夢ノ終ワリ Part3 | イモの妄想神姫日記的なもの

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夢ノ終ワリ Part3

2018年1月29日にpixivに投稿したものを再編したものです。

武装神姫の二次創作のSSです。苦手な方はご注意ください。

↓以下本文

 

 

キッチンにいたマオチャオ型、タオさんをアリスさんに任せ、私たちは今回のフラッグがあるマスターの部屋を目指します。

 

 門の場所でサーシャさんに残ってもらっていますから足止めをしてもらっているのはこれで二人目です。人数的にあと御二人を足止めできれば私がマスターの部屋まで駆けこみ、勝てるのですが。

 

「うう……作戦とはいえ二人に残ってもらうのは気が重いです……」

 

 捨て駒にするような罪悪感が沸き上がってくるのです。判断を下す、リーダーというのは酷な役目ですね……。

 

「まあ試合に勝って勝負に負けてもしゃーないからね」

 

「必要だった……レヴィは間違っていない」

 

 マドカさんとヴァレリアさんに慰められながら先を目指します。

 

『一回状況を整理しましょうか。西の棟の一階ではタオとアリスが対戦中。

二階は破壊されてて、階段もなくなった。目的地の私の部屋はその上の三階……。

エントランスを迂回していくしかないみたいね。まったく、やってくれるわエミリーのやつ』

 

 エントランスへ向かう扉はガッチリと鉄の壁で覆われていました。

 

「……火力不足。私には無理」

「うーん。壊せなくもないけど正直弾薬の無駄だね」

 

『となると西の棟から迂回するしかないか。そこの窓壊して出ちゃって』

 

 相変わらず御屋敷を雑な扱いです。

 私の超大型の太刀、鳳仙花の柄で窓ガラスを割ると中庭にでます。

 

 全く見る機会がありませんでしたが、そこは酷い有様でした。

 銃弾で削られるように抉られた大地でデコボコになっているのもそうですが、何より極太のビームでも撃たれたかのような跡が目立って仕方がありません。こんなことができるのは……。

ふと、その極太ビーム(仮)の跡の先、終着点でガブリ―ヌ型とハウリン型、二人の門番をしていた神姫さんたちが目に入ります。つまり。

 

「これ、サーシャさんのやったことだったんですね」

 

 見なかったことにしておきます。倒れたサーシャさんの姿は見えなかったのでこちらに合流しようとしてくれているんだろうと思います。

 

『そこを真っすぐ行くと温室の扉があるから、そこから東棟に入れるはず』

 

 マスターの言葉をお二人にも伝え、そっと中に入ります。

 

温室には先ほどのメイド服のウェスペリオー型さんが連れていた白い三角錐が飛び交っていました。

 大きさは私たちの頭部程なのですが、ふと近くを飛んでいた三角錐が私の前で動きを止めます。そして、けたたましい音でサイレンを鳴らし始めました。

 

「あわわわわ」

 

「えい」

 

 慌てる私。踵落としで三角錐を壊すマドカさん。相変わらず重装備とは思えないアクションです。というか情けないですね、私!?

と、ドタドタと駆け回る音と共に温室のエントランス側の扉が開かれ、ウェスペリオー型神姫さんが現れます。

 

「また会ったわね! ……ぜぇぜぇ」

 

「はい、お久しぶりです」

 

「射撃準備完了」

 

「ちょい待ち、タンマ。冷却機関がまだちゃんと……冷えてないから……」

 

 ……一体どこから走ってきたのでしょう。冷却期間が追い付かないことって中々ないのですが。

 

「などと思っている場合ではありません! タイムリミットがあるんですから! 押し通らせてもらいます!」

 

「あっ、そうだった! ごめん、待たせて! よし、さっきの時間分私攻撃しないからそれでチャラってことで!」

 

「はい!」

 

「レヴィっち~……」

 

 すみません、勢いで押し切られてしまいました。

 

「じゃ、改めて! よくここまで来たわね! メイドの職業神姫、ハクアだ!

