元夫の別居生活はしばらく続いていた。
彼は社員さんに一言もそのことは言わなかったが、社員さんはうすうす気がついていた。
元奥様は役員のはずなのに、会社には全く来なくなったし、仕事のことで電話をかけても通じない。
でも、社員さんは極力その話題を彼とはしないようにしていた。
その遠慮がちの空気に彼はときどきいらだっていた。
私は彼からたまに相談を受けるようになっていた。
私は唯一、彼の離婚騒動のはじまりを知っていたからだ。
『●●さんだったら、どうする?』とか
『●●さんが嫁さんだったら、どう考えると思う?』
相談って言ってもそんな感じのことを聞かれたくらいだけど。
結婚したこともないし、嫁姑の話などもわからない私は、ただただ彼の話を聞いていた。
彼は、私に相談するというより、誰かに話を聞いてもらいたかったんだろう。
プライドの高い彼が自分から弱みを見せることは出来ず、かといって自分の中にもしまっておけず、偶然に知ってしまった私を愚痴のはけ口にしたんじゃないかな。
このあたりから、私と彼の距離がまた縮まったような気がする。
元夫は、この頃、もとに戻るために自分なりの精一杯の努力をしていたんではないかと思う。
3人の子ども達の誕生日、クリスマス、それ以外にもことあるごとに元奥様の家(もとの自分の家)に行っていた。
子ども達のプレゼントを抱えて。
でも、元奥様はそのたびにプレゼントをつき返していたらしい。
『こんなもの、子ども達は全然喜ぶはずないでしょ!』
子ども達に会わせて欲しいと言っても、
『子どもはアナタには会いたくないって言ってるから。』
ケンもホロロ。
それでも彼はあきらめなかった。
彼は自信があった。
長女。
この長女だけは自分の味方でいてくれる。
長女と次女は年子だった。
この頃は、彼もよく子どもの面倒を見ていたらしい。
当時は普通のサラリーマンだったし、仕事もそんなに忙しくなかったんだろう。
次女は赤ちゃん。長女は1歳。
元奥様が次女にかかりきりのとき、よく長女の世話をしていて、ずっと長女とお風呂に入ったり、添い寝する役目は彼だった。
彼にとってははじめての赤ちゃん。
そりゃあ可愛いだろう。(彼は子どもが嫌いな人ではありませんでした。)
なにかにつけて甘えてきたり、元奥様とけんかをしていたら彼の味方になってくれたりと、彼にとっては目の中に入れても痛くないような・・・。
私はそんな印象を受けていた。
その長女にまたもや誕生日のプレゼントを持って行った彼は、偶然、学校帰りの長女と次女に出会った。
声をかけると、次女は一目散に逃げていった。
彼は長女に声をかけた。
『お父さん、誕生日のプレゼント持ってきたよ、ほら♪』
長女は黙って下を向いていたが、
『お父さんなんか、怖い!キライ!大キライ!!!』
そう叫んで、次女のあとについて走って行ってしまった・・・。
彼は呆然とした・・・。
まだ、長女は小学校2年生かそこらだ。
自分で判断なんてできないよね。
でも、彼のショックは大きかった。
でもね、彼はこの時点から、もう間違ってる。
子はかすがいかもしれないけど、子どもに頼っちゃだめだ。
ましてやまだまだ幼い子ども達に。
元奥様もそれを聞いたら面白くないだろう。
私が知る限りでは、元夫と元奥様は、すぐに離婚するほどは破綻していなかったと思う。
離婚騒動がおきるちょっと前はときどき二人で仲良く買い物をしていた。
元奥様にもっと直談判するべきだったと思う。
本当に別れたくなかったのなら・・・。
子どもじゃなくて、『キミと別れたくない!』って。