僕は熱く主張したいのだった!