屋敷のお掃除はお任せあれ、ってね!」

 

 温室に屋敷のお掃除という言葉が響き渡ります。

 

「ここ、温室ですよね?」

 

「しまった持ち場から離れすぎた!?」

 

 この子、仲良くなれそうです。

 

「ぐぬぬ、ここまで精神攻撃が得意とは予想外だったわ! まあいいわ、メイドコウモリ軍団を率いるのはこの私! ここを抜くことができるかしら?」

 

 メイドコウモリ……実際は蝙蝠状の翼のついた三角錐にメイドのヘッドセットが乗っただけのものなのですが本人が言うからにはそうなのでしょう。

 

「メイドじゃなくない?」

 

 マドカさん、容赦なしです。

 

「言ったなー! 気にしていることを! 私だってぶk……同僚が欲しいのー!」

 

 向こうは向こうで必死です。

 

「コスト制……っていうの? あれの弊害が私にも来ててさ、ホントはもっと動かせるんだけど、かなり限られちゃってるし、耐久性も落ちてるし、いいこと無しだわ。

でも……」

 

 ハクアさんは懐からヨーヨーのようなものを撮りだします。

 

「お嬢様のため、旦那様のため! もう一度御屋敷にお嬢様に来てもらうためにやってやるよ!」

 

 さらにメイドコウモリが背中に数体付き、ハクアさんは空に浮かび上がります。

 

「さあ、このメイド軍団に勝てるかしら?」

 

「同系統……」

 

 今度はヴァレリアさんが前に出ます。

 周囲に従えていた軍用機がいないことから既に戦闘準備は万端のようです。実際、温室という死角の多い環境はヴァレリアさんにとって絶好のロケーションでした。

 

「複数相手、得意分野」

 

「……行っていいわよ。あなたたちが通り過ぎれるだけの時間を私は無駄にさせてしまった」

 

「ありがとうございます……!」

 

「じゃ、頑張ってね、ヴァレリア!」

 

二人で温室を抜けます。

 

「……否。有言実行すればいいだけだ、司令官」

 

「ふーん、それで、軽装のあんたがこの数と勝負するわけ?」

 

「一言。あなたは部隊の恐ろしさを知ることになる」

 

 

レヴィアチーム、残数三人。

エミリーチーム、残数二人。

レヴィアの現所在地、一階東棟廊下。

……残りのタイム、十分。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

「複数相手、得意分野」

 

 私は、レヴィア達を送るために自己評価を口に出す。

 

『行きましたか』

 

 脳裏には、安堵した司令官の声。

 

『……たはは、本当はわからないんですけれどね……! 少なくとも時間稼ぎ位にはなるでしょう、きっと……』

 

 いつも通りだが、悲しいほどに自己評価が低い司令官。

 私は本心から、それを否定する。

 

「否。有言実行すればいいだけだ、司令官」

 

 優しさでも気休めでもない。私とマスターならばできるという、自信。

 

「ふーん、それで、軽装のあんたがこの数と勝負するわけ?」

 

 ハクアが温室の上空から、声を投げる。

 

「一言。あなたは部隊の恐ろしさを知ることになる」

 

 私と司令官の部隊は、強い。

 

「そんじゃ、見せてもらおうかしら!」

 

 ヨーヨーのような丸鋸が、私が先ほどまでいた地面を抉る。

 もう、私は走り出している。私の武装はスナイパーライフルとマチェットのみ。

 あとの火力は、五基の小型軍用機で代用する。

 

「ほらほら、逃げてるだけじゃ、すぐに追い込まれるわよ!」

 

 丸鋸による猛攻は止まらない。だが単調に尽きるため逃げること自体は容易。そう思った矢先だった。

 目の前を三角錐型の機械が立ちふさがる。大きさは頭ほど。邪魔。

 マチェットを素早く腰から取り出すと三角錐を打ち落とす。

 

「私にはメイドコウモリ軍団がいるんだから! あんたの逃げ場なんてすぐに塞げるの! そーれ!」

 

 三角錐は続々と群がり、サイレンを私の耳元で鳴らしていく。

 センサーが、狂う。

 ふらついた私を、丸鋸が打つ。

 

