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umi no tegami

大切な友へ 

私はいつもそうです。


大切なことをわすれてしまう。。。


ブリジットのことを、急におもいだして、涙が止まりませんでした。


ブリジット エンゲラーは、フランスのピアニストです。


私が、彼女の演奏を聴いたのは一度だけです。


東京の音楽祭で、ロシアの若手ピアニストとの共演でした。


そのロシアのピアニストは注目されていて、おそらく会場のほとんどの人が彼目当てだったと思います。


私は、たまたまチケットが手に入っただけで、なんの予備知識もなく見に行ってました。



ブリジットは、60歳ぐらいのポチャリとした笑顔のかわいらしいというかんじの女性で、演奏が始めると、私は思わず身を乗り出しました。


演奏が楽しいのです。ピアノを心から楽しんでいる音でした。


クラシックに詳しい訳ではないのですが、音がこころに入ってくるカンジで、ものすごくいい演奏でした。


隣で演奏している神経質そうなロシアピアニストをもつつみ込んでしまうような。。。


演奏後、CDを買うと本人がサインをしてくれるとのことだったので、思わずCDかって列に並びました。


わたしの友人なら知ってますが、わたしはサインをもらうことはしないひとなのですが、ブリジットに会ってみたかったのです。


列のほとんどは、ロシアのピアニスと目当てで、ブリジットのCDをもっている人はまばらでした。


ところが、ロシアのピアニストが体調不良で急遽キャンセル!


全員、ブリジットに流れたのです。


ですが、ブリジットはいやな顔せずに、ニコニコと対応していました。


私の番がきて、握手をさせてもらいましたが、そのとき、時が止まりました。


ほんとに時が止まる。。そんなカンジでした。。。


不思議なカンジ。。。昔からの知り合いのような。。なんというかシンパシーというコトバがぴったりなカンジで。。。


そして、最後ににっこり微笑んで、私の手を両手に包むとそっとなでてくれました。


おそらく、彼女は私をピアニストだとおもったのでしょう。(わたしの手は大きいのです。。。大きいだけだけど。。。)


手にお守りをかけてくれたのでしょう。。


その1年後彼女は亡くなりました。


あとから知ったのですが、彼女はずっと病と闘ってきたそうです。


ロザリオをいくつもかけていたのが、なぜか気になったのですが、なんとなく理由がわかった気がしました。


だからこそ、ピアノを弾ける喜びをかみしめていたのでしょう。


そして、次の世代の音楽を紡ぐひとたちに惜しみなく愛情を注いでいたのでしょう。


そして、わたしにもくれたのでしょう。


思い出すと、ほんとに涙がでます。


ほんとに愛情はさりげなくて、わかりにくい。


でも、かならず、こころに根付いているもの。


忘れているようで、わすれていないものなんでしょうね。