『キタダレコード』完結編2
車を路肩に寄せてハザードを焚いた。
CDとフライヤーを一枚ずつ抜き出して店へと向かう。(この辺りは緑のオッサンが常にウロついてる程 治安が悪くない)
店に入るとオヤジさんの定位置、1番奥にあるカウンターを目指す。
「お世話になってます。東狂アルゴリズムです。」
堅苦しい挨拶。おれは下手くそだ。
目線を上げてオヤジさんは「おう」と頷く。
サンプル持ってきました。とCDを渡し次いでフライヤーも渡す。
戦略もなにもない営業マンは単刀直入に切り出す。
委託販売をさせてもらいたい。
タワレコは一枚入荷で店頭には置かれてなかった。
通販サイトもパンク状態。
「おう!ええぞ!5枚でも10枚でも、積み上げるか?」
あっさりと快諾してくれた。
キタダでも3枚注文したがまだ入ってきていないらしい。
発売日を過ぎても納品しない。問屋はずいぶんウチのバンドを応援してくれてるみたいだ。
タワレコもおそらくそのせいだったのだろう。
早速CDを卸す手続きに入る。
ヒロトくんから聞いていた納品書がいかなるものかたずねると手書きでかまわないとのこと。
しかし何をどう書けばいいのかわからず
一からオヤジさんに聞いていく。
内容をケータイにメモろうとややテンパり気味のおれを見かねてオヤジさんはメモ用紙を取り出して納品書の見本を書いてくれた。
結局全てを店にゆだねて交渉成立。
呆れた営業マンだ。
話を聞いていたオバちゃんは時計を見やると「まだ時間あるな」と言ってデカい紙を取り出し「何色がいい?」と聞いてきた。
売り出し用のデコを作ってくれるみたいだ。
「ああ、ほ、ほな赤でお願いします!ボーカルが赤大将って謳ってるんで‼︎」
納品書を作ってから出直すということでその日はそのまま帰り、次の日は休みということで火曜日に納品することにした。
夕方、仕事に行く途中にキタダに寄った。
店の前に車を停めるとCDとポスター、フライヤーを持って店に入る。
カウンターの上に品物を置いてオヤジさんに納品書を渡す。
オバちゃんがバカデカいデコを広げて見せてくれた。
イエス!コンプリート‼︎と思いきや
間抜けな営業マンはミスを犯していることに気付く。
特典用の缶バッチとステッカーを忘れてしまった。
仕事に行かなければならないのでまた次の日ということでまたまた出直す。
そしてまた夕方、オヤジさんに特典グッズを渡すともうすでに二枚売れたと言う。
もし、買ってくれた人がこれを読んでいたら
近くに行った時にでもキタダに寄ってグッズをもらって下さい。大したモンではないけれど。
奥のカウンターにいた娘さんだろうか、佐佐木と同級生という女性が予約が入っていたのに問屋から入ってこないから持って来てくれてよかったと話してくれた。
女の子のお客さん増えてきた?と聞かれて
いやー、ウチはキャーキャー言われるアレ違うんで。なんて答えると、ほなわたし女の子とかにもオススメしていくわ。
全力でお願いしておいた。
これからウチの新しいアルバムを買おうとしてる人がいたら、できれば指先だけを使わないでキタダレコードへ足を運んでほしい。
確かに通販のほうが安くて楽だし時間も使わない。
でもキタダに行けば新しい発見や出会いがあるかもしれない。
もし遠いというなら、いっそ1日つぶして滋賀を満喫すればいい。
街中みたいな刺激はないけど、ちょっとした観光地だってあるし晴れていれば琵琶湖沿いをドライブするだけで充分気持ちいい。
水ヶ浜ってところにオススメのカフェがある。
ロケーションは日常を忘れるくらいマジで最高だ。
そこでお茶でも飲んで夕陽を見れば彼女だって怒らない。
腹が減れば三大ビーフの近江牛があるし
草津まで出てくれば ふうらい っていうラーメン屋がある。
店主はイマイチだけどラーメンとつけ麺はメチャクチャうまい。
都会であるとか最先端だとか便利、楽、簡単が必ずしもいいとは限らない。
科学やシステムの進歩が人類の進化だなんて思わない。
近ごろはむしろ反比例になってきてるんじゃないかっておれは思う。
滋賀県。守山駅。
ウエストゲートを出るとちょっとしたロータリーを挟んで西へと延びてる その通りはお世辞にも活気があるとは言えない商店街になっている。
400mほど続く商店街の端のほうでプラモなんかが置いてるおもちゃ屋と向かいあってあるのがキタダレコードだ。
この店は開いている。
きっとアンタを迎えてくれる。
あ、毎週月曜日は定休日なんで閉まってまーす。