「どうよどうよ! これが私の戦い方ってわけ! 清掃機能……はバトルでは必要ないからいいけど……、コスト制のせいで銃器を積めなかったのは残念ね。

でも、音による攻撃って意外と馬鹿にできないのよ? このままなぶって倒してあげる!」

 

 成程。この三角錐は本人のブースターの他にそのような役割があるということか。

 だが、戦法がわかってしまえばなんということはない。

 数が多いだけの軍団に、私の部隊は負けたりしない。

 

「さあ、行っちゃいなさい! メイドコウモリ軍団! キーキー音を立てて、そこのポーカーフェイスをべろんべろんに酔わせちゃうの!」

 

「司令官」

 

『……うん、大丈夫。配置についたわ』

 

「ミッション、スタート」

 

 突如、ハクアの背についていた三角錐のひとつが爆発する。私がさせたのだが。

 

「わぷっ!?」

 

 バランスを失い、落下するハクア。

 

「イタタ……なに、いきなり?」

 

 起き上がった先には小さな装甲車。司令官が前もって配置させたものだ。大きさはあの三角錐とそう変わらない。

 徐々に状況を認識し、顔を引きつらせるハクアに小さいが鋭い銃撃が浴びせられる。

 

「ちょっ、このぉ!」

 

 ヨーヨー状の丸鋸を振り回し、装甲車を破壊しようとするがそのワイヤーに今度は小型の戦闘機が引っかかる。

 

「え?」

 

 勢いのまま引っ張られて温室中を飛び回る羽目になるハクア。

 ようやくワイヤーが外れたはいいが、勢いのままに壁に突っ込む。

 

「目が、回る……」

 

 よろよろと起き上がるハクアに小型の戦闘ヘリと小型の爆撃機による爆撃を行う。

 小さいが、こうも連続して喰らえばバズーカの威力とそう大差はない。

 怒涛の攻撃に押されたメイド服を着たウェスペリオー型のヒットポイントは見る見る内に減っていった。

 

「こんのお!!」

 

 丸鋸を振り回して怒りの声をあげるハクア。だが、その切っ先は無駄に空をきり、温室の床を傷つけるだけだった。

 

「あったまきた! ドローンに任せまくるってどういう了見よ! ……だめだ、ブーメランだこれ。

……というか、あいつどこよ? なんでいないの?」

 

 ハクアは気がつくと、ぽつんと取り残されるかのように温室の中央に立っていた。

 小型軍用機の類も、どこにも見当たらない。

 

「まさか、この部屋から逃げたんじゃないでしょうね……! メイドコウモリ! くまなく探して!」

 

 自身の使役する三角錐で部屋中を探査するハクア。だが、途中で違和感に気がついたようだ。

 

「ちょっとちょっと、なんでこんなに数が減っていってるのよ!?」

 

 物陰に入る度に、どこかでドローンが破壊される。それで場所の特定なんてできそうなものだが、とにかくそこら中で起きているのだ。場所の特定なんてとてもではないができない。

 

「あれ、これ、私まずくない……?」

 

 ドローンの数はもう一桁。……やがて、背中についた一基だけを残して全ていなくなった。

 

「これが、部隊の力」

 

『すごくすんなりいって良かったね、ヴァレリア!』

 

 私はずっと温室の大きな照明の上に座り込んでいた。

 そこからリアに積んだレドームで三角錐の位置を把握、小型軍用機や自身のスナイパーライフルを用いて破壊していたのだ。

 

『何か奥の手があっても大丈夫なようにメイドコウモリ? から壊していったけどもう大丈夫そうだね』

 

「私たちの相手はいつも逆転を狙う相手だった。その判断は間違いじゃない」

 

『……ふふっ、ありがとう。さあ、あとは勝って、……くんとマドカちゃんに追いついてから考えよ!』

 

「あの男、非推奨」

 

