北アルプス、立山の山頂を目指す兄弟の前に現れた石の壁。

見上げても山頂は見えないが、登っている人の姿はちらほら。

とても登れる気はしなかったが、弟とも話してとにかくいける所まで

いってみることに。

岩山に近づいていくと、ただの岩の塊にしか見えなかった場所に

うっすらと道のようなものを感じられた。

合わせて、岩などに色付の矢印マーキングがされており、

それに導かれるように進むとただの岩が重なっただけのように

見える場所も足掛かりなどがあり、自然と登っていけるのだ。

先人の軌跡は偉大である。

 

そうやって慎重に道を探しながら登ってゆくと、なんだろう、楽しいのだ。

今まで低い山などで通ってきたただの坂道や単調な階段では感じられなかった、

アトラクションを楽しむような高揚感を感じた。

高低差を登って高度を稼ぐというのは同じなのだが、

ただ、体力を使って登るのとは違い、足場の岩には一定の段差でもなく、登り方も必ずしも一通りではない。常に足元と前方を見比べながら、自分の足の置き場の探索、選択、決定を瞬時に決めながら、高低差によって足に入れる力の調整も含めて、

目まぐるしく脳を使いながら登ってゆく。

なんというか、一歩一歩が問題に答えて正解をだしてゆくような、

そんな快感があった。

 

天気は快晴、視界もよく、見下ろすと高度を感じられるのだが、

どちらかというと高所がにがてな方な自分も大地に足を着けている安心感からか、

あまり恐怖を感じず、夏の日差しに高山の涼風が気持ちよい。

そして、そのまま問題もなく山頂の広場へたどり着く。厳密にはまだ最高度地点では

ないのだが、見るからに山頂の雰囲気だったためこの時は気付かなかった。

 

1時間ほどかけて300mを登ってきているので、当然疲れはあるのだが、

登れるはずのないと思っていた場所を登れた興奮からか元気だ。

山頂に建てられた小屋を物色したのちに見晴らしの良い地点へ。

 

そこから見た景色は人生観を変えるようなものだった。

 

                         4へ続く