この短編小説は小説賞に応募した作品の、初めの部分になります。題名の一部を伏せています。

 

         題名 10年〇〇(〇〇〇ロケット)

 

 太郎の心はずっと塞いでいた。あの日から、日本が無条件降伏をして、進駐軍にわが祖国を占領されて以来なのだ。大東亜戦争に敗れたのだ。西洋列強に植民地にされた。アジア諸国を開放する。そしてアジア諸国を、独立国として、国を整えるのだ。そんな大儀が有る。わが日本が、負けてしまったのだ。

 あの日以来。うんこが出なくなっている。もともと便秘気味だったが、今回はちがう長すぎる。もう1年近くも、うんこが出ない。8月が来たから、15日でちょうど1年と言う事か、

「今日は8月15日か、特に事件は無かったな、んんん。何か便意が来たぞ」

便所へしゃがむと、すごい勢いで、うんこが出て来た。

「ああああ、うんこが肥溜めに刺さったぞ、ああああああ、体が浮いたー」

ドカーーーン。便所の天井に頭がめり込んで、その衝撃で太郎は気絶してしまった。天井板が破壊された爆音に、驚いた梅ばあちゃんが、様子を見に来た。

「こ、これは、うんこ柱が立つところ、わがうんこ神様の、天孫降臨なりー」

梅ばあちゃんは、うんこ柱の周りを、踊りを踊りながら、うんこ神様への特別な神称えの、呪文を唱えだした。

「フンドラマタンキ、トメヤノペッタラ、ドスケベタンバラ、ピーピータ、テイタクチヤータ、トヤータドンタラ、チャッチャリパー、ハアー、マラタテ、マラタテ、マラタテヨー」

うんこ神呪文が聞こえて、太郎は意識が戻った。

「ん。これは梅ばあちゃんの呪文だ」

太郎は、天井板から首を抜こうとしたが、抜けない。

「オーーイ僕だよ太郎だよ、首が抜けないんだ。助けて」

梅ばあちゃんは、声を聴いて太郎だとわかった。

「ばあちゃんは、天井まで手が届かないよ、近所に助けを呼んでくるよ」

「玄さん。ここなの」

「こりゃ驚いたー。話どうりだ」

大工の玄さんは、持ってきた脚立に上り。ノコギリで天井板を切って、ようやく太郎を助け出した。

「じゃ梅さん。天井板の修理に掛かります」

天井の修理も済んで、4―5日もした頃。雲虎家に髭を生やして、黒いスーツを着た。初老の男性が訪ねて来た。

「ここが、雲虎太郎さんがお住いのお家ですか?」

「はい。私は雲虎梅です。孫の太郎はこの家に居ます」

「僕が太郎ですが、何か御用ですか?」

 

 作品は完結していますが、此処までを掲載しました。