 こんな時にまであの男の名前を聞くことになるとは、思っていなかった。

 闇雲に丸鋸を振り回すハクアに狙いを定め、スナイパーライフルの引き金を引く。

 ハクアはぱたりと倒れるのだった。

 

「部隊の恐ろしさ、わかった?」

 

 私は近くまで飛ばした小型ヘリに捕まると、天井付近から床へとゆっくりと滑空する。

 

「……おや、加勢に来たが必要なかったようだな。若人よ」

 

 外からの扉を開け、サーシャが現れた。門番二人は、無事倒せたということになる。

 

「無論」

 

 こちらも相手神姫の一人を倒した。

 

「……部隊こわっ」

 

 失敗。一応ヒットポイントが残っていた、というよりも最後まで背後に残っていた三角錐を使ってリカバリーを行ったようだ。

 

「あんた、強かったわよ……手も足もでないとは思わなかったわ……」

 

 ハクアが倒れたまま目を開く。

 

「うう、こういうの趣味じゃないんだけど。野暮な真似されたくないからね。

相打ちってことにしてもらうよ」

 

 ハクアが悔しそうに目を閉じると、温室中の三角錐が赤く点灯する。

 

 

 

「っ!?」

 

「なんと」

 

 各地の落下済みメイドコウモリが爆発。それは誘爆を引き起こし、温室は崩壊した。

 

 

『ここまで、ですか……。でもありがとう、ヴァレリア。弱気な私を勇気づけてくれて。本当に、嬉しかったよ……』

 

レヴィアチーム、残数一人。

エミリーチーム、残数二人。

レヴィアの現所在地、一階エントランス。

……残りのタイム、五分。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 高い天井。二つに分かれた階段。いかにも、というようなお屋敷の入り口に立ちます。音質を抜け、東棟の廊下を抜け、ようやくたどり着いたエントランスへ向かうと、そこにはエミリーさんが階段の上で待ち構えていました。

 

「今度は玄関から来てくださったんですね。マドカさんも一緒とは少し驚きましたが。御明察の通りこの階段の先がお嬢様のお部屋ですよ。私を倒せばそもそも邪魔だてするものもいなくなりますが……」

 

 マスターの部屋の前ではなくエントランスで待ち伏せる。それは狭い廊下よりもこの広い高低差のある部屋の方がエミリーさんは戦いやすいということ……!

 

「ああっ、お客様よりも上の位置から失礼いたしました。何分エミリーめも有利な位置を維持しておきたくて……」

 

 頬に手を添え失念していたとでも言わんばかりの表情をするエミリーさん。

 

「こちらは二人。他の方も既に倒されているか仲間が戦っている最中です。合流に来る確率はとても少ないですよ。サレンダーするならば今の内です」

 

 私は少し強気に階段の一段目を登ります。

 

「あらあら、サレンダーですか、この私が。フフフ……いえ、失礼しました」

 

 不敵に笑うエミリーさんはそっと足元に置いてあったボウガンを手にとりました。

 

「それでは参ります。お覚悟くださいませ……」

 

 空気が一気に張りつめます。緊張からか、恐怖からか足が震えます。

 

「レヴィア。一気に駆け抜けな。コイツの相手は私がする。そのためにここに来たわけだし」

 

 マドカさんの雰囲気が変わりました。いつものんびりとヂェリカンを飲んでいる姿からは想像もできない、武装した神のごとき姫がそこにはいました。

 首をこきりと鳴らすとマドカさんはこう言い放ちます。

 

「さあ来い。トップランカーの力、見せてやるよ」

 

 この瞬間に知ったことでした。マドカさんは、あのゲームセンターのトップランカーだったのです。

 

「度胸は買いましょう。度胸だけですが」

 

 一方エミリーさんも両手を広げマドカさんを歓迎します。この道を守る主として。

 

 瞬間、私は一気に左へと跳びました。

階段の上と下、衝突の余波が部屋全体へと響き渡ります。

二つのチームの最強の神姫の対決が始まったのです。

 

 

レヴィアチーム、残数三人。

エミリーチーム、残数一人。

レヴィアの現所在地、一階エントランス。

……残りのタイム、七分。