金曜日の夜On the Borderのバーでおごってくれちゃった知らないおじさん と、いろいろたわいのない話をしてたんだけど、おじさんも私もたまたま同じビール、Dos Equis Amberを飲んでいた。
一時会話が途切れたあと、おじさんが切り出した。
「アンバーって、昔は嫌いだったんだよ。」
「へー、そうなんだ?」
「うん。よく一緒に飲んでた奴のお気に入りで勧められたんだけど、俺は好きじゃなかった。そいつはパイロットだったんだけどさ。」
「ふーん、それで?」
「奴は事故で死んだんだよ。それから奴を思って飲むようになったのさ。」
パイロットって、軍人だったのか航空会社のパイロットだったのか、飛行機の事故だったのか車の事故だったのか、細かいことは何も聞かなかった。
「私もさ、ビールって好きじゃなかったんだよね。炭酸ガスですぐ腹一杯になるからたくさん飲めないし、ちょっと飲んだだけじゃ酔いもまわらないし。」
「ははは、そうか。」
「でもさ、父がビール好きで、カリフォルニアに初めて来たときには、ピッツァ屋で大きなピッチャーに入って売ってたのがが安いのに感激してた。で、その父が亡くなった日に無性にビールが飲みたくて、それ以来ビール飲むようになったんだ。」
「そうだったのか。」
しんみりした空気がたちこめた。
おじさんも私も、故人を偲んでビールを飲んでいたのであった。
にほんブログ村