深夜に急に目が覚めてどうしようもないので、この前食べたとろろそばの話をしたいと思う。
まったく魅力のないつかみではあるが、私の中では意外と印象に残っている日だったので、せっかく記事を開いていただいたのであれば読んでみて欲しい。
先日私は夜の9時まで松戸というところで授業をしていた。
池袋が私の家の最寄りのため、松戸から池袋を目指すとだいたい片道40分程度となる。
ここでまた塾講師の仕事の特殊な点としてあげられるのが、「いつ飯食えんのや」ということだ。塾講師の仕事は終わりが遅い。そうなると自然と夜ご飯を食べる時間帯というのもずれてくるわけで、この日だと仕事が終わった9時の段階でお腹はグウグウ。松戸で仕事終わりに何か食べても良かったのだが、せっかくだから池袋まで我慢してお気に入りのカレーでも食べようかと自分の舌と相談していた矢先だった。
脳内が食べ物のことでいっぱいだったからかはわからないが、なんと私は帰りの電車を乗り違えていて、気づけば逆方向の電車に10分以上乗っていた。
まぁ、このときほど自分の馬鹿さ加減にいらついたことはなくて、そしてまたこのような極度の状況で無意味な時間を過ごしてしまったことが耐えられなかった。松戸にまた舞い戻ることがどれだけ徒労か。車内は混んでいて無情にも私に座る場所など与えられない。
そして恐るべきことは片道40分であったはずが私の愚かなミスにより、片道1時間に脅威の変貌を遂げたということだ。
お腹が空いて泣いて崩れ落ちそうな気分を抑えつつ、なんとか片道1時間をかけて池袋に戻ったところだ。
山の手線が池袋に到着したときのこと。なにやら違和感があった。電車から降りてホームに足を預けるまでのわずかな時間に、自分の身体をなにやら生暖かいものが濡らした。そのときは特に気にもとめずにカレー屋を目指して出口に降り立ったところ、その生暖かいものの正体に気付いた。時刻は10時半にさしかかるところ。外はスコールかと思うほどの大量の雨であった。
どれほど凄まじい雨であったかということをうまく私の文章力で伝えられるのならそれは望ましいことであるが、皆さんの想像力におまかせ頂くと、今までで私が経験した中で最大の雨量であった。雷雨だ。5秒感覚で空は青く光り、そのまた2秒後にはものすごい雷の轟音が池袋に響き渡る、そんな状況である。
当時の私は傘など持っていなかったし、また持っていてもなんの意味もないほどの雨であった。外にはほとんど人が歩いていない。これはダメだ、ということで、たくさんの人とともに出口付近で待ちぼうけを食らうわけである。
あのとき、電車を乗り違えてなかったらこんなことにはならないのに!!
悔しかった。人の食に対する思いというのは時として恐ろしいものだ。
カレーを諦めきれなかった私はそれでも30分ほど雨宿りをしていた。つまらない時間だった。お腹の空きはとうに限界を超えている。ピークから2時間経っているのだから。
私は、重い腰をあげ、池袋駅構内で何か食べれるところを探すことにした。
そうだ、つけ麺屋があったはずだ。
意外なことに、そのつけ麺屋を目指す道中が楽しかったりするのだ。非日常的な事態にわくわくした気分。脳内では、となりのトトロの「さんぽ」が流れている。
不思議なことにすっかり私はこの状況を楽しんでいた。
しかし、そんな私をまだ不幸が襲うのであった。
店員からのお言葉。「すみません、もうラストオーダー終わっちゃったんですよー」(よー、よー、よー、)←エコー
そこは池袋駅構内であったはずなのだが、私の頭の上だけに集中豪雨が降り注いでいた。
なんてことだ、信じられない。時刻は11時を過ぎようとしているときであった。確かにシャッターが閉まっている店ばかりで嫌な予感がしていたんだ。
そのときであった。もう半べそ状態で戻ろうとした道で、私の目は立食い蕎麦屋を捉えていたのであった。
恐る恐る店員に聞く。「まだやってますかね?」
明るい笑顔で60歳近く見えるおばさんが答える。「やってるよ!」
私は意気揚揚と「とろろそば」を注文した。
目の前に置かれたとろろそば。ズルズルっと一口目。
ああ!なんて幸せなのだ!!!
こんなにうまい蕎麦を食べたのは久しぶりであった。しっかりと口の中で味わい、つゆの一滴も残さずに完食。
あまりの美味しさに涙がこぼれそうであった。
大満足で、先ほどの出口に戻った時、嘘のようなことが起きていた。
先ほどまで地獄絵図のような池袋が見違えるように、雨が上がっていたのであった。街灯に照らされた地面は私の気持ちを表すかのようにキラキラと光っていた。
こんなことってあるのだろうか。私の気分はV字回復。家についた頃には、あのとき電車を乗り違えて良かったと思っていた。本当である。
とまぁ、そんな話だ。
思ったことは、やっぱり気分がすぐれない時ほど、なにか楽しめることを見つけることだ。池袋構内をさんぽしていたときなんかまさにそうだ。あれは楽しかった。一種の冒険である。
それと、物に固定価値などないということだ。食べたかったカレーなど頭からすっとんでいた私は、440円のとろろそばにえらく感動していた。
とりとめのないことを言うようだが、幸せの感じ方なんて、その人の釈度による。いつまでも鬱屈した気分でいたら楽しめるときに楽しめない。
ものの価値なんて結局その人が決めるのだ。気分次第で、単なるそばでも、凄まじい変化が表れる。
それならば私は、どんなときでもいつでも楽しくいたいと思った。基本的に、どんなにつまらない状況でも、楽しめる手がかりは意外と残されているものだ。池袋構内を冒険している気分になったっていいじゃないか、憂鬱な顔をひっさげて冒険する勇者がどこにいる。
Be happy !! だ。
あの日本一美味しいそばにまた出会えるのではないかと思ってね。
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