森鴎外の山椒大夫

 

原作の「さんせう大夫」とは流れが異なる

原作は、因果応報の語り物

安寿と厨子王は逃げようとして額に烙印をされ

弟を逃がした姉は攻め殺される

その因果で、

厨子王が丹後守になった後、

山椒大夫は竹の鋸で引き殺される

 

鴎外の山椒大夫では、

安寿は弟のために自ら沼に身を投げる

 

厨子王が丹後守になると、人身売買を禁止するが

山椒大夫を殺さない。

山椒大夫は人を雇って生産性が向上し

一族は益々富栄えることにしている

 

勧善懲悪色を消して

鴎外は何を言いたかったのか

 

弟を逃がすと決めた後の安寿

蒼ざめた顔に紅が差して、目が赫(かがや)いている

安寿はけさも毫光(ごうこう)のさすような喜びを額に湛えて、

大きい目を赫かしている

と鴎外は描写する

 

原作では、安寿は攻め殺され怨念と復讐の塊となるが

鴎外版では、弟や母のために、

自らの命を投げ出す喜びに打ち震える自己犠牲の人である

そして安寿の精神の波動か、その後、皆が幸せになる

 

これに

安寿は精神的には幸せかもしれないが

物質的幸せは無かったのでは

と言った人がいた

 

しかし、物質的幸せとは何か

物が豊かでも心に響かなければ幸せとは言えないのでは

との会話になった

 

果たして、森鴎外は

何を言いたかったのか?