
松田が、今から20年以上前に、ある障害者施設で働いていた頃の話です。
その施設に入職して、3か月ほど経った頃のことでした。
施設長が、町会議員に立候補することになったのです。
その施設長には重度の障がいがあるお子さんがいました。
我が子のために、無認可施設からスタートし、苦労を重ねながら施設を立ち上げ、運営してきた方でした。
そして
「もっと福祉のために!」
という強い思いから、自分が住む町の町会議員に立候補されたのです。
ここまでは、誰もが「立派な話だ」と感じる内容だったと思います。
しかし…問題はその後でした。
施設の業務終了後、職員が選挙活動を手伝うことになったのです。
選挙カーに乗り、「○○をお願いします」と町を回る。
もちろん、私もその中に含まれていました。
「手伝った」というより、
今思えば「手伝わされた」と言った方が正確だったかもしれません。
長年その施設で働いていた職員の方々には、施設長への思いや共感があったのだと思います。
しかし、入職してまだ3か月しか経っていなかった私の頭の中には、
「?」
が浮かんでいました。
当時は、
「なんだか変だな……でも、まあいいか」
と深く考えずに流していました。
ですが…今振り返ると、
これは公職選挙法の観点でも問題があり、
雇用関係を背景にした『パワハラ』と捉えられてもおかしくない行為だったと思います(笑)。
その施設長にも、ご自身の家族に重度の障がいのある方がいて、
並々ならぬ思いや苦悩があったのだと思います。
しかし、
どれほど強い思いがあっても、
どれほど崇高な理念を掲げていても、
雇用主という立場で、労働者に「当然のように」協力を求めることは、やはり間違いだと今は思います。
その方は結果的に高位で当選されました。
そして現在、私自身も施設を立ち上げ、経営する立場になりました。
私にも理想や理念・夢はあります。
ただ一つ、強く意識していることがあります。
それは…
周囲の人が、その理想を『手伝って当然』だと思わないこと。
そして、かつての私が受けた
『悪意のない、無言の圧力』
を、絶対に他人に向けないことです。
あの時の違和感は、
今の自分にとって、大切な教訓になっています。

