私は、とにかくこの実習が早く終わってくれることを願って、日々過ごしていました。
相変わらず心を開いてくれない子ども達。
ある日の昼食の時間。
食事はホールでみんなで一緒に食べます。
部屋の子ども達と一緒に、ホールに向かいました。
『みんな、食べる前に手を洗ってね。』
水道に向かったひとりの男の子が、いきなり走り出し、水道の蛇口の栓を次々にひねって水を出しっぱなしにして、逃げて行きました。
手洗いの場所は3箇所ありました。
蛇口は全部で20個くらい?
その水道を全部全開にして、笑っています。
『やめなさい!!』
ひとつひとつ、蛇口を閉めていっても、また、次の蛇口を全開にする彼。
『面白いな~・・・!!僕を捕まえてみたら?捕まえられるはずないよね・・・。たかが実習生のおねーさんには♪』
この子はまだ4歳です。
思いっきり腹が立ちました。
私は走って行って、彼を捕まえ、彼の手を掴み、手の甲をビシッ!!
叩きました。
今までの実習の経験から、私がちょっと怒っても子ども達は泣き出していました。
叩いたことは幼稚園の実習で一度ありました。
幼稚園の塀の上を歩いていた男の子。
外側は車の通りが多い車道。
『危ないから降りて!!』
降りようとしないその子の手を掴んで、無理やり腕の中に抱きとめました。
私は泣いていました。
思わず、その子の手を叩きました。
『なんで言うことを聞いてくれないのよぉ・・・。危ないでしょ・・・!!』
その子は大声で泣きました。
『ごめんなさ~い!!』
子どもは(大人もですが・・・。)一生懸命対応したら、きっとわかってくれると思っていました。
叩くのはまずいけど・・・。
その男の子はへらへら笑っていました。
『ぜーんぜん痛くないよ♪おねーさんの力ってその程度?』
彼はまた、閉めなおした蛇口を次々に開いていきます・・・。
私の指導担当の先生がやってきました。
まだ若い・・・。就職して3年目の先生です。
きびきびした仕事ぶりで、若いのにすごいな~って思っていました。
でも、彼女はいつも無表情でした。
笑わない・・・。
彼女は、彼のところに行くなり、いきなり往復ビンタ・・・。
『何やってんの!!』
『お前なんて怖くないよ♪』
へらへら笑って逃げ回る彼。
彼女は彼を背中から押して、突き倒しました。
彼はその時にどこかを打ったらしく、痛がって倒れたままでした。
『観念しなさい!!ご飯食べにホールに行くわよ!!』
そして・・・。
彼女は倒れている彼の耳を掴んで、そのままホールにひきずって行ったのです・・・。
『痛いよ・・・。やめてくれよぉ・・・!耳がちぎれる!!』
彼は初めて泣きました。
私は呆然としていました・・・。
私は、この指導してくれた先生におそるおそる尋ねました。
『何で、あそこまでするんですか?』
『あの子達は動物と一緒だから、言葉で説明してもダメなの。痛い思いをしないと。』
ショックだった・・・。
あの子達は人間だよ。
動物でも、痛い思いをしなくても、心はきっと伝わるよ・・・。
こんなこと、今もあるかどうかわからないけど、たぶんあるよね・・・。
保育士さんが悪いって思ってるわけじゃない。
いちばん悪いのは、赤ちゃんのときからほったらかしている、無責任な親だ。
彼女たちも一生懸命仕事をしてる。
環境が善悪を麻痺させているんだと思う。
私だって、こんな子ども達相手に毎日仕事をしてたら、どこか感覚が狂うと思う。
決定的なことは、
彼達に、愛する人、守りたい人、大事な人がいない。
だから、自分も大事にしない・・・。