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『オッサン語録』







一時期手伝いに行っていた焼き鳥屋によく来ていた強面のおっさん。

デカイ身体をのけぞらせて椅子から滑り落ちるのではないかという座り方でムスっと携帯を眺めている。
注文の時でもその眼はこちらをほとんど見ない。



ヤクザよりもヤクザっぽいこのおっさんはどうやら会社を営む経営者のようでいつも社員とおぼしき若い人を数人引き連れてやって来ていた。


おれはこの手の人間があまり好きではないが、愛想は悪くても時折ビールを奢ってくれたり、店のことに口を出したりと面倒見がいいところもあって悪くは思っていなかった。



おっさんは酒が入ると決まってちょっといい話風のことを語り始める。
おっさんに限らず、昔悪かった系の人たちが格言めいたことを言いたがるのは世の常だ。




その日もいい感じに腹と酒を満たしたおっさんの独演会が始まった。
声がデカイから嫌でも耳に入ってくる。


「ええかぁ、何するんでもなぁ、上ばっかり見てたらあかんぞ。上ばっかり見てるモンは必ずコケる。下ばっかり見てるモンは壁にぶつかる。
前見て歩かなあかん。」


若者たちは神妙ではあるが何を言っていいのかわからないといった表情で目線を落として軽く頷いている。



「ふーん」
おれもそんな感じだった。



しかしながらその言葉は頭に刻みこまれ、ふとした時に「あーこれか!」と蘇ることがある。

言葉と共におっさんの面影もついてくるのが少々アレだが。




ともかく。世に溢れることわざや格言とはこんな風に居酒屋なんかでおっさんの吐いた戯言が元になっているのではないかと思う。



「ローマは1日にして成らず」



この言葉も古代ローマで若者を連れて飲みに行ったおっさんが酔いも回ったところで、
「いいかお前たち、ローマは1日にして成らんのだ」
といった具合にくだをまいていただけなのかもしれない。


”はぁ?当たり前だろ?何言ってんだよおっさん”

と思ってはいた若者たちも、ある日突然「こ、これか!!」となって次の世代へと語りつないでいったのではないかと星空を眺めながら空想世界に浸る。




最近だとSNSとかでもこういういい話風の言葉が出回ってる。
活字にすると妙に説得力があるように見えるけど、語気を強めただけで脈略のない屁理屈もけっこう多い。



とはいえ、次の世代に残っていくような「オッサン語録」もたくさん生まれてくることだろう。




いけ!オッサン! 戦え!オッサン‼︎