結婚して子供もいるのに、こんな勝手な事ができるのは、夫が会社勤めをしている人ではなく、わたしもコンピューターさえあれば仕事ができる人だから。

 

10年も前の事。

もしかしたら、夫はまだ原稿用紙を使って仕事をしていたかも知れない。

そして、彼は自分の浮気によってわたしを深く傷つけたことに罪悪感を感じていたし、確かにわたしの傷は癒えることがなかった。

夫を愛していたから。

 

猛烈な孤独感との戦いの日々。

自分が旅先での出会いを受け入れたのも、夫に仕返しがしたかったからではなく、単に寂しかったから。

 

またマウイに行くというと、夫はあっさり受け入れた。

「その時期なら大丈夫だよ。取材に出かける必要もない時だから、ぼくが子供たちの面倒を見ている」

 

そういうわけで、旅立ちとなった。

飛行機に乗るまでは小さな子供たちと離れるのがつらく、こんなことをしている自分に対する嫌悪感も感じた。

だが、飛行機の中で一人になると、その思いも薄れていった。

不思議なものだ。

飛行機が離陸すると、家族と繋がっていた糸がプツリと切れたように、わたしは彼らの事を考えなくなっていた。

勝手な母親。

 

マウイの飛行場には、懐かしい巻き毛の彼が立っていた。

大きな彼に抱きしめられると、まるで子供になったような気分になる。

母親という責任の重圧から開放され、わたしはまた一人の女になる。

 

アレックスは懐かしい大きな両手でわたしの頬を包み、「きれいな君が帰ってきた」と、言って微笑んだ。

 

ええ、帰ってきた。

 

アレックスのジープに乗り込み、わたし達はわたしが東京から予約したラハイナのコンドミニアムに向かった。今ならラハイナなんて選ばないけれど、当時はマウイ初心者。そして、自分の旅行をアレックスの都合に合わせる気もなかった。

 

彼にも会いたいと思ったけれど、それだけが理由ではない。

彼に恋したわけではない。

マウイの空気に惚れた。

 

コンドーに到着すると、すぐにシャワーを浴びた。

アレックスはコーヒーを入れて新聞を読んでいた。

まるで、自分の家にいるように。

 

「飛行機はどうだった?疲れた?」

正直言って、わたしは疲れていた。

眠かった。

 

「横になってごらん。マッサージしてあげる」

 

Tシャツ1枚でうつぶせになったわたしの背中を彼はマッサージし始めた。

気持ちよかった。

シャワーから出て付けようと思ったボディ・ローションがベッドサイドに置いてあった。

 

アレックスはわたしのTシャツを脱がせて、背中にローションをたらした。

「それは良いアイディアだわ」

わたしは目を瞑ったまま、微笑んだ。

 

彼の大きな手のひらが、螺旋を描きながら背中を滑っていく。

大きな手にマッサージされていると本当に気持ちが良い。

彼はわたしの体の隅々まで優しくマッサージした。

夢見心地とはこのこと。

 

すると、とつぜん、太腿に彼の熱いものが触れた。

そして、少しずつ、彼は私の中に押し入ってきた。

 

ゆっくりとゆっくりと、彼は動く。

動くたびに、より深く、奥へ奥へと、少しずつ彼は進んでいく。

わたしの体は次第に熱を帯びてくる。

あぁ。

脳天まで快感が走る。

わたしは目を瞑ったまま、シーツを握り締める。

 

「会いたかったよ」

後ろから耳元に彼が囁いた。

 

わたしは上り詰めていく。

頭がしびれるほど。

息ができないほど。

 

ピクピクと収縮する自分の体。

気が狂うほどの快感。

 

彼はコントロールを失わずに動き続ける。

快感の上に重なる快感の波が襲う。

「もう、だめ…」

 

わたしたちは何時間もベッドの中で過ごした。

気づくと外は夕焼けだった。

 

「疲れはどう?」

アレックスはニヤリとして言った。

 

不思議な事に、先ほどの疲れはなかった。

興奮すると疲労を感じなくなるのだろうか?