- スプ-トニクの恋人/村上 春樹
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★★★★★
22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。
レビュー
久しぶりにもの凄く引き込まれる小説でした。
解説文を読むと、少しひねくれた恋愛小説かと思いきや、何だかとんでもない方向へ展開していきます。
後の展開が全く読めません。
全体的な雰囲気は、「ねじまき鳥クロニクル」と良く似ています。
「ノルウェイの森」に通じるところも。
精神的内面の描写とか、不思議な世界観とか、村上春樹らしい感じ。
地味で落ち着いた感じの「ぼく」の言動に、違和感を感じないのも魅力の1つ。
良くあるミステリー小説の様に、全ての事象がラストで詳細に明確に解き明かされる訳ではなくて、詳細は読者の想像にゆだねられる部分が多いので、釈然としない感想を持つ人も居るかもしれません。
その辺りは「ねじまき鳥クロニクル」と良く似ています。
ただ、ねじまき鳥よりはスッキリとした感じがするのと、ねじまき鳥は3部作で読むのが大変なので、どちらもまだなら「スプートニクの恋人」の方がお勧めかも。
なんとも不思議な感じのする小説で、果たして素晴しく良い作品なのかどうかも良く分からないんだけど、とりあえず寝る間を惜しんで読み入ってしまったという事で評価高めです。
余談ですが、作中の会話が「レッドシアター」のコントを彷彿させて微妙に笑えてしまいます。
コントはコントで完成度高いなぁと、変な所に感心。