※少々グロテスクと思われる表現、血の表現が出てきます。
 暴力的な表現などはありませんが、血の苦手な方や
 不快に思われる方は十分ご注意いただくか、読むことをお控えください。
実話です。





朝起きて、朝ご飯を食べる。
パンを温めすぎたらしく、口の中を火傷してしまった。

口の中の皮がべろりとむけているのに気がついたのは駅に向かっている途中。
ああ痛いなあ、やだなあとよせばいいのに舌でなぞった。
地味に痛い。


駅のホームに上がったら、じわりと鉄のにおいがした。
あ、血が出たかなとまた舌で皮のむけた部分に触れる。
でも、血の味はしない。

にじんだだけかな?と不思議に思っていると、また鉄のにおいがした。
風上から。


おそるおそる視線をそちらに向けると、作業着姿のおじさんがモップを動かしている。


なんだ、汚れた水のにおいか。
そう思ってホームを歩き、いつも乗る位置に向かう。


いつも乗る位置の少し向こう、ホームの壁際の床が汚れていることに気がついた。
赤みを帯びた、どす黒い汚れ。
まさか。


そのままその汚れを見つめていたら、さっきの作業着姿のおじさんがやってきて
そのどす黒い汚れをモップでこすり始めた。


そしてまた、鉄のにおい。


もしかして、と思った瞬間に
無機質に近かったにおいが、一気に生臭みすら感じるような気がした。


たぶん自分の血と同じにおいなのに、他者の存在を感じただけで
なぜこんなに生々しくまとわりつくような感覚になるのだろう。


どす黒い汚れの正体より、この感覚の正体のほうが気になった。