ガイを迎えることとなる年の前年(1999年)、9月の雨の日、妻が夕方帰宅すると家の門のなかに、小さな犬が1匹、ずぶ濡れになってうずくまっていました。

 茶色の体毛が伸び放題のその犬は、いかにも何日も外をうろうろと歩いてきたような、そんなみすぼらしい姿。相当弱々しく見えたため、まずは動物病院の先生を呼ぶことにしました。

 当時、動物を飼っていなかったため、動物病院がどこか近くにあるのか分からず、美容院の先生に聞いて、今も通っている動物病院を紹介され、すぐにそこへ連絡。そして動物病院の先生が出張でわざわざ来て診察してくれました。なお、こちらの事情を話すと診察代は要らないからと、先生は治療代を受け取りませんでした。

 診察した結果は過度の衰弱、そしてフィラリアで心臓が肥大、さらに睾丸もガンにより異常なまでに肥大化していました。ともあれ、何よりもまずは体力をつけさせるため、ササミを茹でたものを与えた方がよいと教えられ、その日以来ずっとササミを食べさせることになりました。

 私はそのような事情を全く知らず、夜帰宅すると玄関先にその犬がいたのでびっくり。すぐに妻から話しを聞き、飼い主が見つかるまでということで、一時的に我が家で面倒を見ることにしました。

 数日後、ササミの食事が功を奏して、その犬もだいぶ回復。そしてブラッシングと無駄毛をカットして、少しは飼い犬らしく可愛くなりました。

 また、この犬にも一応名前を付けなければと思い、「トム」と命名。何で「トム」だったのか、今聞かれても忘れてしまいましたが、なんとなく「トム」がぴったりと思ったからでした。
 そして、このまま飼うにしてもまずは寝床を…ということで、日曜大工で犬小屋を製作したのでした。

 「トム」は病気のため、散歩もゆっくりとしか歩くことができませんでした。朝夕に近くをぐるっと歩くだけで40分。途中、他のワンちゃんたちとも遭遇するのですが、病的な「トム」の姿を見て、あからさまに避けて通る飼い主たち。別に病気が移るわけでもあるまいし、ほんと失礼しちゃう感じでした。

 「トム」の体力は日増しに増して、寒い冬も犬小屋の中でなんとか乗り越え、そして花々が咲き乱れる春のひとときも楽しく過ごすことができたのですが、フィラリアとガンは確実に進行していたため2000年5月に入り、病状が悪化、親父の亡くなった一週間後の5月29日、帰らぬ命となりました。

 そして「トム」が亡くなった日、妻からガイのことを初めて聞きました。なお、妻はその3日前くらいにガイのことを美容室の先生から聞いていたらしいのですが、親父が亡くなった直後であり、また「トム」の病状が悪化していたために言い出せなかったのでした。
(つづく)


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うちに来た当時、ボサボサだったときのトム

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まるまると回復したトム